60 発覚
キンガース公爵の執務室の大円卓につく。ニールとヘリンを中心に旅中のことを話す。ワディンは「セレアン伯爵家では魔力無しと言われておりましたし、私もアース様が魔法を使っているのを見たことはありませんでした」と説明した。
「つまり、気になることがあり確認してみたら、アースが魔法を使えたと……。十八歳にしてあの小ささだと極度の栄養失調による魔力枯渇が有力な理由だろうな。精神的圧迫や体罰による虐待も理由になりうるだろう。道中での食事によって多少回復し、魔法が使えることが判明したということか」
四人が頷く。ディジリーナは怒りでワナワナと震えていた。
「栄養失調? 魔力枯渇? 精神的圧迫? 体罰? 虐待? クソ野郎ども、いつかヤッてやる!」
ディジリーナのこれまでにない口の悪さに瞠目してしまう四人を他所に、ショーン執事長は咳払いでそれを諌めるあたり、この様子が初めてではないようだ。
「ただな、その発覚して確認をしたのが、マレガード王国側の国境街っていうのがな……」
「誰にも見られておりません。俺が見張りをしておりました。知るのはこの四人だけです」
「まあ、そうなんだろうな。ここまで誰にも言わなかったんだから、お前らのアースへの忠誠や真心はわかるよ。だが、そうなるとそれも問題かもしれん。
アースは魔力無し、見た目が貧弱……」
「お父様……隠居したいの……?」
ディジリーナの殺気にブルリと震える。
「今は客観的な話だ。腰を折るな」
震えもしないキンガース公爵がやれやれと嘆息する。
「とにかく、国王陛下からのご命令でお見合いはしたものの乗り気ではない家が多かったのには、それなりの理由があったわけだが、その理由の一つが間違いでしたとなると話は変わっちまう」
マレガード王国の水魔法の血縁がほしくての婿入りだ。その婿が魔法を使えないというのは不安材料であるのだから、魔法が使え、国王の覚えもよくなるとなれば婚姻希望者も増えるというものだ。
「簡単な話じゃない。私の愛で魔法が使えるようになったことにしたらいいのよ」
ふふんと鼻を高々にするディジリーナに向かって、キンガース公爵がコツンとテーブルを叩く。ディジリーナは「フンッ」と横を向いた。
「ディナの言うお花畑な話はともかく、何かしらの理由でキンガース公爵領で魔法が開花したとするべきだな。フオジスト王国へ入国してからは栄養失調ということはないだろうから、この国に慣れてきて精神的に余裕ができたためとするのが自然だな」
「それでしたら何かしらのきっかけになるようなことをしてみてはどうですか?」
ショーン執事長が提案する。キンガース公爵は「それは?」と続きを促した。
「魔法を使う衝撃的な事件……例えば誰かを助けるとか……」
「だめよっ! アンはそのために誰かが危険なめに合うことに心を痛めるわ」
納得してしまう他の面々。
「お話を脱線させてしまうようで申し訳ありません。実はアース様のお力はそれだけではなく……」
ヘリンがこれまでの事柄と祈祷力ではないかと考えているということを話す。
「は?」「ホントに?」「なんと……」
三人は頭を抱える。
「その力がなんであれ、益々、この領地に来る前に現れた力だと言えなくなったな」
「申し訳ありません」
ニールの言葉にヘリン、トビー、ワディンも頭を下げた。
「謝ることじゃねぇよ。アースを守りたかったんだろう。確かに早々にその力が広まっていたらどれほどの影響がでるか予想もつかん。王家に取り込まれるのは確定だったろうな。マレガード王国に強制送還か、フオジスト王国の王女と婚姻か」
「バカ姫との婚姻なんてありえないわっ」
「王女のバカさ加減をわかっているゲイリック王子殿下でも、アースの力を知っていれば王女と無理やりにでも婚姻させただろうさ」
ディジリーナがギリギリと奥歯を噛んだ。
「それにしても、よくここまでバレなかったもんだ。小さな生活魔法とかはちょっとしたことで使いたくたるものだろう」
キンガース公爵が苦笑いをする。魔力が少しでもあるものはコップ1杯の水、小さなゴミ燃し、洗濯の生乾き、畑の耕しなど、気軽に魔法を使うことが日常だ。
「我々に使用を止められているのもありますが、これまでのアース様は魔法は無くて当たり前の生活でしたので、特にご不便は感じていらっしゃらないと思います」
ワディンの説明に納得してしまう面々であった。
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