第9話・パーティーの女子会の話
「まずはこの地を買いましょう。その為に資産が必要ですわ」
リアリスとテール達の出した結論だった。
街を作るためには貴族の許可が必要。そしてそれは国が関わってくる。でもテールはお貴族様だからお金さえあればなんとかできるらしい。
「それでどうやって、その金を手に入れるんだよ」
フレットはお金で苦労しているから、お金の稼ぎ方がわからない。
「アイテム出し放題チートがあるのですからお金なんて簡単に稼げますわ」
テールはどうとでも無いように言う。
「例えば、魔獣のローブを量産して売る。これだけでもかなり稼げますわ」
でも、それってすごく目立つよね?
僕達が寄付しただけで大騒ぎになったし。
「例えでしてよ。実際やるのはリスクが伴いますわ、なので魔獣のローブの偽物を作りましょう」
「偽物……」
よくわからなかった。フレットも頭にハテナを浮かべている。
「なるほど、偽物なら数があってもおかしくない。魔獣のローブのブランドイメージを利用するんだね」
リアリスは理解したみたいだった。
「魔獣のローブの偽物、魔獣のドレスなんていかがでしょう? 貴族向けの商売と考えれば一点物より量産品のが高く売れますことよ」
テールは魔獣の皮を職人の元に持ち込み、ドレスを作る。それを貴族の間で流行させるという案を考えていた。
リアリスは僕の方をじっと見て笑顔を向けてくる。
「うん、このビジネスには広告塔が必要だ。魔獣のドレスの気品を引き立てるね。テール、出来そう?」
テールに話を振る割りに、こちらをちらちら見て来るリアリス。そんなリアリスにテールはため息混じりだ。
「リアリス、結果が出ている話をしないでくださいまして。アシュ、あなたは社交界に出て貰いますわよ、そのために貴族のマナーを覚えさせますわ」
「え、なんで僕!?」
突然僕に話を振られて変な声が出た。
貴族としてのマナー覚える? 社交界? どうしてそうなったの!?
疑問に思う僕に対してルリヤは断言する。
「美人度の違い。私達3人じゃ貴族の花にはなれない。でもアシュなら余裕」
えっ……?テールたちは美人で、可愛くて、キリッとしてるのに……
僕が彼女たちより可愛いって……!?
顔が一瞬で熱くなった。
心臓がどくどくと鳴って、耳まで赤くなっているのが自分でもわかる。
「確かにアシュは可愛いが、こいつ男だぞ?」
フレットがフォローに入るけど、一斉に皆の視線が僕に集まる。
恥ずかしくて、視線を逸らしたくても逸らせない。
「あはは、言ってなかったね。えっと僕、男だからさ……」
言ってて虚しくなった。
——身体が徐々に男から乖離し、女の子のそれへと変わりつつある。
いつ完全な女性になるかの瀬戸際だったんだ。
「だからね、僕は広告塔にはなれないよね! ね、この話はおしまいっ」
すごく誤魔化しているような疑いの目で見られたが、知った事じゃない
(さてさて、アシュちゃんの悪あがきはいつまで続くのでしょう)
うるさい、良いじゃん!
その夜、僕は女性陣に取り囲まれていた。
「みんなでパジャマパーティー」
ルリアがクマのキグルミの様な寝間着を着て迫る。
背後はすでにワンピースを着たアルナスが抑えている。
逃げようにも速度も力も及ばない
白のネグリジェを身にまとったテールは自身満々に告げる。
「アシュ、お話合いしましょうね」
全然話し合いのスタイルじゃない。
ううう、リアリス。助けて!
リアリスは猫の姿で後ろでしっぽをふりふりしていた。
嵌められた!!
「両手に花なのに全然嬉しそうじゃありませんこと」
「お、襲わないよ……」
「ヘタレですわね。まぁいいです。どうせアシュのような男性はそういう事できるタイプではないでしょうし」
テールの言葉に何も言い返せなかった。女の子相手なのに、口でも体でも全然勝てそうにない。
「まず言っておきますわ。今後アシュが男の冒険者として活躍できる可能性は0です。そのなりで危険な力仕事しようとしたら全力で止めますもの」
それは僕への事実上の引退勧告だった。
わかってた。こんな身体じゃ冒険者なんて勤まらないって。
思わず涙がこぼれ落ちる。
「アシュ、落ち込まないで。お人好しに冒険者は向いてないってだけ。あなたに向いている仕事がある」
そもそも、農家を継げない男は冒険者として生きるしかすべがなかった。
女の子は農家で結婚して子供を育てるぐらいしか考えが及ばなかった。
そのどちらでもない今の僕に、できる仕事なんてあるんだろうか……
「アシュはリアリスとコネがあります。そして、私たち貴族とのコネができた。それは、今までの選択肢ではないことができるということです」
今までの選択肢は、冒険者として活躍するっていうやつだ。
でもリアリスが作る平和な街。
冒険者よりそっちのほうが魅力的に感じる自分がいる。
女の子の役割をするのは恥ずかしいけど……リアリスや皆の役に立つ選択肢もあり、だと思う。
「うん、僕、広告塔っての、やってみる。うまく行くかわかんないけど……」
言ったあとから「駄目だったらどうしよう」という不安がよぎった。
身体から熱が失われていって、呼吸が浅くなる。
「大丈夫、失敗しちゃっても皆でフォローします。最初からうまくやろうとせずに、1から少しずつ積み重ねて行けばいいのです」
アルナスの言葉がじんわりと心に染みた。
一人じゃないんだ……そう思うと、胸がゆっくりと暖かくなっていく。
「うん、ありがとう。皆」
その嬉しさが顔に出ていたのか、テールがふっと柔らかく微笑んだ。
「ふふっ、アシュったら、そんなに嬉しそうな顔をして……可愛いですわね」
「え……?」
突然の褒め言葉に、僕はびっくりして目を丸くした。
するとルリヤがにやにやしながら身を乗り出してくる。
「じゃあ、まずはアシュからね。恋バナするよ」
「私も聞きたいですわ〜」
「フレット様との関係、気になりますね。さぁアシュさん、キリキリ吐きなさい」
「にゃーん」
リアリスまで猫の姿で楽しそうに尻尾を振っている。
……今までの話は所詮事務的なことで、女子会といえばやっぱり恋バナだった。
夜が明けるまで、僕は女子たちにもみくちゃにされたんだ。
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