第17話・社交会対策会議の話
テールが緊急でメンバーを招集、対王家社交会用の対策会議が始まった。
「次にどうするかの作戦が必要ですわ」
「今回の社交会はアシュが行った物とは規模が違います。高位貴族もかなりの数呼ばれていると推測出来ます」
アルナスが状況を皆に伝えた。
高位貴族って言うと、マナーに厳しいイメージがある。
「えっと、荒が目立たない様にしないと?」
そう告げた僕だったけどルリヤが反論した。
「それは問題ない。アシュは貴族じゃないから、どうやっても荒は出るもの。堂々とすれば良いよ」
そうなんだ……
堂々、それが一番難しく感じる。
胸の奥がざわざわして、失敗したらどうしようという不安が頭をよぎる。
「我が家の第一目標はアシュの身の安全ですわ」
「僕の安全が第一目標なの?」
「ほうほう」
リアリスの目が光る。
僕の安全ってなんで大事なんだ?
「例えばアシュが攫われたら? リアリスが、間違いなく報復する。この国はおしまい」
ルリヤの短い説明が、リアリスの恐ろしさを表していた。
僕は少し息を飲んだ。
……この国がおしまい?
小さくなった手が無意識にドレスの裾を握りしめ、胸の奥がざわざわする。
まだ完全に女の子じゃないこの身体で、そんな大それた理由で守られるなんて……
「でもでも、ダンジョンの外に攻撃する手段は無いんじゃないの?」
僕はそう認識していたが違うらしい。
「そんな物いくらでも用意出来ますわ。例えばスタンピードを任意で起こす。ダンジョンのアイテムを毒物や爆発物に偽造する。後は……」
テールが現実的な手段を次々上げていく。
「それ以外だと、今ある街をダンジョンに取り込んじゃえば、後は分かるよね」
リアリスは自分の手口を自分でバラした。
皆でダンジョンに潜った時のことを思い出す。
その時、リアリスはトラップを自由自在に作り出していた。
自分の住んでる街にモンスターが入り込み、トラップが命を狙ってくる生活……
僕が攫われたら、本当にそんなことが起きるかもしれないんだ……
魔王はやっぱり魔王だった……
皆が本気でそんなことを考えてるなんて、改めてリアリスの恐ろしさを思い知らされた。
「第二の目標は、ダンジョンのある山の周辺の買収ですわ。あの一帯は小規模の貴族が斑に所有権を主張している土地ですの」
テールの後にルリヤが続く。
「所有権が複雑で、めんどくさいから誰も開拓してない。でも立地としては悪くないと思う」
「はじめは一人ずつ所有権を主張してくる相手を取り崩して実効支配するつもりでしたわ。彼らは一枚岩ではありませんもの」
テールの政治手法は地道に積み上げていくタイプの物らしい。
アルナスがしかしと繋げる。
「王家との面会で、あの辺りの所有権を認めさせる事ができれば、無理に小規模の貴族を相手にする必要がなくなります」
「注目度が上がって、王家にダンジョン取られちゃったらどうする?」
ルリヤの心配にリアリスが有効札を突きつける。
「あはは、その時はあのダンジョンの危険性を上げて制御不能にできる、あそこにこだわる必要はないんだよ」
「この魔王は、ダンジョンを爆弾か何かだと解釈してない?」
ルリヤが呆れた声を上げた。
皆の顔を見回すけど、リアリス以外は遠い目をしていた。
「えっと、ダンジョンの山の買収ってなんで今やる必要があるの?」
疑問が湧いたので聞いてみる。
僕的にはそんなに急がなくても問題無さそうだと思ってる。
街だってそうすぐには作れないし、お金が溜まったらで良いんじゃないかな?
「アシュ。皆がダンジョンを見つけたら普通、国の管理になるよね? そうなってからでは遅いんだよ」
ヘラードが冒険者の知識でもわかる説明をしてくれた。
ダンジョンが国や貴族の管理になると利用料を取られるようになる。駆け出しの冒険者はもちろんそんなお金払えないから、管理を逃れたダンジョンに行くんだけど……
「ダンジョンの管理は一つの利権なんだ。他の貴族が運営してるものを横取りは出来ない。だから誰も管理していないタイミングで話を通す必要があるんだよ」
利権ってのはよくわからないけど、横取りは良くないのはわかる。
つまり冒険と同じで早いもの勝ちってことなんだ。
「じゃあ纏めようか。まずはアシュの安全が第一だ。特に政治的に手出し出来ないようにしないと」
へラードはそう言って僕にニッコリと微笑む。
「次にダンジョンがある山の権利を手に入れる。これがあればダンジョンからあらゆるアイテムを手に入れれるルートが完成するね」
「こちらの手札は魔獣のドレスですわね」
「他の貴族が強引な取引を持ちかけて来るなら、販売権を手放してしまうのもありですわ」
「原料の入手は私たちしかできない。結局言い値で買うしかなくなりますわよ」
皆結構あくどい。それで締めはへラードだ。
「じゃあ、そんな感じで、王城での外交乗り越えて行こうか」
よし、僕も気合い入れて頑張ろう。心からそう思ったんだ。
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