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最後の地球人♂、仙女や魔女と月の海を航る ~ルナマリアノーツ~  作者: 和泉 健星
4章 散る命、咲く命 ―偽りの楽園―
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♯71 才色兼備なお姉さんと、変なモノを目の当たりにした

第71話です。





「本当ですか聖女様!? ハナビ様のお告げを聞いていないというのは」

「どういうことだ!? 二回目のお告げなんて、実は無かったってのか!?」

島長しまおさは確かにおっしゃったのよ!? 『お告げがまたあったと聖女様から報告を受けた』と!」

「そうよ。現に、お告げのとおり他の地区のみんなが姿を消しているじゃない!」

「聖女様が嘘をついているんじゃないのか!?」


「そんなお告げ聞いてないよ」――ダリアちゃんが口にしたその言葉に、たちまち色めき立つ島民たち。


 その剣幕に、


「…………………」


 ダリアちゃんは表情こそ変えなかったもののやはり怖かったのか、ボクの後ろにさっと隠れる。

 ボクの身を包む全身防護服メタルジャケットの裾を指でちょこんとつまみ、申し訳程度にすがりついてくる。


 無理も無い。『聖女様』なんて呼ばれていても、まだ十一歳の女の子なのだ。


「み、皆さん、落ち着いてください!」


 島民たちの様子に危ういモノを感じたのだろう、慌ててなだめるスズランさん。


「ダリアちゃ……聖女様は嘘をつくようなコじゃありません!」

「そうです!」


 ナズナさんも同調し、


「聖女様も含め私たちみんな『ある人物』に騙されていたんです!」


 この物言い……。彼女たちは黒幕の正体に目星がついているようだ。


「『ある人物』……?」

「それって……」

「まさか……」


 島民たちの反応はまちまちだ。ピンと来たのか息を吞んでいる者もいれば、きょとんとしている者もいる。


「みんな、話はあとだ。まずは港へ移動しよう」

「……そうね。宴に参加していなかった皆さんも心配だし」


 ヨハネスさんと、彼に支えられて立っているヘレンさん(身重なのに走ったり転んだりしたからか顔色が優れない)の言葉に、島民たちも次第に冷静さを取り戻し、


「わかりました」

「確かに」

「いつまでもこうしていても仕方ないものね」

「ウチの家内と娘は無事だろうか……」


 顔を見合わせ、頷き合う。


 ……よし。


「ツバキ。みんなの避難誘導を頼む。ボクは先行して、港で待ち受けているだろう脅威を排除しておくから」

「承知した。頼んだぞ、旦那様」

「イサリさま! どうかお気を付けて!」

「ありがとう、ルーナ。――スズランさん、一緒に来てもらえますか。さっき言っていた近道とやらを教えてください。おそらく港では『深きものども』が待ち受けているでしょうが、あなたのことはボクがこの命に代えても護りますから」

「っ」

「……スズランさん? どうしました? 大丈夫ですか?」

「な、なんでもないわ。行きましょう☆」


 ……本当に大丈夫かなぁ? なんか様子がおかしいけど……。

 心なしか顔が赤いし。妙にソワソワしてるし。


 まあ、いいか。それじゃあ早速――


「待って、スズランちゃん!」


 と、そのとき。ボクとスズランさんの間にナズナさんが割って入ってきた。


「危険だとわかっていて、あなたを行かせるワケにはいかないわ!」

「で、でも」

「私にとってあなたはこの世に残された唯一の肉親なのよ!? あなたにもしものことがあったら、私はどうしたらいいの!?」

「……ナズナ姉さん……」


 涙ぐむ双子の姉を見て、言葉に詰まりうつむくスズランさん。


「この世に残された……唯一の肉親」


 ――そしてもう一人。

 ボクの背後でも、肉親を一人しか持たない女の子が俯いていた。

 母親譲りのワインレッドの長い髪を揺らし、心細そうに呟いていた。


「お母さん……」


 …………………。


 掛けるべき言葉が思いつかず、無言でダリアちゃんの頭を撫でる。


「……お兄ちゃん……?」


 撫でられた頭に手を置き、目を丸くして驚くダリアちゃんを見て――何をされたのかイマイチ理解できていない様子の幼い女の子を見て。ボクはやりきれない気持ちになった。


 ……このコは誰かに頭を撫でてもらったことすら無いんだ。

 生まれてから今日までずっと『教祖様の娘』や『聖女様』という肩書がついて回ったから……。


「……ごめん、ナズナ姉さん。でもわかって。危険でも、誰かがイサリクンを案内する必要があるのよ。少しでも犠牲者を減らすために」

「なら――船長クン!」

「あっ、はい」


 ダリアちゃんと無言で見つめ合っていたボクは(誤解を招く表現)、ナズナさんに呼ばれて振り返る。


「スズランちゃんの代わりに、私があなたを港まで案内するわ!」

「えっ、ナズナ姉さん!?」

「わかりました」


 案内さえしてもらえれば、ボクは別にどちらでも構わない。


 散々幼女(ダリアちゃん)と見つめ合っておいてこんなことを言うのもなんだけど、今は一分一秒でも惜しい。そうと決まれば善は急げだ。


「――失礼します」

「きゃっ!?」

「ちょっ、イサリクン!?」


 ボクはみんなの前でナズナさんをお姫様抱っこすると、「しっかり掴まっていてくださいね」と告げてきびすを返し、


「それじゃあみんな、またあとで!」


「ま、待って!」と青ざめているスズランさんや「あーあ……」と何故か呆れ顔の仲間たちを尻目に駆け出す。


「ナズナさん、まずはどっちへ行けば!?」

「そこの細道に入って!」


 ……そして。



「イサリクンの八方美人ーっ!」



 視界の隅で子供みたいに頬を膨らませているお姉さんに「カグヤやルーナみたいなことを言わないで!」と胸中でツッコみつつ、ボクは指し示された隘路あいろへと飛び込んだのだった……。






              ☽






「これは……!?」


 暗雲立ちこめる夜の港。その波止場。

 そこでボクとナズナさんが最初に目にしたモノ。

 それは、


「あっ! スズラン様だ!」

「いや待て、あの髪の長さはナズナ様のほうだ」

「アイツ! 俺たちのアイドルであるナズナ様をお姫様抱っこしてるぞ!?」

「アンタには奥さんがいるでしょ」

「あのヒト、あの真っ白な帆船の船長さんよね? 何あの格好」


 ――松明たいまつを手に、波止場の一角に集まっていた島民たちの姿だった。

 その数、おおよそ二十ほどか。


「見たところ怪我人や死人は出ていないようですね、ナズナさん」

「そ、そうね」

「? どうしたんですか、顔が赤いですよ」

「だ、だって、注目されちゃってるし」


 あ。そっか。

 二十一歳の彼女からしてみれば五歳いつつも年下のボクは一々意識するような相手じゃないとはいえ、お姫様抱っこされているところを知人に見られるのは流石に恥ずかしいよね。


「気が利かなくてすみません。すぐに下ろしますね」


 ボクは謝罪し、ナズナさんを地面に下ろすため屈む――が、


「だ、ダメ!」


 ナズナさんはこちらの首根っこに両腕を回し、ぎゅっとしがみついてきた。


「もう少しだけ、このままでいさせて。その……腰が抜けちゃったの」

「腰が抜けちゃったの!? 抱えられていただけなのに!?」

「だ、だって船長クン、ブースターダッシュ? とかいうのを何回も使うんだもの。あれ、とっても怖いのよ?」


 ブースターダッシュというのは、全身防護服メタルジャケットの表面で燃えているうずみびを爆発・燃焼させることで得た推進力を利用した高速移動のことだ。


 ここへ来るまでの間に何度か使ったのだけれど。確かにナズナさん、そのたびにキャーキャー可愛らしい悲鳴を上げてたっけ。


「てっきり楽しんでいるものとばかり」

「私ずっと悲鳴を上げていたわよね!?」

「ジェットコースターなんかの絶叫マシンが好きな女性でも、乗っている最中は悲鳴を上げるものですし」

「ジェットコースター? 何それ?」

「レールの上を走る箱です」

「トロッコみたいなモノ?」


 トロッコはあるんだ、この世界……。

 おそらくは動力車じゃなくて手押し車のほうのトロッコだろうけど……。


「似たようなモノです。ただしトロッコとは違い、ヒトを乗せて急勾配や角度がついたレールの上を猛スピードで駆け抜けます。で、途中で一回転したり、天地が逆さまになったりもします」

「何それ拷問の道具!?」

「遊具です。スリルを楽しむことを目的とした」

「頭がおかしいわ地球人!」


 まあ、「スリルを楽しみたい」なんて『こっち』で生まれ育った人間には理解できない感覚だろうなぁ……。

 スズランさん辺りは「何それ面白そう☆」とか言っちゃいそうだけど。


 今回の件が片付いたら、スズランさんにもお姫様抱っこされた状態でのブースターダッシュを体験してもらおうかな……。

 どういうリアクションをするか楽しみだ。


 とか考えていると、


「……ごめんなさい」


 何故かナズナさんに謝られた。


「本当はスズランちゃんに案内してほしかったんでしょう? 私じゃなく」


 ……はい?


「なんでそうなるんです?」

「だって船長クン、『あなたのことはボクがこの命に代えても護ります』ってスズランちゃんを口説いていたじゃない。今だってスズランちゃんのことを思い出してたんでしょう?」

「……口説いた覚えは無いんですが」


 ナズナさんは「本当に?」とボクを上目遣いで見つめ、


「でも男の子って、スズランちゃんみたいな愛嬌のあるコが好きでしょう? 私みたいな可愛げの無い女より」

「ナズナさんだって充分魅力的な女性ですよ? 妹さん思いなトコとか特に」


 確かにフレンドリーで茶目っ気たっぷりなスズランさんと比べるとしっかり者のナズナさんはお堅い印象があったのも事実だけれど、こうしてボクの腕の中で縮こまっているナズナさんは小動物みたいで可愛いらしいと思う。


 ……てかこのヒト、さっき誰かが「俺たちの憧れであるナズナ様を~」って言っていたのが聞こえなかったのかな?


「じゃあ、何かあったら私のことも護ってくれる?」

「もちろん」

「……本当に?」

「護ってみせますよ。ナズナさんも。スズランさんも。それにダリアちゃんや他のヒトたちもね」

「…………そっか。聖女様もいたわね」

「? ナズナさん……?」

「…………………。まさかスズランちゃんや聖女様相手にこんな気持ちになる日が来るなんて思わなかったわ」


「自分がこんなに醜く浅ましい人間だとは思わなかった」――と。

 そう言って、ナズナさんは顔を背け――そして息を呑む。


「あれは……!?」

「ナズナさん? どうしました?」


 彼女の視線を辿る。と、信じられないモノが目に飛び込んできた。


「なっ……なんでこんなところにあんなモノが!?」


 どうして今まで気付かなかったのか。


 そこにあったのは、鋭い先端を夜空めがけて雄々しく伸ばした巨大な氷のかたまり

 まごうことなき『氷山』だった。

 波止場の一角に鎮座していたそれは、ボクたちが昼間この島に上陸したときは無かったはずのモノだ。


 しかも、


「見て、船長クン! 中に『深きものども』が閉じ込められてる!」

「本当だ……」


 空気を含まない氷河のそれのように青い氷の壁、その奥には、緑色の半魚人モドキの姿がいくつもあった。


「なんで『深きものども』が氷漬けになってるんだ……!?」

「さあ……」



「「「「「ナズナ様っ」」」」」



 呆然と氷山を見上げるボクとナズナさんのもとに、島の住人たちが駆け寄ってくる。


「皆さん、無事ですか? いったい何があったの? さっき悲鳴が聞こえたのだけれど」


 ナズナさんの問い掛けに一同は困惑の表情を浮かべ、


「それが……」

「自分たちにもよく……」

「俺たち、なんか港のほうが騒がしいなと思って、みんなで様子を見に来んですが、」


「が?」と、先を促すナズナさん。


「待ち構えていた『深きものども』の群れに襲われまして、」

「それで?」

「もうダメだと思ったその瞬間、見たことのない女の子がどこからともなく現れて、俺たちを助けてくれたんです!」


 ……『見たことのない女の子』?


「助けてくれたの? 女の子が?」

「ええ。女の子がこう右手をかざして何やら呟いたと思ったら、『深きものども』が一瞬で氷漬けに」


 戸惑うナズナさんに、島民の一人が頷き、右の掌を前に突き出してみせる。


「つまりこの氷山は、その女の子によって生み出されたということ? ――それで? その女の子は今、どこにいるのかしら?」

「気が付いたらいなくなってました」


 ふむ。


「ちなみにどんなコでした?」


 気になって横から口を挟むと、島民たちは顔を見合わせ、


「そうだな、背格好的に、年齢としはたぶんアンタよりちょっと下くらいで、」

「ふむふむ」


 十四、五歳ってトコか。


「すっげえ綺麗な銀の髪(プラチナブロンド)を、地面に付いちゃうんじゃないかってくらい長く伸ばしていて、」

「クロエやダリアちゃんみたいだな」


 クロエの髪の色は銀の髪(プラチナブロンド)じゃなく黒で、ダリアちゃんはワインレッドだけど。

 ……銀の髪(プラチナブロンド)といえば、元気にしているかな、アデリーナさんとサシャちゃん……。


「オマケにすっぽんぽんで、」

「痴女じゃねーか」


 思わずツッコんでしまった。


 なんですっぽんぽん!? 『深きものども』を氷漬けにしてみせたことより、そっちのほうが気になるよ!



『……だんなさま? 今、危うく裸のアデリーナとサシャを想像しちゃうトコだったでしょ?』

『気を付けてくださいね。今のわたくしたちは以心伝心。イサリさんが考えたりイメージしたりしたことは、すべてわたくしたちに筒抜けですので』



 ボクの中のカグヤとマリナが釘を刺してくる。……けど、今のは仕方なくない?

 ちょうどアデリーナさんたちのことを頭に思い浮かべていたところだったんだもん。


「全裸だったというの? 夜とはいえ屋外で? 十四、五歳くらいの女の子が?」


 ナズナさんもメッチャ困惑してる……(当たり前)。


「あと、独り言を言ってたなぁ」

「独り言?」

「ああ。『ご主人様、どこにいるの?』とかなんとか」

「へえ」


 痴女のご主人様か……。

 いったいどんな変態なんだろう。

 きっとボクの巫女さんフェチなんて可愛く思えるほどのド変態なんだろうなぁ。



『まさかその女の子って……。でも、だとしたらどうやって()()姿()に……? 以前わたしがあのコに分け与えた「地球系統ガイア・システム」のチカラは、もうあまり残されていないはずなのに……』

『確かに……。()()()()()()()()()、維持するだけでも相当な量の「地球系統ガイア・システム」を必要とするはず……。受肉をやり直せるほど余力があるとも思えないのですが』



 ……ん?



『だよねぇ。だんなさまにならって大気中の「地球系統ガイア・システム」を取り込める例の呼吸法を使ったところで、受肉に必要な量には全然足りないだろうし』

『あっ! わかりましたよカグヤちゃん! あのとき食べた…………です!』



 …………………。



『そうか! あれを食べて得た「地球系統ガイア・システム」を治癒ではなく受肉に使って……!』

『はい。神威かむいの扱いに慣れていれば、そう難しいことではないはずです!』



 この口振り。どうもこの二人、女の子の正体に心当たりがあるっぽい。


「っていうか、」


 ……努めて考えないようにしていたけれど。

 ……えて気付かないフリをしていたけれど。


 氷山を生み出す、そんな大それた真似が出来る存在ものといえば……、


「ごめんなさい、船長クン。やっぱり下ろしてくれる?」

「えっ? あ、はい」


 乞われ、ボクは我に返り、ナズナさんを地面に下ろす。


「ありがとう」


 ナズナさんは島民たちを順繰じゅんぐりに見遣みやると、「皆さん! 聞いてください!」と声を張り上げ、


「私たちもさっき『深きものども』の群れに襲われたんです!」

「「「「「えっ!?」」」」」

「ですが安心してください。ここにいるイサリ船長が『深きものども』の群れを撃退してくれたお陰で、宴の参加者は全員無事です。彼らもここへ向かっています」

「「「「「ホッ……」」」」」


 ナズナさんの説明に、慌てふためきかけた島民たちは胸を撫で下ろす。


 が、


「皆さんにお願いがあります。今も自宅にいてこの異常事態に気付いていないと思われる方々を至急呼び集めてください。そして出航の用意を。これ以上この島にとどまるのは危険かもしれません」

「「「「「ええっ!?」」」」」


 結局慌てふためくことになった。


「それって船でこの島から脱出するってことですか!?」

「いいんですか!? ここを離れてしまって!?」

「そうですよ! せっかくこの島よりも安全な場所へ連れていってもらえることになったのに!」


「いいえ、」とかぶりを振るナズナさん。


「ハナビ様から『あなたたちのために、この島よりも安全な場所を用意した』というお告げがあったという話は嘘だとわかったんです」

「嘘!?」

「それじゃあ」

「聖女様が我々を騙したんですか!?」


 マズい、このままだとダリアちゃんの立場が!


「いいえ。私たちを騙したのは聖女様ではありません。聖女様はこう仰いました。『二回目のお告げなんて無かった』と」

「ええっ!?」

「でも!」

「現に、他の地区の住人はみんな姿を消していて……!」

「――彼らはみんな、我々を騙した者によって『深きものども』に変えられてしまったんです。ハナビ様によって安全な地へ招待されたワケではありません」

「「「「「『深きものども』に!?」」」」」

「――そうです。私はこの目で見ました。シモンさんが緑色の『深きものども』へ変わってしまう様を。あれは間違いなく本人の意志ではありませんでした。皆さんを襲ったというこの緑色の『深きものども』も、正体はこの島の住人の誰かに違いありません」

「「「「「そ、そんな……」」」」」

「――そして、我々を騙した者……すべての事件の黒幕は、」


 と、ナズナさんがその名前を口にしようとしたその瞬間。



 ――ドオン、と。

 突き上げるような激しい揺れが、ビュルグ全土を襲った。



「なっ!?」

「きゃあ!?」

「「「「「うわああああああああっ!」」」」」


 立っていられないほどの激震に、全員が尻餅をつく。


「な……なんだこの揺れは!? 地震!? このタイミングで!?」


 偶々(たまたま)近くに生えていた樹を支えに、どうにか立ち上がったボクの目に飛び込んできたモノ。

 それは、礼拝所がある辺りで立ち昇った巨大な火柱ひばしらだった。


「氷山の次は火柱かよ!?」


 ……いや、違う。


 あれは火柱などではない。


 あれは……あの柱の正体は、


「――岩漿マグマだ」


 大地を割って噴き上がった灼熱の岩漿マグマが、夜空めがけて立ち昇っているのだ……!


「いったい何が起こったんだ!?」


 唸るボクの頭の中にカグヤとマリナの『声』が響く。



『この感じ……まさか!?』

『これはハナビさんのチカラ――「火山の冬(トバ・カタストロフ)」!?』



「えっ!?」



『下級眷属ならともかく上級眷属の強大なチカラは、たとえ「核持ち」であっても振るうのは難しいはず……。まさかあのダリアってコ、チカラを暴発させちゃったの!?』

『だとしたら、何かそうなるキッカケがあったに違いありません。もしやあの場に残った皆さんに何かあったのでは!?』



 なんだって……!?



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