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第15話・剣客の模擬戦の話


 塔のダンジョン20階


 人類の最高到達地点と言われる場所に、フレットは銀の猫と共に降り立っていた。


「だいぶ手加減してもらった気がすんな。ホントなら即死トラップとかわんさかあんだろ?」


 罠の類を一切踏まなかったこと、それがリアリスの加護だと理解していた。


「まあねー。でもモンスターは替えてない、やっぱフレットは優秀だね」


「ここなら顔を出しても、他の冒険者に見つかることもないかな」



 リアリスは久しぶりに自身の肉体でダンジョンの土を踏みしめる。


 ダンジョンのコントロール、義体の猫の操作、念話。出来ることが多い分、自分の身体がおざなりになりがちなのが、リアリスという魔王の弱点の一つである。


 封印された時も、その弱点を突かれた形なのだが、リアリスはあまり反省していないようだ。


 リアリスは背伸びして、体の感覚を取り戻すように体を動かした。


「作るか、フレットの師匠でありライバルと言えるキャラクターを……」


「は? モンスターの師匠って話か?」

 フレットの反応は至極真っ当だ。

 ただ、魔王の規格外さを理解していないだけだった。


「最強の人間を作る。別に製造コストの関係でやってないけど、ダンジョンは人間を作ることができるんだ」


「人を作るぐらいならオーガとか、そういうモンスターを作ったほうが安くて強い、でもドラゴンとか超える人間、そういう者を私は作れる」


 リアリスは軽く話しながら地面に魔方陣を描いていく。


「設定はこれで良い。最強の人物を追い求める世捨て人。師匠になってくれるかはフレット次第だけどね」


 そういうと魔方陣が光りだし、1人の人物がその中心に現れる。

 年老いた、白髪の男性剣士。


「……ふぅ、なぜこの地にいるのかわからないが……」


「おじいちゃん、私が魔王、製造主ってやつかな?」

 

 とリアリスが気軽に近づいて、バッサリと切られた。


「うー、これだから人間は嫌い。説明聞かないもん」


 切られた部分が溶けて元に戻る。


「剣すら効かねぇのかよ。聖剣以外無敵とかか?」


 フレットが呆れたように呟く。


「違うよー。トリックがあるんだ。私は自分の作ったダンジョンに耐性がある。自分の能力では死なないんだよ。だから反逆されても平気……」


「……ふむ、こやつを倒すには他者の手が必要と言うことか」



 老剣士は静かに剣を構え、フレットに向き直った。


「青年よ剣を取れ。最強の剣の一端披露してやろう」


「別に、俺はリアリスに反逆する気はねえぞ? んで、お前の名は?」


「名など、この身に宿った時点から持ち合わせていない。オキナとでも呼べ」


「分かった。オキナ、手合わせ願う」


◆◆◆


 数日後、フレットが珍客を連れて帰って来た。

「オキナとでも呼ぶが良い。剣客として居候願う」


「剣客って何?」

 ルリヤが何気なしに聞く。


「確か剣を志す者と言う意味ですが、食客と代わりはないでしょうね。そのように扱えばいいかと」

 アルナスは適当に扱うことにした。

 いくら強くても、ただ飯喰らいと判断したらしい。


「あーすまん、リアリス関連で一人増えた」


 フレットがただ飯喰らいが一人増やしたことを謝る。


「フレット、オキナは強いのですよね? ならうちのメンバーと勝負してみても?」


「ほうほう、まあ良い力比べと行こうかのう。何人でも良いぞ」


「では、3人でお相手致しますわ」


 そうして、女子冒険者パーティ組とオキナの模擬戦が始まった。オキナの武器は長いナイフ。刀と言うらしい。


 魔法は使わず剣だけで戦うんだって。


 模擬戦だけど、オキナは魔法の制限なしを提案。自分は不殺さずを条件に出した。


「魔法使いが魔法を使わず? 剣士が剣を持たず戦ってなにになる」


 オキナはオキナの哲学があるみたい。


「もー、死んでも知りませんわよ!!」


 テールの機嫌が悪くなる。

 舐められて黙っている性格ではないんだ。炎の弾丸がオキナに迫る。


 火力は抑えてるけど、代わりに数が多い。避けられないタイプの弾丸だった。


 次の瞬間、炎の弾丸が全部消えて、ふわっと温かい風が鼻孔をくすぐった。


「何故、魔法が切られないと思ったのか」


 あの数の魔法を一太刀で消し飛ばす実力。三人は手加減していたら負けると実感した。


「ストーンブレイブ!」


 ルリヤの視線の先から、次々と岩の棘が作り出され、オキナに向かって伸びる。

 バジリスクの目を使った、空気を石化させる魔法なんだって。


「テラバーストですわ!!」

 テールはリッチを倒した時の炎の螺旋を惜しげもなく撃ち込んだんだ。


 でも岩は生えては土に戻り、螺旋の炎は微熱に変えられる。

 魔法をナイフで切る所業は人間技じゃない。


「うわ、すごい!!」


 僕は歓声を上げた。マジックのショーを観ているようで心が踊る。こんなふうに魔法が使えたら楽しいかもしれない。


 そんな凄技に対して、テール達が生き残っているのは圧倒的に位置コントロールの上手いアルナスの盾があったから。


 アルナスは単独ではオキナに近寄らず、魔法を陽動にして動くことで、魔法後の隙にテールたち魔術師に近寄れないようにガードしていた。


 ただ、肝心の魔法が当たらないとジリ貧だ。


「まぁ、この程度が潮時かの?」


 オキナが今までと違う動きをする。

魔法を切らず、足さばきを駆使して避けたのだ。

 狙いは、アルナスの盾。

 とっさの動きに対応できずアルナスが舌打ちをする。


 オキナはナイフを上に持ち上げ、そのまま鉄の盾を一刀両断にしたのだった。


「まだやるかの?」


余裕そうなオキナに対して、テールたちは肩で息をしていた。


「負け」


ルリヤがその一言だけつぶやく。


 僕は、戦闘は全然わからなかったけど、魔法が出ては消える感じが楽しく感じて、思わず拍手してしまった。


 僕の拍手にオキナは手を振ってくれたけど、三人は疲れた顔で僕を見つめるだけだった。



ご愛読いただきありがとうございます。

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今後ともよろしくお願いします

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