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episode64〜ハルピーの生態〜

たくさんの作品から見て下さり、ありがとうございます!

最後まで読んで頂けると、嬉しいです!


「ノギジ!? その傷は!?」


「え? 傷?」


それは、ノギジ本人も気が付いていない程の、ほんの小さな傷であった。


何処かの木々で、いつの間にか擦りむいてしまったのであろう。


これが致命的になり得ることは、ハルザが1番よく知っていた。


それが、このハルピーの森である。

そう、 ‘血に飢えた森’ 。

この森の別の名が、恐ろしい程わかるのだった。


ハルザは、前方に微かに見える目的地を指差した。


「あそこです! 既に城が見えております! 全員急いで下さいっ!」


その言葉を聞いた瞬間、全員がその手に持つ植物を手放し、一目散に先の見える古城へと向かって地面を蹴り上げた。


しかし、それと共に大きな影と羽ばたく音。


そして、何より耳を塞ぎたくなるような金切り声が鳴り響く。


弧を描くように密閉に近いその森だからこそ、その声が跳ね返るかのように感じていた。


「くっ… なんだ、この酷い鳴き声は… 」


「ルクナ様! あまり、頭に入り込まれないようにして下さい!」


「… っ!?」


しかし、この異様な状況の中、アルネとデイルは妙な懐かしさを感じていた。


2人は、同時に顔を見合わせた。


そして立ち止まる。


その姿に、ハルザは思わず声を張り上げた。


「えっ!? 何をしてらっしゃるんですか!? いけません! お2人とも早くっ… 」



『先に行ってて!』



聞こえないその声は、何故かニヤリと不穏な笑みでこちらに向けていた。


ルクナは、それでも踵を返そうとした。


「ダメだ! アルッ… !」


「ルクナ様! 何か考えがおありのようです! ここは信じて先に進みましょう!」


そう言いながら、ハルザはルクナの身体を急ぎ、古城の方へと引いた。


(くそっ! 何なんだ!)


ルクナは、やり切れない想いが込み上げた。


そしてアルネとデイルは、他全員が無事古城の方へと走って行くのを確認した。


そして、言葉を交わす。


「あの鳴き方… ダメよね?」

「ダメだな」


「だからよね」

「だからだな」


そう言うと、2人は一斉に上を見上げた。


そして、その脚力を駆使して、天井にある巣目掛けて一直線に飛び上がった。

その高く伸びる木々を、繋ぐように渡る。


その息の合う様は、数日を共にしただけでできる代物ではなかった。


2人は幼い頃から、ずっと共に過ごしてきた。

もちろん恋愛には発展しない。

出来ない。

それは家族同然の呼吸だからだ。


あっという間に、張り巡らせた巣に辿り着いた2人。


デイルは、その場の植物を味方に作り上げた武器で。

アルネは、その力で。


そして、それぞれの手を振り上げると共に空がひらけた。


天から降り注ぐ光りは、その暗がりしか知らなかった森へと、めいいっぱいに広がったのだ。


全ての巣が、跡形もなく崩れ落ちる。


いや、落とされたのだ。


ここにはもう、それまでの森はなかった。

陽の光が燦々と浴びるその森は、青々とした木々しか残っていなかった。


それと共に異様な鳴き声は、違うものへと変わった。


もちろんアルネ達の耳には、叫ぶような声など一切聞こえない。


先程の金切り声と同じ持ち主から発せられていた。

ピュイピュイと鳴く、それはまさにハルピーの姿そのものだった。


古城前で見ていたルクナ達は、驚き圧倒されていた。


「一体… 何が起こった… ?」


「私にもわかりかねます… ただひとつ言えるのは… アルネ様達が、 ‘力を使った’ という事は確かなようです」


しばらくすると、デイルがこちらへ向かってくる姿が見えた。


その後ろには、デイルの頭から抜き出た女性の顔がひとつ、ふたつ… いや、後ろに列を成して何体も連なっていた。


「あれ? アルネがいない… 」


ルクナは、その様子に少し不安げに言う。


「3番目のとこだ」


「え?」


デイルがそう言いながら、身体を少しずらした。


その後ろには、一列に跡をついてくるハルピーの姿が更に何体もあった。


すると、ハルピーの全身が露わになった。


遠くからでもわかる、その下半身はまさに鳥そのものだった。


「何なんだ? 何故、あのハルピーが… 襲ってくるでもなく… むしろ従うように列を成しているんだ… 」


ハルザは、心の声を抑えることができなかった。


そして、アルネの姿も見え始めた。


「絡んでおられますね… 」


ヴィカの言葉に、そっと頷くルクナ。


先頭から3番目のハルピーの首元に腕を回したり、羽を広げさせて、何やら言っているアルネの姿を捉えた。


「あんたでしょ!? 私のここに ‘お土産’ 落としたの! ねぇ!? 違う? こっちはわかってるんだからね!」


アルネは、右の腕部分にある白いモノを指差して、その容疑鳥に詰め寄っていた。


困ったように、頭をヘコヘコとするハルピー。


先頭のデイルが、ルクナ達のもとへと辿り着いた。


「アルネは… 何をしている?」


「落とされたんだと、フンを」


「「あぁ… 」」


そして、和解したアルネはハルザへと近づき、言い放つ。


「ねぇ! ハルピーって、リモンの事だったのね!」


「リモン? もしかしてキティール島に居た鳥と、同じ種ということですか?」


「多分ね」


(え? 絶対そうだろ? あのような種の鳥なんてそうそう居ない… それにしても… )


ルクナは、アルネ達が無事である事に何より安堵した。


「アルネ、無事で良かった! 一体何をしたんだ?」


ルクナの問いに、アルネは応えた。

そう、ハルザの方を向きながら。


(まだ怒ってるのか… )


「話でしか聞いてなかったハルピーの容姿。確かにリモンと似てるなとは思ってたのよね。でもその姿を見るまでもなく確信したわ。ハルピーはリモンなんだって。

決め手は、あの鳴き声ね。脳に響くようなあの叫び声」


「あれは、通常の鳴き声ではなく、ハルピーの ’叫び声’ ということだったのですか?」


「そう。ほら、今はこんなに可愛い鳴き声に戻ってるでしょ? これが、本来のこの子達の鳴き声なのよ」


(可愛い… のか?)


ルクナは少し疑問に思っていたが、これ以上機嫌を損ねたくないので、口を閉じていた。


しかし、やはりここには共感する者もいる。


「確かに、可愛い鳴き声になってますね。しかし、私がハルピーの存在を知った時から、既に金切り声を発していましたよ?」


「そうね。可哀想に… 少なくとも100年以上は、この状態だったのね… 脳が混乱するのを止める事が出来なかった」


「混乱? 血の臭いが好物で、その死肉を食べていたのですから、それが混乱のきっかけという事ですか?」


「違うわ… 声よ。この金切り声が、彼女達自身をも混乱させてたの… 」


「そうか! あの張り巡らされた巣のせいだな?」


その言葉に、やっと目が合うアルネとルクナ。


「そう… 巣… と言っていいのかわからないけど、あの森は弧を描くように、ほぼ隙間なく天井を覆っていたわ。そんな時に、あの叫ぶような声が発しられたら… 」


「… 反射して永遠と鳴り響くな」


「うん。それで、その声が反射して自身の耳に溜まって、混乱を引き起こすの。あんな酷い状況下にずっといたなんて… 」


「そうだったのか… 」


「血が欲しいわけじゃない。血に飢えてるわけじゃないの。むしろ逆。血の臭いが嫌いなこの子達は、叫びそして拒否する。もちろん叫べば体力も消費する。お腹も空くでしょ? 

けど、光が遮られる事によってその食物も育たない。抑えようにも抑えられなかったのよ。混乱によって、目の前の血から、それを貪る事を。

この子達はただ木の実が食べたかっただけなのに。大好きな木の実を… 」


アルネはギュッと、近くにいたハルピーを抱きしめた。


その姿を見ていたデイルは、少し昔話をした。


「俺達はあの島で、よくリモン達の混乱を招かない様にしていた。こいつらは、バニーの近くにあった実を好んでいたからな。そのバニーによって攻撃されると、よくああいう叫び声を出すんだ。

一度だけ、アルネが風邪を引いた時があった。その時は1週間程寝込んでたな? そのたった1週間が恐怖を招いた。バニーの成長は思った以上に早く、その蔓を好物の木の実のある木へと侵食していたんだ。それは、半分弧を描く様に蔓を張っていた。

そして、それに反射した叫び声によってリモン達は、混乱していた。その時に仲間の死肉を食べている姿を見たな… まぁこれは俺だけだったが… だから、すぐにそれを破壊した。パストゥールのこの力をもってな。

アルネが、その場にいなくて良かった… 本当に… まぁ後で端折った部分だけ、説明したけどな」


「そうだったんだ。それは私も今初めて聞いたわ。ありがとうね、デイル」


少し照れくさそうに、鼻を擦るデイル。


「私達は、毎日バニーちゃんのもとへと赴いたわ」


(それで… あんなに鍛えられていたのか… )


「では、今はどうしているんだ?」


ルクナは、少し気にかける様に言った。

その問いに、デイルが応えた。


「それなら大丈夫だ。訓練させてあるからな」


「訓練? しかしパストゥール族は、アルネが側にいなければ、その姿は維持できないんじゃないか?」


「そうだ。だから… 」


「違うわよ! 訓練をつけたのは、リモンの方よ! バニーちゃんの蔓が伸びるのは、自然の事だから仕方ないでしょ? 攻撃性も強いし。だから、それを抑え込める様に、リモン達を訓練させたの。そして、その間に村の皆が破壊するって言ってけど… あぁそうか… 皆はもう… 」


「お前、最後までちゃんと話を聞けよ」


そう言いながら、パシンとアルネの頭部を軽快に叩いたデイル。


「いでっ… 」


「仲間には、ちゃんと頼んでおいた」


「本当っ!?」


「言っただろう? 確かに、アルネが側にいないとその力は弱まり、その姿を維持できない。しかし、精霊としては存在してるって」


「え? 言ってたっけ?」


(もう一発殴ってやろうか?)


デイルは、その拳を握り直した。


「あぁ… 言った! だから、安心しろ。交代で見るように頼んであるから」


「ありがとうっ! デイル」


そう言いながら、アルネはその身体に抱きついた。


「でもそうか! 皆が精霊だったから… 今思えば、破壊するってそういう事だったんだ。それほどの力がある… 納得だわ、うん」


(それより… このハルピーを… 訓練させたのか? まぁ… バジリスクの件がある。アルネならあり得るな)


アルネが腑に落ちた様に頷いていると、今度はハルザが質問を投げかけた。


「では先程、何故ハルピー達は列を成していたのですか? 普通の動物でも、中々不思議な光景です」


「これは序列ね。先頭と最後尾は、1番下っ端。真ん中にいるのが、1番力があるものよ。ほら… 」


そう言いながら、辿り着いた力のあるハルピーこと、リモンを指差した。


(変な行動パターンだな… )


そう思いながら、ハルザは無理矢理納得に至った。


「それにしても… 変ね」


アルネが後ろを振り返り、先程まであったハルピー達の巣の方を見た。


「何か気になることでもあるのか?」


ルクナが、ちょっとずつ歩み寄る。


「うん… この子達は、巣を自分達で作るわけがないの。ましてやあんなに隙間のないものなんて… 」


「そうなのか?」


「だって、苦しむような選択は自らしないでしょ?」


「うむ… 」


「奴らは巣は作らない。その辺で寝るからな。解放が1番なんだ」


「なるほど。では… 誰かが故意に?」


「その可能性は大いにあるわね… 」


(それにしても、ここでもか… ゴールドバニーの事といい… 次はハルピーでリモン。あの島にあるモノがまた関係してきた… これは偶然なのか?)


「で? どうするんだ?」


デイルが困った様に、アルネへと投げかけた。


「ん? どうするって何を?」


「こいつらだよ。このままだと一生、列を成して着いて来るぞ?」


「あら? 良いじゃない?」


「良くないだろ? 目立って仕方がない。いかんせん、どうやって居場所を確保するんだ?」


すると、アルネはまだ知れぬ古城の方を見た。


「そうね… 守ってもらう?」


「え?」


「何を?」


「このお城よ! この中には、大切なものがあるのよね?」


「… はい。しかし… 一体どうやって?」


「ふふふふ、お気付きかしら? 私が偉大な大聖女である事を」


(自分で言うかよ)


「この森の精霊ちゃん達、とても強いわね。リモン… あぁ、ここではハルピーね。この子達が解放されたおかげで、徐々に存在を現してきたわ。今まで力を使ってなかったせいなのか、この城のおかげなのか… わからないけど、精霊ちゃん達の力を借りるわ」


そして、アルネは古城に入る事なく、その周りを一周し始めた。


アルネを先頭に、引き連れていたハルピー達は一羽、また一羽とその列を外れていく。


一周し終わる時には、後ろにいたハルピーが全員いなくなっていたのだ。


その代わり、城を囲む様にハルピーが一定の距離に配置されていた。


彼女らの足下には、大好物の木の実と、葉っぱのお布団が敷かれていた。


「これでよしっ!!」


(異様過ぎる光景だな… )


「守ってもらうって、こういうことか… 」


「そうよ! まぁその場に縛られることなく、自由にしてもらっていいんだけど、精霊ちゃん達には定期的に、木の実をその場に持ってきてもらうようにお願いしたから」


「確かにこれでは、普通の者は近寄り難いですね… 」


「皆! よろしくね!」


(大聖女の力を濫用してないか… ?)


デイルは、その口を慎んだ。






最後まで読んで頂きありがとうございます。

突っ走って書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。

何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。


また、心ばかりの評価などして頂けると、励みになります。何卒よろしくお願いします。

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