episode70〜師匠〜
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「ここは月華山を境にした位置から、西にある森だ」
リランのその言葉に、反応を示すアルネ。
「西の森… ここが… ん? てことは西の森の魔女!?」
「魔女じゃない。元大聖女だと言っとろうが。まぁ今やその力は移り変わり、ほぼその力はないがな」
「いや、雰囲気でつい」
2人の会話に耳を傾けているノギジ。
(とても大聖女には見えないけどな)
「あ?」
その言葉に、思いっきり首を振るノギジ。
「現にその力は今、其方にあるのだろう? アルネ」
「… うん。そうみたい」
「ふぅ… その反応を見るからに、お主は未だ、その力をちゃんと制御できていなさそうだな?」
「あ、やっぱり? あの日、満月の日に外に出てから力が、溢れて仕方がないのよねぇ… 」
「それは成人してからか?」
「あ、うん。16歳からだから、そうなるのかな?」
「その時まで力を使わずに、成人となる16の時に、一気に放出した… と?」
「え? あ、うん。そうよ」
「バァカたれがっ! そんなの死に急ぐようなもんだろうが!」
その声量の大きさに、一同がビクつく。
「其方、それまでどうしてたんじゃ!?」
「え? ど、どうしてたって… どうも… だ、だっておばあちゃんが… 」
「おばあちゃん?」
「うん、私を育ててくれたおばあちゃんよ。満月を見ないようにと、幼い頃から言い聞かされてきたの。でも… 島を出てから知った事なんだけど、そのおばあちゃんも結局は、私が生み出したパストゥール族だったみたいで… 」
「なるほど。そういう事だったのか… てことは… 」
(そのほとんどが、アルネ自身の思想だったということか… )
リランは、そのまま何か考え込むようにして、少し黙りこんだ。
「知っての通り、大聖女はユマンだけではない。様々な種族がその意思を受け継ぐ。その中でもユマンの者は大変珍しい」
「確かにサリドナさんも、そんな事言っていたような… 」
(サリドナ? はて? 何処かで聞いたような名じゃな… )
「それに私のお母さんも、大聖女だったって聞いたけど… 」
「… っ!? それは本当か!?」
「多分… 」
「それならそのお前は… そうか… その力を制御しきれていないのにも納得だな。知識不足ということには変わりないが… 」
「知識不足… そうね、確かに… 本当に… 大いにそうね」
「ユマン族は、どの種族よりも遥かに寿命が短い。大聖女の力は、寿命が短いほどその力は強いんだ。初代がそうだったように」
「初代の… 大聖女? 確か、オルフール様よね? 確かに彼女もユマン族だったって聞いた事があるわ」
「そうじゃ。その力は島をも分離させ、更には海をも飲み込むとも言われておる」
「その話も以前聞いた事があるわね。元々地上に1つとして存在していたキティール島を、女神達から守る為にその半分を地上に残したって」
「よく知っておるな? その通りじゃ。そして、その後すぐに亡くなったと聞いた」
「えぇ。月華山で知り合った人に、サリドナさんって人がいるんだけど、色々教えてくれて… 」
「サリドナ… サリ… 思い出した! あのサリドナか!? アンセクト族の!?」
「えぇ、そうよ。ん? お知り合い?」
「知り合いも何も、幼き頃からの馴染みだ! そうかそうか、まだ生きておったか! ふふ… 」
(それなのに、何故名を聞いてすぐに思い出さなかったんだ?)
ルクナはそう思いながら、リランの話に耳を向けていた。
「今は月華山にいるわ。とても元気よ」
「月華山… まさか、まだそんなことを… 」
(キティール島のことかな… あとで聞いてみよう)
「それでお主、例の書を持っているのであろう?」
「例の書? あ、もしかしてこれの事?」
アルネは、大聖女の為の魔導書を荷物の中からゆっくりと取り出した。
「これじゃこれじゃ! 久しいのう… 」
そう言いながら、リランはアルネからその本を受け取った。
「この本は気になって、たまたま神殿から持ってきたんだけど… 」
「ふむ… それはおそらく ’たまたま’ ではないだろう。して、どこの神殿じゃ?」
「えと、それは…… 」
「ん?」
(あれ?)
「ルクナの… 祖国にある神殿よ。ここから南西にある… 国」
「… そうか」
「これって、やっぱり代々大聖女が受け継ぐ物なんでしょ?」
「そうじゃ。それを現実にする思考。全てを担う思考。とても偉大で… それと共に大変危険な物でもある。決して他の者には見せるんじゃないぞ?」
「え… あ、そ、そうなの?」
アルネの動揺する返答に、リランは顔を顰めて言った。
「まさかっ! 誰かに見せたのか? もしくは見られたか!?」
「そんな大切な物とは知らず、見せちゃったのよ… 」
「其方、この思考が悪用されればどんなことになるかっ… 」
しかし、実際にそれを見た者達は、慌てた様子が微塵もなかった。
逆にそれを聞いて、大聖女がアルネで良かったとさえも思っていた。
リランを安心させる為に、その口を開いたのはヴィカであった。
「リラン殿… その心配はほぼいらないかと… 」
「何? どういうことじゃ? あまり思考がないのか?」
「あ… いえ… それは… わかりませんが… 実際に見てもらった方が宜しいかと… 」
「ん?」
その書を開いたリランは、想像通りの表情を示した。
「こ… これは… 」
そして、静かに書を閉じる。
「なるほど… 心配ないっ!!」
「みんなして酷い… 」
そのアルネの呟きに、デイルが肩をポンと叩いた。
その笑みは、満面であった。
(なんかムカつくな… )
「それで、この1番最後のページの事は… 」
「あ、うん。サリドナさんから聞いてるよ! 代々の大聖女の印なんだってね! 勝手にその紋章が映し出されれるって。この1番最後のが私のでしょ? それでこの1個前のが、お母さんかな。リランさんのはどれなの?」
アルネの問いに小さな指を出し、それを示したリラン。
「これじゃ」
「えぇと、私から… 1、2、3… ん!? 14個も前!?」
「ババア、一体いく… ブッ」
その手刀に、一瞬意識を持っていかれそうになったデイル。
「リラン様だ。それにレディーに年齢を聞くなんて、何て愚かな」
(レディー… )
ギロリと睨みつけるその瞳は、それだけでその威力がある。
「ねぇリランさん。この中に、他に会える可能性の元大聖女はいる?」
そのページに記された大聖女の印を、一通り見始めるリラン。
ある部分で目が止まり、少し考えに耽るように、まじまじと見つめた。
「… さん? リランさん?」
「ん、あ、あぁ。その者と話がしてみたいのだな?」
「そうなの! でもリランさんに会えただけでも、十分なんだけど… 他にもいるなら会ってみたいなって」
「そうか… ここから真東にある森に、1人いる。わしの2つ後の大聖女だった者じゃ。まだそこにいればの話じゃがな」
「やった! 行く価値あるわね! 師匠が2人… ふふ、ふひひ」
ウキウキしながら、アルネはニタリと笑う。
「おい、いつの間にわしは其方の師になった。勝手に師匠にするな」
「えー! いいじゃないーお願い! だって、まだ右も左もわからない新米大聖女よ? その事実を知ったのだって、ほんの数ヶ月前で、一年も経ってないの! お願いっ!」
「… え? … この力の存在を知ってから、まだ数ヶ月じゃと? という事は、現在が齢16か?」
「うん、そうよ! ね? お願い!」
(たったその期間だけで… この力とは… 末恐ろしい娘じゃ)
リランは大聖女の印のアルネの印を見て、鳥肌が止まらなかった。
「わかった。しかし、師は1人で十分じゃ」
「あ、うん。頭が混乱しちゃうもんね!」
「それもあるが… 東の森の元大聖女は、わしの教え子でもあるからな。二重に教わる事になるだろう。それに… 」
「そうなんだ! その人とはどのくらい会ってないの?」
「ずっとじゃ。彼女が大聖女になってから、1年も経たないうちにな」
「ん? 大聖女を退いてから、1年じゃなくて?」
「あぁ… だから、確実に生存してるとは言い切れぬ。しかし、死んだという ‘情報’ も耳に入って来てはおらぬのじゃ」
「そっか! じゃあ決まりね! 師匠として、一緒について来てくれるでしょう? ついでに東の森で、元教え子にも会える! 更に良い旅になりそうね!」
「ん? 話が見えないのじゃが? わしは師匠になるとは言ったが、一緒に行くとは… 」
「行こうっ! 絶対楽しいから! それに旅をしながら、教えてくれた方が一石二鳥だし! ねっ! 私達ね、この世に存在する種族達を探し出して、この世界の均衡を正常に戻さなきゃいけないの! あんまり寄り道できないのよ」
(((どの口が言うんか)))
その言葉に、一斉にアルネの方に視線が向けられた。
「世界の均衡か… お主、随分と強引だな… 」
リランは、呆れた様子で呟いた。
しかし、当の本人は気にする様子もなく話を続ける。
「ねぇねぇ、かつて大聖女だった人の中で、リランさんが知ってる人って、その東の森にいる人だけなのよね?」
「いや… 他にもいる」
「えっ!? ほんとっ!? その人達って… 」
上方へと、その指を刺すリラン。
「そう… やっぱり、天に召され… 」
「違うわ! とある島にいるんじゃ」
「え? もしかして、喜びの島? キティール島の半分の?」
「… っ!? お主、そんな事まで知っておるのか?」
「うん! だって私、キティ… っ」
(なっ… ヴィカ!?)
いつものように、アルネを拘束するヴィカ。
その軽い口を塞いだのだ。
「アルネ様… その島の名は、安易に口を出して良いような物では… 喜びの島の女神達がもし、本当にかつての大聖女だったとしたら… 何か良からぬ繋がりへと発展する可能性も… 」
(そんな… ここまで話して… これから師弟として過ごして行くのに… そんな信頼性のない関係なんて… 私は嫌だ!)
ヴィカの手を、ゆっくりと外すアルネ。
その目は、真っ直ぐに彼の瞳を貫いていた。
「アルネ様?」
「大丈夫だから… 」
そう言うと、アルネは自身の生い立ちや出身島の事を全てリランに話した。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
突っ走って書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
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更新が遅くなり申し訳ありません。




