3-45
暫くして先生の号令が掛かり、多少バラバラになっていた生徒たちが集合する。クラス順に整列すると先生が前に仁王立ちした。
あら、あれは学院名物のミス・レイウェル先生じゃない。彼女は他の先生とはかなり気色が異なるため、生徒からは一目置かれている。それはなぜかと言うと。
「いいかー、お前たち。今から注意事項話すからちゃんと聞けよー」
口悪っ。
相変わらず貴族学院の先生とは思えないほど口悪いわね。
そしてこの口の悪さと同じくらい態度も横柄である。そんなんだから学院中の人たちから多少距離を置かれているのだけど、本人は全く気にしていないらしい。こんな態度だから、入学しはじめは反発していた生徒もいたのだが、彼女の魔法の力は凄まじく入学式から1カ月も経てば誰も反発しなくなっていた。
一応生意気な貴族生徒たちの気を引き締める、というか懲らしめるための要員として指導係を担っているのだが。それにしたって制裁の方法がえげつないのだとか。噂しかしらないけど。
しかも実力があるだけに他の先生も彼女のすることに多少目を瞑っているほどだから恐ろしい。いや、この学院大丈夫なのかしらね。
まぁ、一応先生なのだから生徒対してうまく手加減してるだろうけど。
「1回しか言わないからよく聞けよ~。
1つ目~、時間をきっちり守ること!
2つ目~、グループ行動を厳守すること!
3つ目~、決められた区画外には絶対に足を踏み入れないこと!
4つ目~、—————————————」
気怠そうに間延びした声で注意事項を読み上げる。しかし、昨日もHRで再三注意事項なんて聞かされてるし、配られたプリントにも書かれているから今更聞いてもねぇ。でもそれを態度に出したらあの先生に何されるかわからないし。
ああ、この時間ちょっと退屈。
「エスティ様、エスティ様」
耳元で小声で囁かれそちらに目を向けると口元に手を添えたセイラが嬉しそうにはなしかけてきた。
どうしたんだろう。ていうか度胸あるわねこの子。
「この間おっしゃていたお願いの話ですけれど、ヴァリタス殿下をお誘いしたら承諾して下さいましたよ」
そう言うとニッコリと笑った。一週間前というギリギリのタイミングで頼んでしまったからちょっと不安があったけどちゃんと話してくれたのね。良かった。
「ありがとうセイラ様」
こちらもお礼と共に笑顔で返す。でもやっぱり急に頼んだから彼女には申し訳ない事をしてしまったわ。
あとで何かお礼の品でも用意しよう。
「はい、そこ! 私が話しているときに私語をしない!」
瞬間ビクッと体が跳ねる。思わず瞬時にレイウェル先生の方を2人揃って振り返った。レイウェル先生の目線的にどうやら私たちの事を言っているわけではないだろうけど、一瞬怖かったわ。
ふぅ、ちょっと心臓止まるかと思っちゃった。安心したら自然とセイラ様と目があった。なんだかそれが可笑しくて、またしても2人して笑いあってしまう。
「はい、そこも! ちゃんと話聞けバカ者ども!」
そして今度こそレイウェル先生に指さして注意されるのであった。
先生の退屈な話が終わると、やっと自由行動時間となった。話終わった後、呼び出しを受けてお説教でも食らってしまうのではないかと身構えたがそんなこともなくて安心した。そんなことになったらせっかくのウキウキ気分も台無しになってしまいかねない。あの先生だからやりかねないし。
市井見学会の開始の合図とともに1つに集まっていた生徒が散り散りになりながら各々自分たちのグループのメンバーと固まっていく。
グループと言っても先生側が決めたものではなく、人数や人などは基本自由に決めてよいというお達しだった。そのため、どこのグループもいつも仲良くしている人達で固まっている。私たちもその例にもれず、私とナタリーとセイラの3人といういつものメンバーだ。
早速プリントに書かれた地図を手にそれぞれ自分たちが決めた目的地へと歩みを進めていく。さて、私たちも目的のお店に行くとするか。と、プリントを広げ地図を見る。
配られたプリントの地図にはすでに、行きたいお店が書き込まれている。まぁ殆どがこの2人が書き込んだものだけど。私が行きたいところなんて本屋ぐらいなものだしね
なのでまずは2人がどこに行きたいのかよね。
「ヴァリタス様とはお昼の時間に合流しようという話になりました」
「そうなの。ならその前に女の子だけでしか周れないお店にいきましょうか」
「はい!」
楽しそうに会話するナタリーとセイラに付いていくかたちで歩いていく。女の子しか周れないお店ということは……。
このアクセサリーショップとか仕立て屋とかかしら?
「じゃあ早速、あのカフェに行きましょ!」
「ああ! あのパンケーキが有名なところですね!」
ええ、一番に行くところがカフェなの⁈
しかもパンケーキ⁈
さっき朝食食べてきたばかりなはずなのに、よく入るわね。号令でも掛けるように、ナタリーは明後日の方向を指さすと目的のカフェへと足を進める。その後ろに満面の笑みのセイラと、少し呆れ顔の私を従えて。




