episode68〜見知らぬ文字〜
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ハルザが長年、住処にしていた古城。
城内に存在した開かずの扉は、大きな古書であった。
その本の中に書かれていた内容を、解読したハルザ達。
それによると、古城の真の主はオーガ族である事がわかった。
更にはここから西に位置するある森には、彼らの別邸とする住処が存在するという事も記されていた。
手掛かりの少ない中、その可能性を賭けて西の森へと足を運ぶ事を決意したアルネ達。
出発の前夜。
アルネはあの巨大な本の内容について、もう少し詳しく尋ねた。
「ハルザ? あの本には、オーガ族自身の事が書いてあったの?」
「そうですね。西の森に屋敷が存在する事や、他の種族との共存。文字や言語に関しては、オーガ族が全て把握していたようです」
「全て? 知的な種族だったのかしら? じゃあハルザの部屋にあった古書も… ん? あれ? でもそんな事は… 」
「そうなのです。ここが疑問点の1つで、それはほぼ不可能に近いのです」
ルクナも勘付いているかのように、深く頷き口を開く。
「そもそもあの部屋には入れない。そして、その部屋にあった大量の古書の文字を書く事は、相当器用でなければ成し得ないだろう。おそらく、別にその古書を書いた者がいるのではないか?」
「ルクナ様の仰る通りでございます。古書のほとんどが、あの部屋に最初からございました。他の部屋にあったのは、ほんの数冊。そして、机や椅子、筆は私共と同じくらいの種族が使用出来る大きさの仕様になっています」
「やはり他にあの城に住んでいた者が… ? もしくは、出入りしていた者がいたか」
「謎ね… わからない事が多い… 頭が混乱してきたわ… 」
「アルネ様? では何故、そんなにお顔が歪んでおられるのですか?」
アルネのその抑えきれないニタリ顔を見て、ヴィカが尋ねた。
「え? 何故って… ん? てか歪んでないし!」
「申し訳ございません。緩んでいるの間違いでした」
アルネがちょっぴり睨む。
「何だか… 世界の… この世の謎を解く事によって、真実に近付くのがとても嬉しいのよね? 不謹慎かもしれないけど… ワクワクしている自分がいるのよ」
アルネは正直な気持ちを発した。
「アルネの気持ちはわからなくもない。本当に俺達は、狭い世界で生きていたんだなと実感する。きっかけはその100年前の出来事だったかもしれない。
文献にも載っていないような事を知る度に、心が躍る。もっと広い世界を知りたいと思ってしまう自分がいるのは、俺も同じだ」
アルネとルクナはお互いの想いを聞き入れながら、見つめ合う。
そう微笑む2人は、この先もずっと好奇心を絶える事はない。
彼らがユマン族として、第一線に立つ事は誰も知る由もなかった。
(それにしても… 一体誰がこの部屋に? その種族って何者なんだろう?)
アルネはそう思いながら、次の疑問を投げかけた。
「ねぇハルザ? ノギジも所々読める箇所があると言ってたわよね? それは一体何族の部分だったの? ルー族の部分だけ?」
「いえ、確認しましたところ、ノギジが理解していたのは、複数ありました。ルー族はもちろんの事、他にユマン族、アンセクト族… 。もちろんその全てではございません。所々ではありましたが… 」
「なるほど… では、あの本はオーガ族の言語で書かれていたと言っていたな? 要するに、複数の言語が組み合わさった言葉。つまり、ルー族、ユマン族、アンセクト族、シレーヌ族、そしてヴァンパイア族の文字がそれだということか?」
ルクナも頭の中を整理しながら、問う。
「それが… 私も見知らぬ、ある文字がほんの少し含まれておりました。それを解読するのに時間がかかってしまい… 」
ハルザが申し訳なさそうに、そう話す。
(いや… それでも随分と早かったけどね… )
「他の種族の文字? 一体他に… 」
「そればかりは申し訳ございませんが、私にも検討がつきません」
「まぁ、仕方あるまい。ここまでわかっただけでもかなりの進展だ。礼を言う」
「いえ、滅相もございません」
(あれ? 何だか… 嬉しそう… ?)
アルネは、ハルザの非常にわかりにくいその表情を捉えていた。
「それと、思った以上にノギジが、その読解力を発揮してくれました。彼は文字同士の繋げ方を理解していました。
しかし、彼自体にはどのような経緯でその技術を得たのか、記憶がないようで… 潜在的な記憶とでも言ったらいいのでしょうか? まるで脳が覚えているようでした。ノギジのおかげにより、こんなにも早く解読できたと言っても過言ではないでしょう」
その称賛の言葉に、ノギジは非常にわかりやすい態度を示した。
(ハルザとは真逆ね)
そう思いながらも、アルネは微笑んだ。
「すごいわ、ノギジ。どこでそんなの… あ… そういえば、読み聞かせてもらったような記憶があるって前に言ってたね? もしかしたら、その時に教わったんじゃない?」
すると、アルネはある事を思い出しながら、蜘蛛の糸ほどの細い記憶を辿り始めた。
(ん? 待てよ… 確かノギジは… )
そして、アルネはお決まりのだんまりタイムへと突入した。
(あの国へ来る前は、アディ達と一緒に暮らしていたのよね? て事は、ユマン族の言語は知っていた可能性はある… じゃあアンセクト族は? もしかしてその時に一緒にいたのかしら? それにしたって、オーガ族の言語の繋げ方を何故? ゔーん… )
アルネの表情は、わかりやすく段々険しくなっていく。
「アルネ様? 本当に歪み始めておられますよ? 顔」
ヴィカのそのひと言で我に返る。
そして、ノギジの声が耳に届いた。
「俺も、どれがどの言語かは区別がついていなかったからな… ハルザのおかげで、段々とその区別がついてきた。それに誰に教わったのかも、未だわからない。でも… 」
「でも?」
「あの本を… ハルザやヴィカの皆と一緒に解読している間は、とても楽しくて… ふふっ… 」
ノギジは照れたように、その想いを放った。
その無意識さが、アルネの心をくすぐったのだ。
(んかっ、可愛いっ!)
「そ、そう? 好きな事があるのは、とてもいい事だわ。ふふ… そしたら、ハルザやヴィカにもっと教えてもらったら? ふ、ふふ… もちろん私も一緒に教わるわ」
(その不気味な笑いの意図は、一体なんなんだ… ?)
ノギジは少しその距離を離しながら、小刻みに頷いた。
すると、ヴィカが意外な事を口にし始めたのだ。
「私はある部分なら見た事がありました。このユマン族の部分です。これは、神殿にあった本の中にありました。そうだな? ノギジ?」
「あぁ、そうだ」
「その本に記載されていた文字です。これはユマンの文字… しかし、おそらくは… 現代の種より以前の文字。古代文字かと… 」
「古代の文字か。確かに、他の種族の寿命が長いとなれば、古代の文字が残っていてもおかしくはない。しかし、どの時代の文字なのかはわからない… ということだな?」
「はい、私共もそこまではわかっておりません」
真実が徐々に明らかになっていく中、新たな謎も現れる。
その糸を繋ぎながら、そして追っていく。
時には絡まり、時には途切れることもあるだろう。
絡まったのなら解けばいい。
切れたのなら結べばいい。
ただ… それだけの事。
そう、それだけの事なのだ。
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こうして、心に引っ掛かりが残ったまま、次の目的地へと目指すのであった。
その森はさほど遠くないという事もあり、更には道中に形跡が何かあるかもしれないので、一同は徒歩で向かう事にした。
今回は、バジリスクの出番はないのである。
出発の朝。
古城を一周しながら、か細く鳴くハルピー達に挨拶をするアルネ。
(寂しいという感情があるのか?)
ルクナはの世にも珍しい光景を、目の当たりにしていた。
古城の護衛を、ハルピー達に託したアルネ。
勝手に彼女が、その導線を引いたに過ぎない。
しかし、それでもハルピー達は、自由を手に入れていたのであった。
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時にはこの一歩が、ある者との出会いを引き起こす事もある。
それは、古城をすぐに出てから起こった。
すっかり陽が入るようになったハルピーの森は、見違えるように緑色を吹き返していた。
太陽の温かさを共に、心地良い風が吹き通る。
しかし、とても穏やかとは言えない風が、突然ノギジの側を横切った。
「… っ!?」
それは本当に一瞬の出来事だった。
誰しもがそれに気が付くのに、時間を要した。
「え… ? 何?」
アルネが、風が抜けた方を見た。
その方向には、小さな子供のような後ろ姿が見えた気がした。
フードを被っている。
しかし、その一部が見えた者がいた。
ノギジだ。
微かに触れられたその場所を見た。
「はっ! ないっ! 首飾りがっ… 取られたっ!」
「えっ!? 嘘でしょ!? あの子が盗んだって事!?」
「違う! ’あの子’ じゃない! あんのっ… クソババアだ! 許さねぇ!」
(え? バ、ババア?)
そう言うと、ノギジは一目散にその少女ではない、小さき者を追いかけた。
その後を全員が追う。
足を進めながら、横並びにいたアルネが尋ねた。
「ノギジ!? ババアってどういうこと!? あの子、子供じゃないの? 姿見えたの?」
「どう見てもババアだったろ? しかもありゃあ、100年以上は生きてるぞ!」
「え!? そんなに!? てか、そんなお年寄りがあの速さで走れる!?」
「知らねぇよっ! あいつ… 一体何者なんだ!?」
「でも… 何はともあれ、あの首飾りがないと非常に困るのは確かよね! … 任してっ!」
そう言うと、全速力のノギジに合わしていたアルネの俊足は、本気を出し始めた。
あっという間に、姿が小さくなるその姿に、驚きを隠せないでいたノギジ。
「… マジかよ… 」
(あれが大聖女の… 本来の力?)
そしてアルネは、その姿を一瞬にして捉えた。
そう、捕らえたのだ。
その姿は、10歳にも見たない程の小さな少女であった。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
突っ走って書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
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