第16話・社交会デビューの話
「そろそろ、アシュの社交会デビューの日程を決めません事」
「ふぇ!?」
「そろそろ社交会シーズンだし、その前哨戦が始まるね。姉さん、アシュをどういう立場で社交会に出す計画なのかな」
ヘラードがテールの作戦を聞いてる。僕も知らないんだよね。
「……最初は私のお付としてデビューを考えていましたが、今はへラードの婚約者の方が通りが良さそうですわね」
えっと、いきなり婚約者ってどういう事?
突然の言葉に頭が真っ白になった。
心臓がどくんと大きく鳴って、顔が熱くなる。
婚約者……? 僕が? へラード君と?
そんな大それた話、急に言われても全然想像がつかない。
「アシュは素直に頷いておくといい。それとも、いろんな男に声をかけられまくるのがお好み?」
ルリヤの言葉に嫌な想像がかき立てられた。
色々な男にひっきりなしに声をかけられる僕。
いや、そ、そんな声掛けられるわけ無いじゃん。僕ただの平民だし、男だし……
そんな事を考えているとルリヤに頬を引っ張られる。
「こいつ自分の可愛さを、まだ自覚してない」
「はぁ、アルナス、例の物を見せましょう」
アルナスはメイドを指示して一緒に書類の束を持ってきた。
羊皮紙の束、結構重いから大変そう。
「これは我が家に来た、アシュへのお見合いの話です。もちろん全部断っております」
おみあい? なんで?
10や20じゃ足りないぐらいあるし……
「平民が多いですが、貴族も数名いますわね。貴族や商人は噂に敏感なのですわ。この家に来た来客から、美しい女性の噂を聞いた。それだけで見合いの話が来るものですの」
なんか大袈裟な話になってる。
でも村では結婚なんて親同士で勝手に決まっちゃう物だったし、貴族も似たような物ってことだよね。
「残念ながら、私のお付程度ではアシュを守りきれませんわ。例えば王子様とか、うっかり引っ掛けて来ても困るのです」
テールの例えがぶっ飛び過ぎだよ、へラードも確かにありそうって顔しないで!
「うちの呪いの解除の噂は貴族達に流れてる、注目度が高い僕と居れば君を守れる。あ、でも王子様だと分が悪いかな」
「僕と社交会に出て欲しい、良い?」
「う、うん分かった」
ここは素直に頷いておくことにした。へラードの事は嫌いじゃないし……
ただ、少し上のお兄ちゃんってイメージ。僕を女の子扱いしてくるのはここの家の皆もそうだし、もう慣れてきた。
「アシュ、この社交会は魔獣のドレスを売り出すチャンスなのですわ」
あ、色々ありすぎて忘れてた。リアリスの為に聖剣を集める。そのための資金集めなんだった。
自分で言っててなんかすごい回り道の気がするけど……
そして、ついに僕の社交会デビューの日がやってきた。
そんなに大きくないらしいゲストハウスで親しい貴族に内々でお披露目する。
まずは身内を固めて徐々に話題を大きくしていくのがテールの戦略だ。
僕も数回挨拶の為に話したけど、基本はテールとへラードに任せていた。
魔獣のドレスは皆の目を引いていて、注目されて恥ずかしかったけど、テール曰く良いスタートが切れたとご満悦なようだった。
「アシュちゃん、こないだぶりね。良いお召し物だこと。最近の流行りかしら?」
「うん、魔獣のドレスって言うんだ。テール様が仕立ててくれたの」
パウワー辺境伯が僕に話しかけて来てくれた。
知ってる人なら少し安心して話せるようになったんだ。
「これなら推薦できそうね」
「?」
うん、正直舐めてた。リアリスを助けた時も、あった順調ゆえの油断。それが今回も現実になったんだ。
「ふぇ、次は王城の社交会、王様も来る……どういう事!?」
僕の緊張はマックスだった。
手の汗が止まらないし、口の中がいがいがしてくる。王様と会うなんて無理だよー。
「あはは、正式な物だ。理由は呪いの解消と婚約者の内定祝いって事になってるね」
ヘラードも自暴自棄気味になってる。
「完全にうちの事情で社交会が開かれてますわ。そんな影響力は無いのにどういう事ですの!?」
テールが発狂気味に答える。皆パニックだ。
「うーん、基本テール達の家は有力貴族、つまり王様のお気に入りだったんだ。ってのが表向きの理由だね」
リアリスは落ち着いた音色の声を使う。
「表って事は、裏もあるの?」
僕はリアリスの言葉に合せるように質問した。よく分からなさすぎて逆に落ち着いてきたんだ。
「可能性があるのは2つ、アシュの存在と魔獣のドレスこの2つのどちらか、もしくは両方狙いだね」
リアリスが裏に言及する。
ヘラードもテールも少し落ち着いてきたようだった。
「呪いを解かれた時期とアシュが来た時期は大体被っていますわ。美しい少女が呪いを解いたと言う噂が広がってもおかしくないです」
「なんか僕、すごく誤解されてない?」
そんなにすごい人じゃないんだけど……
「実際はもっととんでもないので、誤解はされていませんわ」
すごく理不尽だ。
「呪いが解けた報告と、魔獣のドレスの話は親書で送ってあったからかな? でも普通の謁見で終わる話だと思ってたんだけどね」
へラードが申し訳無さそうにしてる。
でも、これは彼の責任じゃないし、皆で乗り越えないと。
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