83 ダンス
アノスジェン・セレアン伯爵子息
『18歳・家族から虐待を受けてきた主人公』
ディジリーナ・キンガース公爵令嬢
『18歳・武道が得意、公爵家後継者』
スペンディーノ・キンガース公爵
『ディジリーナの父親、元騎士団長』
ショーン執事長
『キンガース公爵家の執事長』
ニール、ヘリン、トビー
『32歳26歳20歳・マレアード王国からの護衛騎士』
ワディン・レムダ男爵子息
『15歳・アノスジェンの従者』
ノアニク・リガード騎士団長
『キンガース公爵家騎士団長』
ミック
『キンガース公爵家でのアノスジェンの従者』
ライラ
『ディジリーナの専属メイド』
ゲイリック・フオジスト第一王子『23歳』
ナディアナ・フオジスト第一王女『19歳』
エイブリック・フオジスト第二王子『21歳』
コンラッド・メリガン執務次官
『ゲイリック第一王子の側近』
ルートン・セレアン伯爵子息
『アノスジェンの同い年の異母兄』
クィント・セレアン伯爵
『アノスジェンとルートンの父親』
モニィシャ・セレアン元聖女見習い
『アノスジェンの母親』
モーリッシュ・セレアン伯爵夫人
『ルートンの母親』
それから時間を待たずして王家入場となった。
国王陛下の一言で、会場が下げていた頭をあげる。一番上の段に、国王陛下を真ん中に王妃殿下とゲイリック第一王子が両サイドに座っている。一段下には、王妃サイドにはエイブリック第二王子とコンラッド・メリガンの妻で第二王女のメリガン伯爵夫人が、ゲイリック王子サイドにはファリシア第一王子妃が立ってる。
国王陛下がその場で本日の祝辞を述べると、拍手が湧いた。
「それと、本日のパーティでみなに紹介したい者がいる。さあ、アノスジェン・セレアン。そして、ディジリーナ・キンガースよ。こちらへ」
王城執務官が二人をエイブリック第二王子より一段下、3段目の壇の真ん中へと案内し、二人は貴族たちによく見えるように胸を張って立った。
「アノスジェン・セレアンは隣国の一つであるマレガード王国から我が国へ受け入れた水魔法の大家の血筋の貴賓である。我が国として彼の婚姻を望み、この度、キンガース公爵家との縁談が決まった。みなも祝福してやってくれ」
満場の拍手に二人は丁寧に頭を下げてからキンガース公爵の元へ戻った。最近の水に関しての好転をアノスジェンのおかげなのではと考えた者も少なくないが、「国としての縁談だ」と宣言されれば、アノスジェン本人に無理を言うわけにはいかなくなった。ましてや、入場からの二人の姿を見て、王家の後ろ盾の婚姻を宣言されれば、秋波を送るなどとんでもないことである。
「さらに、もう一つ。第一王子であるゲイリックを正式に王太子に指名し来月、任命式を執り行うものとする」
ゲイリック王子が立ち上がり一段降りるとファリシアの手を取り、壇の真ん中へと立つ。そして、会場に向かって二人で手を振ると大歓声に包まれた。
「では、ゲイリック、そしてアノスジェン。第一ダンスを」
「はい」「かしこまりました」
それぞれのパートナーを誘って会場の真ん中へと進んだ。
「まさか、第一ダンスまで言われるなんて思わなかったわ」
「これって、もしかして、僕たちしか踊らないの?」
「そうよ。でも、華やかさで第一王子夫妻が会場の目を持っていってくれるから心配いらないわ。私たちは広いホールを楽しみましょう」
「楽しむなんて……できるかなぁ」
「私には貴方しか見えないわ。貴方は?」
スタンバイした二人は見つめ合う。
「ペギーしか見えない……よ」
「うん! そうしてね。でないとヤキモチで拗ねちゃうわよ」
「ふふふ。それは怖いな」
アノスジェンにやっと笑顔が出たタイミングで音楽が流れ出し、1歩目のステップはディジリーナのリードだったが、すぐに身体が反応したアノスジェンが滑らかにリードし始め、初めてのダンスとは思えない素晴らしいダンスを披露した。
『我が婿は本当に何をやらせても優秀だ。これを見て誰がレッスン1か月だと思うものか』
キンガース公爵は満足そうに口角をあげた。
「アン。こんなに楽しいダンスは初めてよ」
「僕もだよ。ペギーに恥をかかせてない?」
「私のダーリンは今日も完璧王子様よ」
二人は第一王子夫婦より注目を浴びていることに気が付かないほど、お互いしか見えていない。
フィニッシュを迎えるとアノスジェンはスッとひざまずき、ディジリーナの手を取って口づけ…………するフリをした。さすがのアノスジェンはみんなの前で気軽にキスできるほどにはなっていない、たとえ手であっても。
だが、その王子様のような仕草に悲鳴にも似た声があがり、倒れるご令嬢までいた。当の本人であるディジリーナも顔が真っ赤である。
「アン。お父様のところへ戻りましょう」
「うん!」
まるで百戦錬磨のようなエスコートをして下がっていく。
「ねぇ、最後のアレ。誰に教えてもらったの?」
「ミックとヘリンだよ。でも、恥ずかしくてみんなの前でホントのキスはできなくて……。ペギーにマナー違反しちゃったかな?」
不安をにじませて見上げる仕草があざとくないのはアノスジェンだからなせるわざである。
「そそそそそそんなことないわ。アンがステキすぎて困ってしまっただけよ。でもね、一つだけ約束して。最後のアレは、私以外にはしちゃダメよ」
「え? 僕、ペギー以外の女性と踊りたくないよ」
ディジリーナがよろめいたがアノスジェンが少し力を入れて支える。ディジリーナは体幹がしっかりしているので本当に倒れることはない。
「そそそそそそのうちね、どうしても誰かと踊らなくてはいけない時もくるのよ。その時にはダメってことよ」
アノスジェンは笑顔でコクコクと首を縦に振った。
『ミックとヘリンに特別ボーナスをあげなくちゃ』
ディジリーナは大変ご機嫌だった。
『転』の中盤くらいかなぁと構想しております。
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