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84/93

84 検証

 アノスジェンが囲まれることがわかっていたので、キンガース公爵家は早々に王城を後にした。


 アノスジェンは屋敷で待っていたワディンとミックに綺羅びやかな王城と優雅な王族の話を興奮して話した。ディジリーナはアノスジェンとのラストシーンを夢見るお姫様ヒロインになったようにライラに話している。


『ディナお嬢様の脳内は12歳だわ。これで初夜なんて迎えられるの? どうしたものかしら?』


 ライラは自分の眉間を揉んでいた。


 キンガース公爵領の屋敷にもどって数日が経った。魔力と祈祷力の違いをはっきりと区別していない、というよりよく理解されていないことが現状でヘリンもうまく説明できないと前置きの上で検証が始まった。


 キンガース公爵、ディジリーナ、ニール、ヘリン、トビー、ショーン執事長、ノアニク騎士隊長が見守る中、ライラとワディンが料理の入ったワゴンを押してきた。

 皿にはキノコ料理が乗せられている。見た目は多少違うが、どちらが毒キノコなのかは、調理されてしまうとわからない。キンガース公爵とディジリーナ、ノアニクが香りを確認して首を横に振った。

 野営で何度もキノコ料理を食べているが、採取の時点でかなり気をつけるので、実際に毒キノコを口にすることはほとんどない。

 アノスジェンの前に並べられると「こっちは食べちゃダメだよ」とあっさりとブルーの皿の方に決めた。ライラが注目の中首肯する。次に同じ皿をクロッシュを被せて出し直した。それもあっさりと指摘し、クロッシュを開けてみたらブルーの皿であった。

 

 それならばと、たくさんの種類のキノコをワゴンの上に並べてみる。するとアノスジェンが「全部がダメに感じちゃいます」と首を横に振った。そこで手袋をして一つ一つを毒かどうかで分けていく。その結果をまずは野営のプロのノアニク騎士隊長がオッケーを出し、ショーン執事長が図鑑でも確認しオッケーを出した。


「これだけでもすごいことだぞ。アースには料理による毒殺はできないことになるな。そういえば、怪我は即効性の自然治癒だったな……。毒の場合も解毒してくれ……」


「ダメよっ! そんなカケは絶対にさせないわっ!」


 ディジリーナがキンガース公爵の胸ぐらを瞬間的に掴んだが、軽々とその手を外し「わかっているよ」とあきれ顔をした。ニールとトビーはディジリーナと何度か組み手をしており、その絞め技の強烈さを実感しているので、キンガース公爵の力の底が見えず思わず姿勢を正す。

 

「アース様。これらはどのように区別なさっているのですか?」


「うー……んと……。手とか喉とかがモヤモヤってして、食べちゃダメなんだなぁって感じるの……」


 ショーン執事長の質問に答えてみたが、アノスジェンも伝わらないことは実感している。だが、表現が本当にこれしかないのだから仕方がない。

 腐敗した物もクロッシュに隠して検証したが、しっかりと当てた。


 今度は裏庭に赴き、木ノ実の下に立ってみた。『僕に木ノ実をくれる?』水をすくうような手の形にして前に出してみたが、何も起こらなかった。「今の僕にはいらないでしょって思っているみたい」アノスジェンが後ろに控える人たちへ答える。確かに今のアノスジェンは空腹でもないし、栄養失調でもない。

 次に果実の木の下に来て、同じようにした。すると3つの果実が手の上に優しく降ってきた。その現象に驚いたこともあるが、3つという数にも疑問を抱く。「十人で食べるならこのくらいが丁度いいのかな」

 アノスジェンが果実の木に聞くとなんとなく、サワサワと揺れたようにみなが感じた。確かに拳よりずっと大きい果実は三人から四人で一つ食べる程度が丁度いい。


「どの程度の人数分が……」


「そんな検証は許さないわっ! 何人にバラすつもりなのよっ! アンに無理は絶対にさせない」


「わかってるってば……」と、キンガース公爵父娘のやり取りを再び見ながら『どちらの気持ちもわかってしまうなぁ』と面々は感じていた。


 森の開けた場所に移り、祈りで大きなバスタブ2つ分はありそうなほどの水を出した時には初めて見た五人は止まってしまった。


「アース。疲労感はあるのか?」


「いえ、婚約式の時のような疲労感はありません。それより、爽快感というか清涼なものが僕の中を循環しているような感覚です」

 

「なるほど、ヘリンが説明できないというのも頷ける。どのくら……」


 キンガース公爵がしゃべるより早くディジリーナが胸ぐらを掴み、きれいに投げた。スピードならディジリーナが上なのだ。


「わかってるって言ってるだろう……」


 キンガース公爵は大の字になったままでため息を吐いた。

お付き合いいただきありがとうございます。

毎日夜6:40更新


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