episode77〜オーガ族の記憶〜
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「でも本当にいいのかしら… ?」
オレスの不安そうなその言葉に、アルネは聞き返した。
「何か懸念するような事があるの?」
「えぇ。私が言うのもなんだけど、あの屋敷はとても危険なの。この50年間、そこに足を踏み入れることさえ出来なかった。あの人を… それが原因で、助け出す事が出来なかったから…
そんな場所に、あなた方を招くような危険な事… 迷惑をかけてしまうわ。それにもう… 」
「ダメよっ! そんな事考えちゃダメ! 信じなきゃっ! 誰かが ’そう’ 思ったとしても…
世界中が ’そう’ 思っていたとしても、あなただけは信じてあげて? 愛する人よ? 大丈夫! ね? だからそんな風に、悪い想像だけはしないで? その目で見るまでは」
「えぇ… えぇそうね… ありがとう、アルネ」
アルネは優しい笑みを浮かべたかと思えば、すぐにその筋肉は歪みを帯び始めた。
「それに… ふふ… ふふふ… 」
(あ… この笑いは… )
(最近… 悪い癖がまた増えたんだよな… アルネは)
(ん? なんか、心無しかルクナ様の表情も緩んでないか?)
「アルネ様? まさかだとは思いますが、 ’危険‘ という言葉に、心躍らされたりはしてはいませんよ… ね?」
アルネはヴィカのその言葉に、ニヤリと返すのみで言葉を発する事はなかった。
(不謹慎だな)
そして、オレスの方に向かって自己紹介を始めた。
「あ… そういえば、まだ紹介しきれてなかったわよね? 改めてわたくし、アルネと申します。
そしてこのお方が、南東部にある一国の第一王子、ルクナ…… リオ?」
「ん… ?」
(((え… )))
周りの者は、見開いた目が最大限に大きくなっていた。
(今… 名前… )
(すぐに出てこなかったな?)
彼らの視線を跳ね返すような咳払いをしたアルネは、それらを無視して話を続けた。
「ゔぅん… そしてこちらの男性達が、えぇと… 従者その1、その2、その3達よ!」
(雑っ! 扱いが雑過ぎる!)
ある従者は、心の中で思いっきり叫んだ。
「それと、この方が私の師匠で元大聖女のリランさん!」
そして、従者達は自ら名を名乗った。
(アルネ… やっぱり何処かで… )
オレスはそう思いながら、言葉を発した。
「皆様、改めて親子共々よろしくお願いしますわ。ルクナリオ殿下と仰いましたか… 貴方様はここから南東にある、あの… ? しかし、あの国は確か… 」
そのまま少し目線を逸らしながら、何かを思い出すようにするオレス。
その様子に、少しの不安が過ぎるアルネだったが、話を続けようと言葉を交わした。
「ん? そうね、とても美しい国よ! さっきも言ったけど、私達はこの世界にいる様々な種族達を探しているの。その1つがあなた達、オーガ族。その事実もつい最近知ったばかりで、半信半疑だった。けれど、あなたとシェリュウスと出会えた。その事がとても嬉しいの。そう… あなた達の力を借りたくて、ここまで来たのよ。でも、そうだったのは最初だけ」
「え? 最初だけ? じゃあ今は… 」
「ふふ… 今は、何よりもあなた達と仲良くなりたいって思ってしまってるから… 」
「アルネ、ありがとう… 会った事もない私達を探して… 世界まで救おうとしている。本当に勇敢だわ。アルネ、あなたは大聖女だと言うけれど、何だかそれらしくないわね?」
その事に関して、リランが口を開いた。
「アルネは、最近になって自身が大聖女だという事を知ったばかりだからな」
「最近? それにしては… 」
そう呟きながら、オレスはアルネの事を見つめた。
そして、傍にいる者が目に入った。
「あれ? そこに居るのは… 」
オレスは、ノギジの姿が気になった。
「あ、紹介するね! この子はノギジ。ある種族の生き残りなんだけど」
するとオレスは、その大きな顔をノギジに近づけた。
そして、側に居たゾルと交互に見ながら言う。
「ノギジ… あなたは… ルー族ね? そして、あなたはアンセクト族のコクシネル… 何だかとても久しぶりな感じ… 」
「え? あ、あぁ。何故わかるんだ?」
「ふふ、その瞳懐かしいわ。美しい黄金の瞳… 私の友人にもいたの。アランとユリスっていう、ルー族の子達が… あなたと同じような瞳をしていたわ」
(わしの事は… 見破れぬか)
同じルー族であるリランは、その影を少し隠した。
「俺と同じ種族… ? オレスはそのルー族と知り合いだったんだな? 詳しく聞かせてくれっ!」
ノギジの身体は前のめりとなり、その尾からは最大限の喜びが感じられた。
アルネだけじゃなかった、その場にいる誰しもがその表情に笑みが溢れる。
「えぇ、もちろんよ。それに、ルー族だけじゃないわ。他の種族も全て知り合いよ」
そう言いながら、今度はゾルの方に目を向けるオレス。
「あなたは… ゾルって言ったかしら? ロクサーヌ様はご健… 在?」
(ゔ… 何かしら… )
オレスは身体のある異変を、徐々に感じ始めていた。
「え? ロクサーヌ様を知ってるのか? もちろんだ! フルムーンの時にしか、姿を見せないがな」
「フルムーンの時にしか? おかしいわね… 私が知ってるロクサーヌ様は…… えぇと、一体どういう事なの… 」
頭が整理しきれていない様子のオレス。
その質問の真髄に、ルクナは触れた。
「オレス… 先程からずっと気になっていたのだが… 何だか、会話に違和感を感じないか? 俺達の言っている事も、オレスの言っている事も現に起こった事だ。しかし、何というか… 話が噛み合ってない… 何かがずれているような… 」
ルクナだけではなかった。
その場にいる者達が、その異様な空気を感じ取る。
「えぇ、私も先程からずっと気になってたの… それに何だか、思い出そうとすると、少し頭痛も… 」
「えっ!? 大丈夫!? あまり無理しないで?」
アルネはそう言って、オレスの身体を労わった。
「え、えぇ… 」
「すまない… まだ完全に傷が癒えてもないのに、無理をさせてはいけなかったな… ゆっくり休みながらでいい… とりあえず、食事にしよう」
ルクナのひと言により、一同は一度、胃の中を満足させる事にした。
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食休みをしていると、オレスは顔色を取り戻し、口を開いた。
「ごめんなさいね。胃が落ち着いて、気分も良くなってきたわ」
その横では、食べ盛りのシェリュウスが、未だ美味しそうに魚を頬張っていた。
「空腹って身体に毒よね! 大丈夫? まだまだたくさんあるけど… えぇと、遠慮してない?」
「えぇ、もう十分よ!」
「なら… 良かったわ」
(意外と少食なのね… )
アルネはオーガ族の意外な生態を、目の当たりにしていた。
すると、ヴィカのあるひと言から、その謎が紐解かれていくことになる。
「あの… 私もルクナ様のおっしゃる違和感というものを、ずっと感じ考えていたのですが… オレス殿… ここ数日の… いや、ここ最近の記憶がございますか?」
「え? 何故… いえ、あなたの言う通り、実はそうなの。ここ最近の記憶が、全然思い出せなくて… 周りにいたはずの他の種族達も見当らないし… 痛っ… ほら、今みたいに… 思い出そうとすると、こうやって少し頭が…
一番最近の記憶だと、数日前に起こった大地震が… でもその後、辺りの光景を見て私は頭が真っ白になった。地震が起こり、少し離れた場所で遊ばせていたシェリュウスを、真っ先に助けに行ったのに、あの子の姿がどこにもなくて… それで記憶が飛んで… 」
「そうですか… これは… 憶測に過ぎませんが… 」
しかし、その言葉を出す前にヴィカは何かを躊躇った。
「何だ? 何かあるのか? 憶測でもいい。考える材料にするだけだ。言ってみろ… 」
ルクナにそう言われ、ヴィカは自身の考えをゆっくりと口にした。
「はい… オレス殿の言うその記憶は、数日前のものではなく… 100年程前のものではございませんか?」
「… っ! そんなっ… まさか… 」
「何らかの理由により、記憶が100年前の大地震の時から止まっている… そう考えると辻褄が合います」
「で、でも何故そんなにも長い年月を… ?」
アルネは両手で口を覆うと、驚き声を漏らす。
しかしルクナは違った。
ヴィカの考えに納得するかのように頷いた。
「確かにそう考えると、今までの違和感の理由がわかる」
「… 一体どういうことかしら? 確かに… 周りが少しだけ風変わりな感じはするけど… 」
「その原因が一体何だったのかは、今すぐにはわかりませんが、それを探す事は出来ます」
「あぁ、原因究明といこうか。手を貸すためには、やはりまずは別邸に行く必要があるな。それに… 何だかこの先、我々がしようとしている事と、繋がっている気がする。共に進めばきっと、自ずとその答えが分かりそうな、そんな… 」
ヴィカとルクナの言葉に、その場にいた全員がゆっくりと頷いた。
「そうよ! 一緒に探しましょう! それにほら! 別邸の旦那さんが… ん? ちょっと待って… もし本当にオレスに記憶のない100年があったとしたら… 旦那さんは… 幽閉されて150年の月日が経っているということ!?」
「そんな… 嘘でしょ… それじゃあ、もう… 」
アルネの言葉に、驚きのあまり失っていた声を震わせたオレス。
すると、少し震える小さな手が、オレスの膝に力と想いを込めて乗せた。
「大丈夫! 行きましょう! この目で確かめるの! 信じて… 大丈夫だから」
アルネの瞳は、何よりも真っ直ぐだった。
何の確信も保障もない。
なのに彼女の言葉には、何だかその先が見えているかのように感じた。
オレスは、その言葉に自然と頷いた。
(何でしょう… 全く確証も、根拠もないのに… アルネの言葉は何だか… )
「オル殿の事を思うと、すぐにでも出発したいが… まずはオレスの身体を第一に考え、安静にすることを優先したい。もちろんその子の為にもだ」
ルクナがシェリュウスを見ながらそう言うと、オレスは優しい母の瞳を取り戻し、頷いた。
「感謝致します… 」
(これも憶測に過ぎないが… 100年もの間、記憶がないまま我が子を探し迷っていたのではないだろうか? 休む事もせず、食事を取るという事もなく… 本当にそうだとしたら、相当… いや、想像より遥か上の体力を持ち合わせている事になる)
ルクナは、オーガ族の生態の不思議を垣間見た。
そして、この謎を解明するためにも、更に話を擦り合わせ、オレスの知識や情報を共有する事にした。
「もう少し話を整理したい。其方が知る事、種族、何でもいい。詳しく聞かせてくれないか?」
オレスは優しく、そして力強く頷いた。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
突っ走って書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
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