episode69〜先輩〜
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森に逃げる小さな少女を捕らえたアルネ。
彼女は、ノギジの首元から首飾りを盗んでいた。
ジタバタと暴れるその表情が、フードから現れた。
その姿は、美しくも何処か奥行きのある表情をしていた。
何かを見通すようなその瞳に惹きつけられるアルネ。
(あれ… この瞳… )
アルネはそう思いながらも、その少女を見て、ノギジへと声を発した。
「ノギジったら… やっぱり子供じゃない! 君! 人の物取っちゃダメでしょ! お母さんに教わらなかった!? 全く! これはあの子の大切な物何だから! 返してもら… 」
「小娘… お主… もしや現在の… 大聖女か?」
「え? こむ… すめ?」
アルネはその姿と相まっていない話し方に、とてつもない違和感を感じた。
更には、アルネの事を大聖女と見抜いていたのことにも驚き、思わずその手を離してしまった。
しかしその手にはしかと、ノギジの首飾りが握りしめられている。
「な、何を… いいいい言っているの? かしらっ?」
アルネは目をあっちらこっちらへとに向けながら、更には唇を尖らして言う。
「嘘が下手だな… そうか… 属性は?」
「へ? ぞ、属性? あなた… 一体… 」
しかしその瞬間。
もふもふのその身体が上方から、その少女もどきの身体へとのしかかった。
「おいっ! ババア! 俺の首飾り返しやがれっ!」
その小さな身体には、ノギジの爪が食い込んでいる。
痛みを感じる素ぶりを一切せずに、少女もどきは余裕な笑みを浮かべながら、言葉を発した。
「ほぉ… これは珍しい… まだ生き残りが居たとは… 」
(何だこの感じは… )
ノギジはその少女の顔を見て、不思議な感覚に陥った。
「は? 何を言ってやがる!? しらを切っているつもりだろうが、最初からこれを狙って取ったんだろう!? いいから返せっ!」
その少女は微動だにせず、淡々と言葉を発する。
「そうじゃ。それよりお主、ルー族であろう?」
「お前っ、何者だ!? 早く返っ… 」
「ノギジ、それはもう取り返したわ。この… 人… 何か知ってそうよ? 離してあげて… それに血が… 」
アルネのその言葉に、少しだけ冷静さを取り戻したノギジ。
その胸元には、血が滲んでいた。
ゆっくりと離れるノギジ。
「お前… 一体何者なんだ? 何故この首飾りを奪った?」
ノギジは問い詰めるように、睨みを飛ばした。
そうこう話をしているうちに、ルクナ達もその場へと到着した。
(子供? 何だ? 一体どうなっている?)
その少し前に状況を見ていたネネルトが、簡単に説明をする。
「ふぅ… 何だか随分いるな… 全員、お主の連れか?」
「えぇ… てかあなた、本当に何者なの?」
「わしの名はリラン。お主の先輩じゃ」
「へぇ先輩… ん? 先輩? どういうこと?」
「元大聖女様ということじゃ」
「え…… えぇぇぇぇ!!? 嘘でしょ… ? いた! 本当にいた! 生きてた! 先輩だ! それも大先輩っ!」
「おい… 受け入れるの早えな。あまりすぐに信用するなよ。嘘かもしれないだろ? 俺らのことだって何処からか情報を得て… 」
ノギジは、その警戒心を解かない。
「その首飾り… なくなっては、困るのだろう? 月が満ちる時に、本来の姿を抑えることが出来なくなってしまうから」
「… っ!? 何故それを… それを知っていたなら、何故奪った?」
「確かめる為じゃ… 」
「確かめる?」
「其方が、本物のルー族がどうかをな」
(やっぱり、知ってて奪ったんだ)
「必死に追いかける様子を見て、確信した。それとその瞳もな」
すると、更には木の上に身を潜めていたデイルの方へと、目を向けたリラン。
「それと… そこのお前… 種族にしてもらったんだな? その小娘によってか。ほほう、そうかそうか。これも珍しいこっちゃ。パストゥールとは… 神のもとへと導く存在か」
「すごい… 全部当たってる… うぐっ… 」
すると、ルクナが咄嗟にその口を閉じた。
耳元で囁く声が聞こえる。
「まだ信用できない… 」
コクコクと頷くアルネ。
しかし、リランは更に言葉を告げる。
「そして… 其方は… 」
そう言いながら、ゆっくりとその一歩を踏み出した。
しかし、その一歩はとても速く、一瞬にしてハルザの目の前へと来ていた。
「ヴァンパイア族だな… 全ての種族の身体を制する者… わしの事も診てもらおうじゃないか」
「な、何を言っている… ? 種族の身体を… 制する?」
「何じゃ? お主自身のことじゃろう? まさか、何も知らんのか?」
すると、ルクナが言葉を出した。
「随分物知りだな? 誠に、其方が元大聖女だというのであれば、証拠を示せ」
「ん? この知識が、十分な証拠だと思うがな… まぁいい。ついて来い」
その言葉に迷いなく、その足を踏み出す者がいた。
彼女は振り向く。
その顔には、好奇心が張り付いていた。
そして言う。
「面白そうじゃない?」
「…… はぁ。全く!」
ルクナは渋々と、大いにため息を漏らした。
しかし、少しの心配がありつつも、その周りには小さな期待で囲まれていた。
それに続き、全員がゆっくりと彼女らの後を追う。
その場所は、とても古めかしく、そして何より小さかった。
(まるで、ドールハウスね)
「入れ」
「え?」
「待って! この中に? 全員は無理なんじゃ… てか、私でも入れるのかすら… 」
「問題ない」
「え? いや、どうやって?」
「普通に入ればよかろう」
「良かろうって… 」
しかし、アルネ達の心配をよそに、リランはその小さな扉から、スッと吸い込まれるように小さな家の中へと入って行った。
「えぇぇぇ… 」
「どうする? 俺はまだ信用ならないと思っている。しかし、彼女の言っている事が本当だとしたら、今後の手掛かりの大きな進歩になるのは間違いない… 」
ルクナのその言葉にアルネは、大きく息を吸った。
そして、ニヤリと笑みを浮かべると共に、その声を発した。
「入る一択しかないでしょ! ふんっ」
「… だな」
ルクナは予想してはいたかのように、一歩を踏み出した。
しかしその様子に、即座に手を出す者がいた。
「ルクナ様、お気持ちはよくわかります。もちろんその判断も予想しておりました。念の為でございます。ここはまず下の者から、入るように致しま… 」
しかしその瞬間、中から扉が開いた。
「おい! 何をしている? さっさと入れ!」
リランはそう言いながら、扉のすぐ側に居たアルネの腕を引っ張った。
「わっ!」
そのまま、するりと小屋の中へ足を踏み入れる。
もちろん、身体の何処かが削れたわけでも、潰れたわけでもなかった。
むしろ、どこにも当たってさえいない。
自身の身体よりも、遥かに小さいはずの扉だった。
そう見えたはずだった。
「あれ? ん?」
「どうした? 其方、この扉に見覚えはないのか?」
「え? 見覚え? うーん… 」
「あるな」
「え?」
その声に、振り向くアルネ。
すぐ後ろには、ルクナの姿があった。
更には、次々に家の中へと従者達も入って来ていた。
ネネルトだけは念の為、外で護衛をする為残っていた。
ほぼ全員が入ったこの家の中は、ぎゅうぎゅうになるかと思いきや、そのような事はなかった。
家の中は、外観からはとても想像ができない程の造りであったのだ。
’メルヘン’
この言葉が、1番しっくりくるであろう。
そして何よりもその中の広さは、屋敷と呼べる程の広さを呈していた。
アルネがそう感じながらも、ルクナに尋ねる。
「ルクナ? あの扉を見た事あるの?」
「あぁ、あれは神殿にあったものと類似している。そうだな? ノギジ」
皆がノギジの方に視線を送る。
「いや… わからない。確かに似たような造りの扉はあった。しかし、使った事がなかったからな」
「あ、もしかして神殿長の部屋にあったノギジ専用の扉の事?」
「そうだ。しかし、あれを使用したことがないとは、一体どういうことだ?」
「いかにも、怪しいからに決まっているだろう? それに、同じ部屋に入るのに、何故俺にだけ専用の扉がある?」
(確かに… あの扉は、神殿長の部屋に入ってもあったわ。てことは、他の部屋の物ではない。何でだ? まぁ、あの時はノギジの可愛さに圧倒されて、それどころじゃなかったからな… )
それらの会話にリランは、反応した。
「なに? あの扉を潜った事がないのか? だからか… その姿では目立つであろう?」
「え?」
「もしかして… そういうことか!」
ルクナが何か勘付いたかのように、驚きを隠せないでいた。
「どういう事?」
「あれはおそらく、本当にノギジの為の物だったんだ。いや、厳密に言うと、ノギジがというよりかは、その神殿を治める者の為に作られた物、と言った方が良いのだろう」
アルネは、ルクナのその言葉に更に首を傾げる事となった。
「俺も、その効果… というか、具体的な現象が何なのかはわからない。ただ、察するにその扉を潜る事で、身体に何かしらの変化が起こるのではないか?」
ルクナはそう言いながら、リランの方を見た。
「ふむ… まぁまぁじゃな。その扉とここにある扉は、 ’ヤグスの扉’ と言ってな、ある時にはその姿を抑え、ある時には本来の大きさを抑える。そして更には、その道へと導く事が出来ると言われておる」
「なっんてすごい扉! その扉は、この世界に2つだけ?」
「いや、まぁざっと… 」
リランは、その小さく可愛い手を広げて見せた。
「え? 500!?」
「違うわい! 5つじゃ」
「冗談よ。それにしても5つか」
「めんどくさい質問はするな。これはそんじょそこらの輩が、使用出来る代物ではない。
それに、簡単には見つからないようになっておる。
この家や、神殿にあるもの程わかりやすく ’扉’ という形になっているのは、その2枚のみだ。あとは見つけるには、かなり難関じゃぞ」
「扉なのに扉の形になっているのは、その2つしかない? 益々気になるわね。そして混乱。でも何か… 旅の目的が増えてきて、ワクワクしてきた。そうだ! それと、あなた自身の事をもっと教えてくれない? その大聖女だった頃の… 」
「そうじゃな… 」
そう言うと、部屋が一気に明るくなった。
部屋中の蝋燭に灯りが開く。
暖炉には暖かい火が灯り、薪の周りにチカチカと火花が散り始める。
そして、それと共に部屋中の装飾が、目の奥へと飛び込んできた。
「うわぁ… 」
「素敵なお家ね」
アルネとシュリが感嘆の言葉を漏らす。
そして、大きな一枚木のテーブルを囲むように、ソファへと促された。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
突っ走って書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
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