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23 救助

 アノスジェンたち一行が国境の町へと向かう途中、川沿いに馬車を止め休憩をしている時であった。


「きゃあ!! 誰か! 子どもが! 助けてぇ!」


 川上から女性の叫び声が聞こえ、振り向くと子どもが流されおぼれかけていた。


「大人にとってはそれほど深くはなそうだ。俺が行こう」


 護衛騎士中で一番若いトビーが川に入って歩いていった。岸辺ではアノスジェンたちが見守り、川上から女性たちが走ってくる。ニールはロープを肩にかけてた。

 しかし、岸から離れるように少年が流れていってしまい、トビーは水に潜り懸命に少年へ近寄っていく。なんとか少年を掴んだが、流れに逆らって岸辺に向かうにはつらそうな表情で泳いでいる。少年はすでにぐったりしているようだ。アノスジェンたちもスピードに合わせるように川下に歩き出す。

 トビーは必死に泳いでいるが、少年を抱えているからか、なかなか岸辺へと近寄ってこない。

 

「投げ縄もこの距離では届かない。もう一人入るか」


 一度立ち止まったニールとヘリンはヘリンの腰に紐を巻きはじめた。だが、川の二人はどんどん川下へと流れてしまう。


 アノスジェンは思わず岸辺に両膝をついた。ワディンや女たちはそれに気がつかず、流れる二人についていく。ニールとヘリンもアノスジェンの脇を抜け走っていった。


 腰紐をしたヘリンが水へ入ろうとしたとき、川面がざわざわとさざ波たちはじめ、二人を川岸へ導くように流れが変わった。トビーは身を委ねながらも手を動かしていた。みんながそれを見守る。


 トビーの足が着くところまで来るとニールとヘリンは水へ入り、ヘリンが少年を抱き、ニールがトビーに肩を貸して岸へたどり着いた。


「ああ! 私の息子!」


 ヘリンから少年を受け取った母親らしい女が抱きつく。少年はぐったりしているが呼吸はしていた。助けに入ったトビーも座り込み肩で息をしている。


「水から顔を上げたのが早かったのでおそらく大丈夫だと思います。ゆっくりと休ませてやってください」

 

 少年を抱えていたヘリンの言葉に泣き顔の母親は「ありがとうございます。ありがとうございます」とコクリコクリ何度も頷く。


「とりあえず、馬車を持ってこよう」


 ニールとヘリンが来た道を戻ろうとしたとき、ワディンの慌てた声が響いた。

 

「アノスジェン様! どこですかっ!」

  

 その集団の中にアノスジェンの姿がない。ニールとヘリンとワディンは来た道を急激に走り出した。数十メートル川上の草むらの中にアノスジェンが倒れているのを発見すると、ワディンは頭を膝上にのせる。


「アノスジェン様! 大丈夫ですかっ!」


 ニールがヘリンに馬車を持ってくるように指示を出し、自分はアノスジェンの足元へひざまずく。アノスジェンの脈や心音を確認し、ズボン裾をまくり膝あたりを見たり、肘まくりをして腕を見たりした。


「おそらく大丈夫だ。呼吸も安定しているし、外傷もない。1週間も馬車だったから、歩いたことで体が驚いたのかもしれない。今は眠っているようだ」


 ニールは泣き顔のワディンの頭をくしゃくしゃと撫でた。ワディンは大人びた口調ではあるが、まだ十五歳。ニールから見れば息子のようなものだ。


「私が目を離してしまったからだ……」


「あの状況ではしかたない。とにかく今は馬車で休ませよう。状態が悪ければ町に数日滞在してもいい」


 ちょうどヘリンが馬車を停めて降りてくる。

 ワディンはアノスジェンの顔にかかった前髪を分けた。


『やっと少しだけお顔色や髪ツヤが良くなってきたと思ったのに。髪もゴワゴワになってしまった。屋敷で雑用をなさっていたから、体力はあるものだと思っていた』


 ニールは名残惜しそうな顔のワディンからアノスジェンを受け取り、横抱きにして馬車へと乗せ、座面へ横たわらせる。毛布がかけられたアノスジェンの傍らの床にワディンが膝をついた。ニールは小さな困った苦笑いとため息で扉を閉める。


 トビーたちと合流すると、母親たちの村にお世話になることが決まっていた。この時間から次の宿がある町まで行く時間もないので、ワディンも納得し、そうすることになった。

毎日2話ずつ投稿

夜6:40


少したまったのでしばらく2話更新しまーす。

 

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