episode71〜リラン〜
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「そうか… なるほど… まさか其方が、あの島の出身だったとはな… 」
リランのその言葉にアルネは頷いた。
(厳密には、出身者ではないのだけれど… )
「その島って、天空の喜びの島と一対になっているのよね? 元は1つの島… 」
「そうじゃ」
「そこにいる女神達が、かつての大聖女ってどういう事? 何故世界を脅かすような存在に… 」
「それは、わしにもわからぬ。奴らの考えは到底理解できん」
「そう… よね。サリドナさんは彼女達の目的は心の入れ替えと言っていたけど、一体どういうことなのかしら… 」
「… うむ」
2人は重く頷くと、アルネはずっと気になっていた事を聞いた。
「リラン、あなたは数少ない貴重な私の先輩。大聖女のね。でも、本当にそれだけ?」
「何が言いたい?」
「本当は、私の先輩ってだけじゃないんでしょ? その瞳… その黄金に、輝く瞳は… 」
「ルー族… お前、ルー族か!」
ノギジは自身と同じような輝く黄金の瞳を見開き、リランにそう放った。
「… 姿形は変えられても、潜在的にあるその瞳の色は、変えられないんじゃないの?」
「合格じゃ」
「え?」
「大聖女の役割は、その種族達を見分ける事でもある。わしのように、姿形を変えてる者なんざ当たり前の事だ。むしろ、元の姿が何だったのかすら、自身でもわからなくなるほどじゃからな」
(試されていたのか? いや、でも… )
「ねぇねぇもしかして、その扉を潜る条件って… 大聖女ではなく… ルー族って事なんじゃ?」
「ご名答じゃ」
(本当にごく稀だが… アルネ様の勘は侮れないな… ごく稀だが… )
ヴィカはそう思いながら、2人の会話を静かに聞いていた。
「てことはよ? この扉を作ったのも?」
「ブブゥー不正解じゃ」
手で大きくバツを作り、陰険な表情を向けながら言うリラン。
(何か腹立つな… 顔が嫌だ)
そう思いながら、アルネは目を細める。
「この扉を作った者は他におる。いいか? それでは、もう少し深い話をするぞ?」
アルネは食い入るような目をして、ゴクリと生唾を飲み込んだ。
「扉を潜る条件は、確かにルー族が由来じゃ。しかし、現に其方らユマンらも潜ることによってこの部屋へと来れた。最初が肝心なんじゃ」
「最初…つまり、そのはじめの者がルー族以外だと?」
「何も起こらぬ。 ’開門人’ または ’導く者’ と、そう呼ばれている」
「なんだかすごく重要な役割り… 」
「其方達はこの世の均衡を保つ為に、種族達を探しているのじゃったよな?」
「ええ、その通りよ」
「では、その真の方法は何じゃと思う?」
アルネ達が少し目を伏せるようにして、息を漏らした。
「そう… わからない。… と言うよりかは、知る者がいないがために、その手段を知らない。まぁ仕方がない事じゃが。では種族達が、共存していたことは?」
「それは、聞いた事があるわ。えと確か… ルー族やアンセクト族が一緒に暮らしてて… それと、アンセクト族はその身軽さから、様々な場所で生存していたって感じだったかしら?」
(ん? 何か知識が浅くないか?)
ルクナは、ちょっぴり不安になった。
「まぁ簡単に言えばそうじゃな。それにヴァンパイア族。彼らは、他種族の健康を見守っていた」
(血に詳しいからかな)
「そういえば、さっきも言っていたわよね? 種族の身体を制する者とか何とかって」
「本当に何も知らんのか? 本人達がこの場にいるのに… 」
ニヘラと笑いながら、頷くアルネ。
ため息を漏らすと、リランはその小さな口を開いた。
「ルー族、それは道を切り開く者
オーガ族、必なる言語や文化を伝える者
アンセクト族、世に伝達する者
シレーヌ族、天なる候を操る者
ヴァンパイア族、種たる族らの身体を制する者
それと新たなる種族… パストゥール族。彼らはまだ未知なる力を持っているとは思うが、おそらく精霊の頃から考えられるのは、神のもとへと導く者か」
「すごい… やっぱりそれぞれの種族が各使命を担っているのね」
「まぁ、全てが本当にそうなのかは定かではないがな… 」
「じゃ、じゃあユマンは? ユマン族もそれなりの… 」
「ユマン族か… そなたらは複雑だからな… 何と言ったらいいのか… 」
(えぇぇぇ… 何それ… 怖いよ… 逆に怖い)
「それと、神へと導く者がいれば、その逆もいる」
「逆? 悪魔? とか?」
「そうじゃ」
リランは、本物の悪魔のような笑みを浮かべながら、冗談混じりにそう応えた。
「まさかだとは思うが… 本当にいるのか? 魔族なるものが… 」
「まぁパストゥールと同様、種族にはなれきれないでいる精霊らしいがな。わしも会った事がないゆえに、現在も本当に存在しているのかもわからぬ」
「そう… できれば会いたくないけど」
「それと… 」
(まだいるの!? これ以上は、頭が追いついていけない… )
「竜族だが… 」
「竜族ぅ!?」
「あぁ、彼らは非常に… 」
「ちょっちょっと待って! 竜族なんてのもいるの!?」
「そうじゃ… しかし、彼らは誠に凶暴かつ、話すら通じない種族じゃと言われておる。もはや種族というよりは、本能のまま生きる竜そのもの」
「それなのに、他の種族達と共存なんてできてたの?」
「一応な。護り族と言ったらいいのか… まぁ実際に何の使命を負っているのかは、わしも知らん。それに何故か、わしら他種族には手出しはしてこなかったからな。ただ… 彼らはいつも何かを警戒していたらしい」
「それは一体、何だったのかしら?」
少し重い空気に包まれた。
しかし、アルネの想いは突き進む。
「リランさん、もう一度聞くわ。一緒に来てくれるでしょう?」
「……… 」
「ありがとう」
「まだ何も言っておらぬ」
「ふふ… ねぇ、そういうの、何て言うのか知ってる?」
「… なんじゃ」
「 ’暗黙の了解‘ って言うのよ? ふふん」
(なんか違う気が… )
そう思いながらも、リランはふっと笑うと、旅の支度を始めるのだった。
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リランが、元大聖女である事実を知ったアルネ達。
更には彼女自身、ルー族でもあると言う。
そして、アルネはリランを旅路の共として誘った。
そう、大聖女としての師として、教授願うために。
すぐに出発するのかと思いきや、リランが懸念していたある事態が起きたのだ。
そうそれは、寸前の出来事だった。
運が良かったと言わざるを得ない。
リランがその場にいた事が、アルネの力の暴走を防いだからだ。
それは、夕飯の支度をしていた時の事だった。
アルネがリランに、つい先程知った種族の形跡について尋ねた事から始まった。
「ねぇ、リランさん。この近くにオーガ族の所有していたっていう屋敷を知っている?」
「オーガ族の別邸か? たしか東側には本城があったな。そうか… 其方達は、そこから来たんだったな。そこにオーガ達はいなかった… そして、手がかりを見つける為に、別邸へといく途中。なるほどそういうことか」
「すごい! さすがリランさん! その通りよ!」
「確かに、オーガ族が出入りしていた邸宅があった。わしも一度行ったっきりだ」
「ほんとっ! そこの場所覚えてる?」
「あぁ、ここから歩いて丸一日というところか。まずはそこに行きたいんだな?」
「うん! 出来れば案内を… 」
「お主… 何を考えている?」
「へ?」
「その場には、わしがいなくとも行けるであろう?」
「え? あ、まぁ… それは… はい」
「何故、使わぬ? 精霊の力を」
(言えない)
「其方… 何を恐れている?」
(言えない)
「何を… 隠しているんだ?」
(言えないぃっ!)
アルネの顔色が段々とおかしくなっていく事に気が付いたルクナは、そっと肩を寄せた。
「アルネ? 大丈夫か?」
俯いたまま、唇を噛み締めるアルネ。
その額には汗が雫となって、流れ落ちていた。
「あ、あの… 私」
すると、デイルの身体が煌々と光り出した。
「なんだ?」
その姿は今までの大きさとは違く、ルクナやヴィカ程のユマンと同じくらいになった。
「な、なんだ? 月の光を浴びてもないのに? 何故」
「デイルッ… !? わ、私の力が… 」
「何だ!? アルネ? どういうことだ?」
「最近… 少しずつ感じていた。気のせいかとも思ってたけど… 満月の時でなくとも、その時と同じくらいの放出になってきている気がしてたの。
まさかとは思ってたけど… その分、疲れやすくなってる気もしてた… どうしよう… あぁどうし… 」
「アルネ、落ち着け。案ずるな。出会った時から何となくわかっていた。力の制御ができなくなってきているんだな? 恐らくそれは、力自体が段々と大きくなり、今の制御では追いつかなくなってきているからじゃ。アルネ… こちらへ… 」
リランはそう言うと、アルネを別室へと連れて行った。
こうしてその夜、2人はその部屋から出ることはなかった。
たくさんの作品から選んで下さり、ありがとうございます。
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