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異世界転生したので、理想のメイドを集めていたら最強の軍団になっていた件!  作者: 廿日 皐月


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第21話『静まり返る森で』


「――ふぅ……やっと、途切れたか」


 僕は息を整えながら、袖口で額の汗をぬぐった。視線の先には、地に伏した魔物の亡骸が横たわっている。プルメアが処理に取りかかっている間、僕たちは小道の脇で小休止を取っていた。


 ここはすでに、森の中でもかなり奥まった場所だ。普通の冒険者たちが足を踏み入れないような、いわば危険地帯とされている。


「さすがに森の奥だと、こんなに魔物が次から次へと出てくるんだね……街の冒険者たちが近寄らないわけだ」


 思わず、そんな感想が口をついた。


 その横で、セラが眉をひそめる。


「いや、異常だ。私は数カ月この森にいたが、こんなに多種多様な魔物が一斉に襲ってくるのは初めてだ。群れる魔物ならまだしも、種類の異なる魔物たちが同時に現れるなど、普通ではあり得ない」


 セラの冷静な声が、この異変の深刻さを静かに強調する。


「でも、出てきたのは雑魚ばっかだったニャ? もしかしたら森の奥にいる強い魔物から逃げてきたんじゃないかニャ?」


 ニアが尻尾を揺らしながら、そんな仮説を口にする。


「……うん、その可能性もあるね。念のため、もう少し奥を調べてみたいけど……みんな、まだ行けそうかな?」


 僕が隣にいる二人を見やると、ニアが元気よく腕を上げた。


「まだまだ余裕ニャ!」


 その隣では、セラが静かに頷きながら応じる。


「ああ、問題ない。ここまで来た以上、見過ごすわけにはいかないだろう」


 そこへ、タイミングよく戻ってきたプルメアが、小走りで近づいてくる。


「すみません、お待たせしました! 魔物の処理、全部終わりました!」


「お疲れ様、プルメア。けっこうな数だったけど……もう少し奥まで調査を進めようと思うんだ。吸収の余力はまだある?」


 僕が問いかけると、プルメアはごく自然な口調で、穏やかに答えた。


「そうですね、今ので小腹が満たされた程度でしょうか」


 ……小腹が満たされた程度?

 あれだけの魔物を吸収しておいて、それが“ちょっとした間食”みたいな扱いだなんて。


 これ、もしプルメアに本気で魔力を吸われていたら、僕の魔力でもきっと足りなかったよね……。


 内心でツッコミを入れながらも、余力があるならそれに越したことはない。僕たちはそのまま、さらに森の奥へと足を進めた。

 

 ――そして、しばらく歩いたところで、ふと気づく。


 あれほど騒がしかった森が、今は不自然なほど静まり返っていた。さっきまで頻繁に感じていた魔物の気配が、まるで境界線でも越えたかのように、ぱたりと途絶えている。


 風の音すら遠のいたような、そんな沈黙の中で、僕たちは足音だけを響かせながら進んでいった。

  

 あまりにも、静かすぎる。


 慎重に歩を進め、やがて開けた場所に出た僕たちは、そこで目を疑うような光景を目にした。


「……死体?」


 プルメアが小さく呟く。


 そこに広がっていたのは、いくつもの魔物の死骸だった。牙を持つ獣、鋭い爪を持つ四足の獣――どれもが、一体だけでも脅威となるような強力な個体ばかりだ。


「魔物同士で争ったのかニャ……?」


 ニアが眉をひそめながら周囲を見回す。


 その言葉に、セラが無言で片膝をつき、近くの死骸に手を伸ばす。傷口を静かに観察したあと、確信めいた声で言った。


「いや……この斬り口は、人の武器によるものだ」


「人って……まさか、冒険者? でも、このクラスの魔物を、こんな数まとめて倒せる人なんて、街には――」


 僕が言いかけたところで、他の死骸にも目を向ける。どれも急所を正確に断ち切られていた。鋭く、迷いのない一撃――偶然で済ませられるものじゃない。


「問題はそこじゃない」


 セラが立ち上がり、周囲を一望するように目を巡らせた。


「これだけの戦力を持つ者が、死骸をそのまま放置していった……それが妙なんだ。魔物の死体をそのままにしておけば、どうなるか分からないはずがない」


「えっ? どうなるニャ?」


 ニアがきょとんとした顔で問いかける。


「瘴気を帯びた死体は、さらなる魔物を呼び寄せる。さらに瘴気が濃くなれば――そこから、新たな魔物が発生する可能性もある」


「魔物って、瘴気から生まれるのかニャ?」


「そうだ高濃度の瘴気が溜まれば“瘴気だまり”ができ、そこが新たな魔物の発生源となる危険性がある」


「ニャニャッ!? そ、それは本当にヤバいにゃ……!」


 まったくの冗談では済まされない。これ以上、森の異常が広がる前に――何とか手を打つ必要がある。


「ひとまず、そうなる前に……プルメア。この数だけど、処理できそう?」


 僕が声をかけると、プルメアはふわりと笑って、小さく頷いた。


「はい、大丈夫です! スライムの本気……ご覧に入れますね」


 そう言って死体の一体に近づくと、彼女の両手がゆっくりとスライム状に変形し、ぬるりと魔物の肉体に絡みついていく。肉も骨も、そして魔力までも――一切の無駄なく、静かに、確実に取り込んでいく。


 まるで、死の痕跡そのものが溶かされ、消えていくようだった。


 その異様な光景に、誰もがしばらく言葉を失って見入っていた。


 やがて、最後の一体が完全に吸収されると、プルメアはふぅっと息をついて、にこりと微笑んだ。


「……さすがに、ちょっとお腹いっぱいですね……」


 そう言って、少しふらつきながらも、どこか満足げな表情を浮かべるその姿に、僕は思わず微笑んでしまった。


「よし、魔物の気配も無いし、一度戻って、ギルドに報告しよう。何か分かるかもしれないからね」


 セラとニアも頷き、それぞれ武器を収める。


 静かな森に、風がそよぐ。けれど、その穏やかさが、かえって不気味にも感じられた。


 ――この森で、いったい何が起きているのか。


 その手がかりを求めて、僕たちは森をあとにした。

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