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第2話・初めてのお着替えとダンジョンの話

 起きた瞬間、性別を確認した。


 僕がリアリスを助けた次の日、天蓋付きのベッドで目を覚まし昨日の出来事を思い出したからだ。


「良かった、まだある」


 この状況がいつまで続くかわからないけど、ひとまず自分の男性が消えていないことに安堵した。

 ちなみに着ている寝間着がどう見ても女性物なのはリアリスのいたずらだと考えることにする。


「ちょっとスースーして、ふわっとした生地が薄くて柔らかい。これが女の子の服……変な感じ」


 特に女性用の下着は丈が足りなくて収まりが悪い。ここだけは男物用意してほしいな。


 まずは、部屋の中を漁ってみる。

 大きなクローゼットには女性用の衣服が詰め込まれている。

 他にも、宝石っぽい物やら高そうなお宝がいくつも置いてあった。

 

 そして、壁を透過してリアリスが顔を出す。


「どう、スイートルームって奴を再現してみたんだけど、気に入った?」


「えっと、こんな豪華な部屋初めてだよ」


「喜んでくれたみたいだね。作った甲斐があったよ」


 え、作った?

 僕のために? こんな広い部屋を?

 思考が停止する僕に、リアリスはさらに追い討ちをかける。


「そうそう、ダンジョンの中にね。私の魔王の能力はダンジョンクリエイト。ダンジョンを意のままに操れるんだよ。制限はあるけどね」


 リアリスの話では、ダンジョンの内装程度ならいじれるらしい。ここは洋館のダンジョンを改造した隠し部屋なんだそうだ。


 こんな立派な部屋を作れるなんて、僕は驚きを隠せず、ベッドを見つめてため息をついた。


「じゃあ、いつまでも寝間着じゃよくないし、着替えようか」


「あ、あの僕の服は?」


「何言ってるのさ。あんなボロとっくに捨てたよ。それに、クローゼットに入れといただろ?」


「クローゼットの中身って女の子の服しかなかったんだけど……まさか、女装するの!?」


「あー、まだ恥ずかしがってるんだね? 大丈夫。慣れだよ。それにもう男物渡してもサイズが合わないだろ?」


 リアリスがクスクス笑うと、クローゼットから洋服を選び始めた。


 頼む、女物でも仕方ないけど、なるべく地味目の奴にしてください。







 リアリスが後ろから一つずつボタンを留めていくたび、息が僕の耳元にかかる。

 正面には鏡に写った女の子が二人。僕とリアリスだ。

「り、リアリス、ち、近いよ」

「我慢我慢、女の子はこれぐらい普通だよ」


 リアリスは我関せずと、ボタンで僕の身体を締め付ける。

 くびれのボディーラインがくっきりとして、小さな胸の膨らみが浮かび上がる。

 もう男の体じゃないことを突きつけられて、目を逸らしたくなった。

 なのに、鏡の中の自分が思ったより可愛く見えてしまって……顔が熱い。

たぶんリアリスの甘い匂いも、余計に頭をボーっとさせている。

 

「ふぇぇ」


 女の子みたいな変な音がでて、自分で自分が情けなかった。


 その後も次々と着替えさせられることとなった。

 そんな感じで僕は言われるがまま着せ替え人形と化した。






「良かった、派手なのじゃなくて……」


 決まったのは茶色の長袖と草色の短パンの組み合わせだった。足が見えるのは恥ずかしいが、今までの派手なドレスなどと比べると現実感がある服装。

 息も幾分楽になった。たぶん盗賊の女の子が似たようなのを着てるのを一度だけ見たことがある。


「何で盗賊なの? 僕盗賊の技術なんてないけど」


 別に盗賊の技能がないとそういう服装してはいけないって決まりはないが、気になった。


 だがリアリスの言葉は予想外の物だった。


「大丈夫、ダンジョンの中のことなら任せて! トラップやモンスターの位置、お宝の配置場所なんていくらでも教えられる。一流の盗賊の出来上がりさ」


「それ、八百長じゃん!」


「ストーリーとしては、アシュはダンジョンの最難関エリアをソロでクリアできる猛者だ」


 うわ、なんかストーリーが始まってる。


「彼女は単身でとあるレアアイテムを冒険者ギルドに持ち込むことで知名度を得る」


 あるアイテムって何!?

 絶対ヤバい奴じゃん。


「そして勇者たちに共にダンジョンの主を倒して欲しい、って願い出る。勇者とパーティを組んで大冒険に出発だ」


 リアリスが作り上げたストーリーだった。色々突っ込みたい。


「そんなうまく行く? それに勇者の仲間って、高貴な人やらだよ? ぽっと出の冒険者の話なんて聴くわけないよ」


「大丈夫、勇者は大体美女に弱いもんだ。それに何もアシュくんだけに矢面に立たせるつもりはないよ」


 えっと、あー、魔王が外に出たらまずいんじゃ……


「だ、大丈夫。僕がやるから安心して、ねっ!」


 僕は根拠なく、リアリスに声を上げた。


「……やる気十分だけど、アシュくんの現在の能力じゃ勇者に戦えないと思うし、それに私も無防備に外に出るタイプの魔王じゃないよ」


 リアリスは銀色のネコのぬいぐるみを渡してきた。毎回、手品のように取り出すのでびっくりしてしまう。


「これ、ネコさんだよね?」


 何の役に立つの? っと聞いたつもりだったのだが、僕のボケた物言いにリアリスは爆笑する。


「あはは、完全に幼女のそれだった。アシュくん絶対女の子適性あるって」


「なんでそうなるの!?」


 女の子の適性なんてないよ絶対、ぷくー。

「うん、その顔、可愛いって自覚ある女の子しかしないと思うんだけど……まぁいいか」


 わけがわからないよー。


「まぁまぁ、見てなって」


 と言い呪文を唱えると、抱いてたネコのぬいぐるみが動き出した。


『にゃーん、アシュちゃんどう?』


「うわぁ!? ネコさんが喋った!? この声、リアリス?」


 そう、ぬいぐるみはリアリスの声でしゃべる本物のネコに化けたのだ。


『行動は、ネコそのものになるね。ちょっとした魔法の応用だよ』


 ネコさんはニュルっと僕の腕の中から抜け出して、リアリスの方に飛び乗る。


「この子をネックレスに封じて必要な時に取り出すことで、アシュくんのサポートができるんだよ」


「そ、そうなんだ。びっくりした」


「眷属対象なら、念話もできるけど、いざという時に安心でしょう?」


 別にぬいぐるみなら倒されても平気だしね。とクスクス笑うリアリス


「じゃあ、色々準備して明日から本格的に動こうか」


「えっと、その前に一つお願いがあるんだ」


 図々しいかもしれないが大切なことだった。

 

「ほほう。いいよ、叶えてあげる」


「えーいいの? ってかまだ何も言ってないよ」


「じゃあ、自分の口でお願いごと、言ってご覧?」


「えっと、一度街に戻りたい。フレットにお別れの挨拶をしたいから……」


 街に出てきて右も左もわからなかった頃、助けてくれたのはフレットだ。

 最後でいいからお別れがしたい、それが僕の唯一の願いだった。


ご愛読いただきありがとうございます。

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今後ともよろしくお願いします

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