♯70 続・頼れる仲間たちと、異形の群れに立ち向かった
第70話です。
「カグヤ。マリナ。念のため訊いておく。――彼らを元に戻す方法は無いのか?」
『変身』を完了したボクは、熄のような蒼白い残り火が表面でチラチラと燃えている全身防護服の下で、この身に宿る造物主の姉妹に確認する。
……眼前の蒼い水晶――モニター越しに異形の群れを見回しつつ。
……一縷の望みをかけて。
が、『変身』により魂魄が活性化すると聴こえるらしい姉妹の『声』、返ってきた答えは、そんな淡い期待を裏切るモノだった。
ボクの推測を裏付けるモノだった。
『残念だけど。それはわたしたちオーバーロードのチカラでも不可能だよ』
『このまま放っておけば彼らの魂魄は完全に混沌へと堕ち、死したのち生まれ直すこと――輪廻転生すら叶わなくなるでしょう』
…………………。やはり、この濁った緑色をした半魚人モドキの正体は……。
頭の中に直接響き渡った双子の『声』、答えに、唇を噛みつつ再度問い掛ける。
「今ならまだ……今斃せば彼らはもう一度ヒトとして生まれてくることが出来るんだな?」
『……うん』
『彼らに寄生している「死の植物」の胞子を灼き尽くし、その身を浄化してさしあげること。それだけが、今わたくしたちが彼らに与えられる唯一の「救い」なんです……』
寄生……? 『死の植物』の胞子が……?
それが、この島の住人の大半が異形へと変わり果ててしまった原因か……。
「これまで闘ってきた『深きものども』も、ヒトの変わり果てた姿だったのか?」
『ううん。だんなさまがこれまで闘ってきた連中はあくまでこの月と地球の外からやってきた侵略者たちだよ。言わば「本物」。――で、目の前の彼らはその偽造品といったところかな』
偽造品……。
『その証拠にイサリさんの魂魄は、これまで遭遇した「深きものども」に抱いてきた強い嫌悪感、忌避のようなモノを、彼らには感じていないでしょう? ――今はまだ』
……確かに。
普段なら『深きものども』と相対した瞬間『奴らの存在を許すな』と訴えかけてくるボクの魂魄は、今はただただ虚しさのようなモノだけを感じていた。
「ボクの魂魄はまだ彼らを人間だと認識しているのか……」
けど、今の彼らは半ば人間ではない。
もう完全な人間には戻れないのだ。
『どうか彼らを救ってあげて、だんなさま。彼らが、身と心だけでなく、その魂魄まで混沌に穢されてしまう前に……』
『それが出来るのは、オリジナルの地球を出自とする魂魄を持つイサリさんだけ……。あなたの魂魄を種火代わりに燃え上がらせた浄化の焔だけです』
「……わかった」
もはや救えるのは魂魄だけだというのなら……、
それが出来るのはボクだけだというのなら……、
「――やってやる! 彼らの『来世』だけでも救うんだ!」
吼えて、胸の前で両の拳を打ち鳴らしてから地を蹴って跳び、飛び掛かってきた異形どもを迎え撃つ。
虚ろな目から涙を溢れさせている半魚人モドキどもと、真っ向から激突する。
「神威体現闘法<漁火の拳>――『火樹銀花』!」
円を描くように動かした両の腕、少しだけ指を折り曲げた手の甲でもって、槍衾のように降りかかってきた無数の爪を弾くと、僅かに理性を残しつつも破壊と殺戮の衝動に抗えない様子の半魚人モドキどもは体勢を崩し――
「破ァ!」
ギョイイイイイイイッ!?
――ボクが矢継ぎ早に繰り出した掌打を顔面に浴びて吹っ飛び、大地の上をゴロゴロと転がった。
次の瞬間、ボクの身を包む全身防護服から燃え移った青白い残り火、浄化の焔が、轟! と炎上。地に突っ伏し身悶えていた半魚人モドキどもを呑み込み、灰すら残さず灼き尽くす。
「…………………。赦せ」
元はヒトであろうと、ボクは仲間たちを護るためなら排除することを厭わない。
この手で屠ること、それだけが彼らに残された唯一の救いだというのなら尚更だ。
だから、
「――来い! かかってくるんだ!」
いつの日か、またヒトとして生まれてこられるように。
「ボクはアンタらを一匹たりとも――いや、一人たりとも逃がす気は無い!」
ギョイィィィィィィィッ!
ギョイィィィィィィィッ!
ギョイィィィィィィィッ!
ボクの挑発に、残る四十匹のうち十匹ほどが一斉に襲い掛かってきた。
「換装! 攻撃特化形態! 双聖の神器、起動!」
防御特化形態から攻撃特化形態へ換装し、帽子と一緒に消失した長手袋の代わりに留紺の籠手を装着すると、迸る蒼白いプラズマを刃へ変えて異形を斬り伏せていく。
ギョイイイイイイイッ!
「! 神威体現闘法<漁火の拳>――『以水滅火』・遠当て!」
時折、みんなが逃げ込んだ礼拝所を狙う異形の姿も視界の隅に映ったが、その場でXの字を描くように手刀を振るい、蒼い焔のブーメランを飛ばして撃破する。
「――よし」
……そうやって敵の数を半分ほど減らしたところで、
ジャリィィィィィィィィ……ン――
どこからともなく、鐘や鈴に似た音が聞こえてきた。
それは、ひどく重々しく寒々しい――どこか不吉な感じのする音だった。
『っ!?』
『今の音は!?』
「聞き覚えがあるような……」
……いつ、どこで聞いたんだっけ?
えっと……あれは確か……、
「! そうだ! アリシア救出作戦のときに乗り込んだ『秩序管理教団』の黄帆船で聞いたんだ!」
間違いない! 今の音色はあのクソ司祭が『深きものども』を操るのに使っていたハンドベルのそれだ!
「まさか……」
ギョイィィィィィィィッ!
ギョイィィィィィィィッ!
ギョイィィィィィィィッ!
「――っ!?」
増えた! 近くの建物の陰から半魚人モドキが更に二十匹ほど現れて、せっかく減らした数がたちまち元通りになってしまった!
『そんな!』
『あれで全部じゃなかったなんて……!』
「いや……最初から想定しておくべきだったんだ」
クロエの計算が合っていれば、足りない住人の気配、その数は百を超えるのだから。
そう――『死の植物』の胞子に寄生されて、異形と化してしまったと思われるこの島の住人の数は。
「なんなら、これまでもまだ足りないくらいだ」
――それにしても、さっきの音……。
「どこかに彼らを操っている者がいるのか」
……マズい。カグヤとマリナをこの身に宿している限り、神威体現闘法<漁火の拳>の無駄撃ちや『変身』の制限時間を気にする必要は無いはずだが……。しかし、
「このままだとボクの体力のほうが先に限界を迎えてしまうかも……」
どうする……? どうすればいい?
『だんなさま! 忘れたの!? 双聖の神器の機能はプラズマの刃を展開することだけじゃないよ!』
え?
『イサリさん、この兵装、<ボーダーガード>は、最高の防御力と様々な戦況に対応できる汎用性の高さが売りの基本形態。その特長は防御特化形態の際の装甲の自動修復と、攻撃特化形態の際の肉体の高速再生、そしてその身に宿すオーバーロードのチカラを借りられることです』
「! そうか!」
先程とは一転ジリジリとにじり寄ってくる異形の群れと睨み合いながら、両腕に装着された籠手、その左腕のほうの表面に浮かぶ白鳥を模った光芒をタッチする。
――『使用する神威を選択してください。
現在使用可能な神威の数:4
・<Gaia system>:「♊」Deirdre
・<Daisyworld program>:「♓」Mercy
・<Impact winter>:「♉」Susan
・<Panspermia>:「♍」Courier』
「クーリエ! チカラを借してくれ!」
文字列へと変化した純白の光芒、その一番下を押す。
『「宇宙播種」インヴォーグ――隕石弾雨!』
すると頭の中に<種を播くもの>クーリエの思念が響いて、半魚人モドキどもの躰に弓道の的のような赫光の照準が浮かび上がり――直後。
頭上、星空より、灼熱と衝撃波を纏った小さな隕石が雨霰と降り注ぎ、異形の群れを撃ち砕いた。
ギョイイイイイイイッ!?
「破アアアアアアアッ!」
もうもうと立ちこめる土煙の中、四肢が千切れたり胴体に風穴が開いたりして悶える半魚人モドキどもを、プラズマの刃で順繰りに斬り伏せていく。
なるべく苦しみを長引かせぬよう、迅速に。
「――ふう……」
そうして最後の一匹を斃し、立ち昇る焔の柱をバックに一息ついていると、
……きゃあっ……
……うわああああ……
「! 今のは!?」
――風に乗って届いた微かな悲鳴に、ボクは緩みかけた気を張り直した。
「広場じゃない――遠くから聞こえたぞ!?」
『マズいよ、だんなさま!』
『たぶん、宴に参加していなかった方々かと!』
「! そうか!」
シャロンがこの島で感じ取れた人間の気配は、あのバーケンチンの乗組員のモノも含めれば九十ほど。だが、宴に参加していたのはそのうちの三十人ほどに過ぎないのだ。
つまり六十人近い住人がそれぞれの自宅で普段と変わらぬ日常を過ごしていたことになる。
そんな人々を、他にもいた半魚人モドキが襲撃したに違いない……!
「助けに行かないと!」
……いやでも、襲われている場所もわからないのに、どこへ向かえば……。
それに正直もう体力が……。
「くそっ」
どうしたら……。
「イサリさまっ!」
「旦那様!」
「船長!」
「若旦那!」
押し寄せてきた疲労に肩で息をしつつ悩んでいると、礼拝所の中に退避していた仲間たちが駆け寄ってきた。
「みんな、無事か? ――怖かったろう、ルーナ。もう大丈夫だよ」
真っ先に抱き着いてきたルーナをボクは気遣う。
が、ルーナはケロッとした顔で、
「いえ、怖くなんてなかったです! 微塵も!」
「み、微塵も?」
それが本当ならこの金髪幼女、まだ十歳なのに肝が太すぎない……?
全身防護服の表面で揺蕩う蒼白い残り火も一切気にせず抱き着いてきたし……(まあ、不浄な存在だけを灼く浄化の焔なので人間には無害なのだけれど)。
『こっち』に来てからいろんなことがあったせいで、このコもちょっとやそっとじゃ動じなくなっちゃった――というか、いろいろ麻痺しちゃってるのかもしれないけれど。それにしたってなぁ。
……あ。でもよく考えたらこのコ、肉親でもない異性と平気で同衾しちゃうようなコだったわ。
元からメッチャ肝が太かったわ。
「だってイサリさまは無敵のヒーローですから! わたくしたちを絶対に護ってくださるって信じてましたし!」
…………………。
『無敵のヒーロー』、か。
顔に紅葉を散らしてニッコリ微笑むルーナの言葉に、ボクは腹をくくる。
「……ごめんね、ルーナ。まだ戦いは終わってないんだ。ボクは行かなくちゃいけない。この島のヒトたちを助けないと」
そして仲間たちを見回し、
「みんな。礼拝所の中にいるヒトたちを連れて『トゥオネラ・ヨーツェン』へ先に避難していてくれ。破邪の効果がある樹液でコーティングされたあの船が今この島で一番安全な場所のはずだ」
「ま、待つんじゃ旦那様! まさか一人でこの島の連中を助けに行くつもりか!?」
「もちろん。『深きものども』を斃せるのはボクだけだからね」
「ちょっと船長、本気なの!?」
ボクの言葉にツバキが目を剥き、アリシアが慌てて詰め寄ってくる。
「――アンタ、さっきの戦いでどれだけの数の敵を相手にしたと思ってるのよ!?」
「そうじゃ! 実はかなり疲弊しとるじゃろ!?」
「疲れなんて、さっきのルーナの笑顔で吹き飛んじゃったよ」
……ボクはヒーローなんて柄じゃないけれど。
……世界平和なんて曖昧なモノや、見ず知らずの人間の安寧のために命を賭けて戦うつもりは無いけれど。
でも、ルーナの信頼を裏切るような真似だけはしたくない。
『無敵のヒーロー』がこれくらいでへばってられるか。
「旦那様……」
「船長……」
「それにホラ、お花摘みに行ったまま戻ってこないカグヤとマリナも心配だしね。誰かが捜しに行かないと」
嘘も方便だ。
「むう……」
「……わかったわ」
良かった。二人のことはツバキやアリシアも案じていたようで、渋々ながらも納得してくれたようだ。
彼女たちの後ろではシャロンやクロエ、イリヤ、リオンさんも複雑そうな表情を浮かべている。
……なお、そのまた後ろでは司厨長の髭面さんや艇長のオッサンといった男衆が「幼女の笑顔で元気いっぱいとは」「やはりロリコンか」とヒソヒソ話をしていた。この件が片付いたらまとめてぶっ飛ばす☆
「イサリクン!」
「船長クン!」
と、そこにスズランさんとナズナさんがやってきた。
後ろにはヨハネスさんやヘレンさん、そしてダリアちゃんを始めとしたこの島の住人たちの姿もある。
『変身』したボクの全身を興味深そうにしげしげと眺め回すナズナさんやダリアちゃんたちとは対照的に、スズランさんは気にする様子を一切見せず、
「イサリクン、みんなを助けに行ってくれるのね? 私が近道を教えてあげる、付いてきて!」
と言って、手を引っ張ってきた。
「近道? どこへの近道ですか、スズランさん」
「もちろん、さっきの悲鳴の主のところへの近道よ」
「!? どこにいるかわかるんですか!?」
「ええ。きっと港よ」
スズランさんは頷いて、他のみんなには聞こえないようボクの耳元でヒソヒソと囁く。
「さっきヘレンさんが言ってたの。もう何ヶ月も他の地区の住人の姿を見ていないって」
は?
「他の地区?」
「この島の居住区はね、大きくみっつにわかれているの。で、あのバーケンチンの乗組員とその家族に割り当てられたのは第三区なのよ。それが港の辺りってワケ。私とナズナ姉さんの家、それにヘレンさんとヨハネスさんの家もそこにあるわ」
「待ってください、まさか」
「そう。ヘレンさんが言うには、農耕や畜産なんかを任せられている第一区と第二区のヒトたちはもう何か月も前にどこかへ消えてしまったそうなの。だから、さっきの悲鳴の主は第三区の住人ってことになって、」
「いやいや、だから待ってくださいってば! 『どこかへ消えてしまった』って! 一大事じゃないですか! それが本当なら、なんでもっと騒ぎになってないんです!?」
ボクの疑問にスズランさんは「それがね、」としかめっ面で答える。
「私もさっきヘレンさんから聞いて初めて知ったのだけれど、なんでも四ヵ月前、ダリアちゃんにハナビ様から再度お告げがあったらしいの」
「お告げが?」
「でね、そのお告げは『あなたたちのために、この島よりも安全な場所を用意した』というモノだったらしいわ」
「……この島よりも安全な場所?」
「ええ。『そこは特殊な場所で、普通のヒトは出入りできないから、自分のチカラで少しずつ運んであげる』とハナビ様が仰ったらしいの」
「普通のヒトは出入りできない……?」
もしや第三<神域>スターマインか?
いや、でも、現在のハナビにそんなチカラがあるとは……。
それに造物主としてのスタンス的にも……。
「でね、四ヵ月前に第一区の住人が、二ヶ月前に第二区の住人が、一斉に姿を消したらしいのだけれど、ハナビ様に『運ばれた』と判断され問題視はされなかったそうよ。第三区の住人も、私たちの船が戻り次第『運んで』もらうということで話がまとまっていたとか」
「話がまとまっていた? 誰と誰の間で、ですか?」
「ハナビ様とミモザ様の間で、よ。まあ、両者の間には巫女であるダリアちゃんが入ったんでしょうけれど」
「……ハナビ様のお告げがあったとはいえ、住人が消えてしまったことを本当に誰も問題視しなかったんですか?」
怪しむヒトが一人くらいはいそうなものだけれど。
少なくともボクなら「こんな怪しいところにいられるか! ボクは島を出るからな!」と宣言して島からの脱出を図ると思う(典型的な死亡フラグだこれ)。
「内心『なんかおかしいなぁ?』と思ったヒトも迂闊に口にすることは出来なかったんじゃないかしら。自分のせいでハナビ様の不興を買いでもしたら、他のヒトたちにも迷惑をかけちゃうし。なにせ私たちには、他に行き場が無いのだから……」
「………………」
気持ちはわからないでもないが……。
「ちなみにこのことは乗組員組にはまだ話さないよう、留守番組は予め口止めされていたらしいわ」
「口止めされていた? 誰に?」
「ミモザ様によ。『自分から話すから』と」
「……ミモザさんから?」
「ええ。ハナビ様からのお告げが再度あったことや、その内容も、ダリアちゃんではなくミモザ様からみんなに伝えられたはずよ」
「…………なんで?」
ダリアちゃんが巫女としての役割を果たし、その重要性をアピールできるまたと無い機会だろうに。
「今日はいろいろあったせいでなあなあになっているけれど、本来なら巫女であるダリアちゃんと言葉を交わしていいのは母親であるミモザ様だけってことになってるの」
「え。そうなんですか?」
「その辺りは『月神教』の関係者だったミモザ様のこだわりね。『月神教』でも、巫女は肉親としか言葉を交わしちゃいけない決まりだったらしいわ。私だってこの島に着いてからは、ダリアちゃんと言葉を交わしたことは二、三回しか無いのよ? それだってミモザ様の目を盗んでだったし」
「………………」
「――って、いけない! すっかり話が逸れちゃったわ! そんなワケだから、さっきの悲鳴の主は港のほうにいるに違いないの! 急いで向かいま…………イサリクン?」
ボクはダリアちゃんのほうへ歩み寄ると、屈んで目線の高さを合わせる。
「ダリアちゃん。訊いてもいい?」
一刻を争う事態であることはわかっていたが、確かめないワケにもいかない。
疑念を確信へと変えるため。
そして、
――『何が再度のお告げだ! あの大嘘つきどものせいで妻と娘は! そして仲間たちもみんな……!』
シモンが口にしたあの言葉の意味を確かめるために。
「……なぁに? お兄ちゃん」
母親譲りのワインレッドの髪を足元まで届きそうなほど長く伸ばした幼い女の子は、赤みがかった円らな瞳でじっと見つめ返してきた。
「みんなと一緒に初めてこの島に辿り着いたとき、本当にハナビ様の『声』を聞いたの?」
「うん」
だよね。でなきゃ、『ハナビ』という名前が広まっているはずがない。
「ダリアちゃんはハナビ様と会ったことがあるの?」
「無いよ。『声』を聞いたことがあるだけ」
――さあ、ここからが本題だ。
「なら、」
ボクは思い切って訊くことにする。
きっとこの島の住人全員が、訊きたくても訊けなかったに違いないことを。
おそらくはスズランさんも、答えを確かめるのが怖くて訊けずにいたことを。
「――本当にハナビ様から『あなたたちのために、この島よりも安全な場所を用意した』という再度のお告げがあったの?」
ボクの質問に、ダリアちゃんはキッパリとこう答えた。
あくまで淡々と。
「ううん。ダリア、そんなお告げ聞いてないよ」
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