4 縁談
本日2話目
定期的なパフォーマンスを終え、ルートンが大聖堂に入ると、クィント・セレアン伯爵はいつも以上に高位貴族たちに囲まれた。
数日前に、わざと流した噂が功を奏したのだろう。
「いやあ、ルートン殿は国王陛下のおぼえもよく、次期教皇と言われるだけの実力があるね。ところで、ルートン殿はいくつになられた?」
「十八でございます」
「いやあ、遊びたい盛りにも関わらずあの勤勉さ。まさに好青年だ。その年で大司祭と同等とは素晴らしい。やはり、あれほど水魔法に長けているのだから大司祭は当然といえば当然か」
ハハハと男たちが笑う。
「そういえば、最近、そろそろとの噂もあるね」
「そろそろとは?」
セレアン伯爵はすっとぼけて聞き返した。
「十八なら、婚約者の一人くらいいても当然だろうという噂さ」
「まさか、そんなことが噂となっているとは。でも、そうですなぁ。親としても素晴らしい伴侶を得てほしいと思っているところです」
「おお! そうだろう、そうだろう」
高位貴族の当主たちが我も我もと自分の娘や親戚筋の娘をと口にする。
「みなさまにお気にかけていただき嬉しい限りです。息子にも相談してみますゆえ、よろしければ釣り書をお送りいただきたく存じます」
「では、そうすることにしよう」
頷く男たちを見てセレアン伯爵は釣り書とともに送られるであろう金品を思い浮かべホクホク顔である。
「そういえば、ルートン殿は双子であったのではなかったですかな?」
「ああ、幼少期に何度か見かけましたね。銀色の髪の……」
優良物件と繋がれるなら何かないかと探りを入れられ、セレアン伯爵は頬を引きつらせた。ルートンは髪色も顔立ちもクィント・セレアン伯爵に似ている。
「実は弟の方は鍛錬が嫌いでございまして。恥ずかしながら、ご祈祷どころか、とうとう生活魔法まで使用できなくなりました。ルートンのおかげで生活できるとはいえ困ったものです」
「なるほど。ルートン殿の弟となると、劣等感ゆえの行動ですかな」
「ルートン殿のように努力すれば、大司教とは言わぬまでも司教にはなれたでしょうに。それではルートン殿の負担も気になるところですな」
「子育てというのはなかなか思い通りにいかぬものです。同じように愛情を掛けてきたのですが、それが増長させてしまったのかもしれません。とはいえ、愚息とはいえ息子は息子ですので、見捨てるわけにもまいりません。ルートンが嫁を迎えることが決まりましたら、教会の助祭にして教会預かりにしてもらうつもりでおります。教会内ででしたら、私ともルートンとも日々会えますから」
セレアン伯爵は冷や汗を隠して笑顔で答える。
「おお、セレアン伯爵は責任感がお強い。教会預かりならば安心です。劣等感で兄の花嫁を傷つけるようなことになっては困りますからなぁ」
男たちはウンウンと頷いていた。
大聖堂に下がったルートンはあてがわれている自室に世話係という建前でシスターを呼んだ。観客におだてられ、自分に酔いしれて火照った体をシスターに慰めさせる。ルートンが選ぶシスターは男爵家のご令嬢ばかりだ。
王都の教会では教会内色恋禁止となっている。『神に仕えし魂は欲に溺れてはならぬ』というこじつけのような理由からだ。実際のところ、若い司祭と若いシスターが恋仲にならないための鎖でしかない。老獪な司祭たちは若いシスターを騙し連れ込んでいる。
色恋が表沙汰になると困るシスターたちを手籠めにし、それぞれが口をつぐむので、バレることはなく、ルートンは四人ほどのシスターに交代で世話をさせている。
そして、発散させた後につぶやくのだ。
「ここにいる時の俺はお前だけだ。政略結婚をしてもここにいる時間の方が長い。俺が誰を大事にしていくか、わかるよな」
シスターはルートンの胸の中で頰を染めて頷く。
『ホントに簡単だ。世話係に時々男を挟んでおけばコロッと騙される。飽きたら世話係に呼ばなければいい。初心さが無くなればおしまいだ』
胸の中の女を見下しながら肩を抱いた。
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