48 愚行
王城では、ナティアナ第一王女が抜け出す事件が起きていた。
謹慎処分を受けたナティアナ第一王女は『外へ出なければいいんでしょう』と解釈して、自室でお茶会を開催することにした。開催日はゲイリック第一王子夫妻が視察旅行中で、政務で忙しい国王には内密に、ナティアナ第一王女に甘い王妃には協力要請をしての開催だった。
ナティアナ第一王女はそれはそれは楽しい時間を過ごして「やっぱり、わたくしはこうでなくちゃ!」と機嫌をよくした。
開催日にそれを知ることになった第二王女はすぐさま、ゲイリック第一王子に同行している夫のコンラッド執務次官へ手紙を書く。国王にも報告し、国王からナティアナ第一王女へ多少の小言はあったが、王妃に諭されて強くは言わなかった。
ゲイリック第一王子の判断を待っていた第二王女だったが、返事が来る前に次のお茶会が開催された。味をしめたナティアナ第一王女は王妃にも相談なくご令嬢たちを集めた。ご令嬢たちはナティアナ第一王女が謹慎させられていることを知らない。
「本日のドレスコードはボンネットですわ。みなさま、ご着用だけでなく、お着替え用のボンネットも持ってきてくださって嬉しいですわ」
大きなツバをつけたボンネットにフリルや花が装飾された派手めの婦人帽が並ぶ。
いくつもの鏡が用意されたナティアナ第一王女の部屋で、ご令嬢たちが互いに貸し借りしながらドレスとのコーディネートなどを楽しんだ。
メイドを下げたナティアナ王女は「こちらのボンネットにはこのドレスが合いそうですわ」と言葉巧みに誘導し、ご令嬢たちの手を借りて少し型落ちのドレスに着替えた。
「今夜のパーティへ参加して差し上げますわ」
パーティの招待状をナティアナ第一王女へ出した伯爵令嬢はまさかゲイリック第一王子の命令で王城の事務方によって断られたものだとも知らず、「ご参加していただけるなんて、光栄ですわ!」と喜んだ。そして、そのまま同行することになった。
メイドたちから聞いている『ナティアナ王女の本日のご衣装』を着ておらず、ご令嬢が持ってきたボンネットをかぶった数名のご令嬢集団に、騎士たちはナティアナ第一王女を見過ごしてしまったのだった。伯爵令嬢のメイドがドレスや貴金属を入れた大きなボストンバッグを持っていたが、各ご令嬢がボンネットをたくさん持ってきていたため、それさえも目立つことがなかった。
その夜、隠し持ってきたドレスに着替えたナティアナ第一王女は伯爵邸で開かれたパーティで意気揚々と階段を下り、会場へ降り立った。
『わたくしに結婚相手がいないって、バカにしたお兄様! 見てなさいよっ! わたくしが本気になればすぐなんだからっ!』
前提として、ナティアナ第一王女は見目麗しい男にしか興味がない。にもかかわらず、相手の顔をしっかりと覚えることもせず、相手の爵位をしっかりと覚えることもしないので、以前までのパーティと同じ男たちに向かって『わたくしをダンスに誘いなさい』オーラを出しまくる。前科があるため、パートナーがいる男たちはナティアナ第一王女と目を合わせない作戦でダンスに誘わない。空気を読んだ主催者伯爵が独身男をナティアナ第一王女の前に連れていくが、ダンスを誘ってもナティアナ第一王女が彼らを袖にする。なぜなら、顔が普通だから。少しでも見目麗しいと言われるがお相手がいない独身男はナティアナ第一王女が階段の上に登場した時点でそそくさと会場をあとにしていたのだった。
誰ともダンスができないナティアナ第一王女が癇癪を起こすのと、ナティアナ第一王女がいなくなったことに気がついた王城からの迎えが到着するのはほぼ同時で、ナティアナ第一王女は騎士によって無理やり馬車へと詰め込まれた。騎士もゲイリック第一王子にクビ宣言されているので、遠慮ない態度で対応している。
2日後、帰城したゲイリック第一王子は大激怒。
「ナティアナのドレスに装飾品、靴やバッグ。外出に関するすべてのものを倉庫へしまえ! 部屋には簡易な化粧品とパジャマドレス以外を残すなっ!」
「どうしてよぉ!! やめてぇ!」
ナティアナ第一王女の悲痛な叫びがゲイリック第一王子の心を揺らすわけもなく、無期限外出禁止及び交流禁止が決定した。
ちなみに、ナティアナ第一王女付きのメイドや護衛は半年間の減俸で済まされ、涙を流してゲイリック第一王子へ礼を述べていた。
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