特訓の成果
「椿、椿」
「えっと……は……え?」
「ご飯何でも良いは困るの?」
「ん?」
帰り道お互い何も喋ってなかったけど隼人さんは突然そう問いかけてきた。今までのことを考えてピンとくる。
「優菜さん……?」
「うん。毎日作るのに何でも良いが困るって。優菜さん親子丼しか作らないじゃんって言ったら叩かれた」
「あらら……。そうで……んーリクエストがあったら言ってほしい……な」
「そうなんだ。じゃあ豚しゃぶは?夏に写真送ってくれたでしょ」
「うん。……あ!!でもそしたらちょっと早いけどしゃぶしゃぶにしよっか。テーブルでお鍋を囲んでしゃぶしゃぶするの」
「それ楽しい?」
「とっても楽しいよ!!団らんって感じで」
「そうなんだ。じゃあ帰りに鍋買って帰ろうか。真ん中が開いてるやつでしょ」
「うん!!」
楽しそうな横顔に嬉しくなる。隼人さんが楽しいと思えるのはすごいこと。だけどそれが当たり前になってほしい。
「たこ焼きも早くやってみたいね。きっと2人でも楽しいけど2人よりたくさんの方がもっと楽しいよ」
「2人より?」
「そう。子供ができたらみんなで賑やかで楽しくできるけど今は若菜と結城くんを呼んだりしよ」
「えー若菜嫌」
「もーそんなこと言っちゃ駄目」
「いーやー」
「駄目。私は若菜と一緒が良い。楽しいよ?」
「絶対楽しくない」
「やってみないとわからないから。結城くんも一緒だから絶対楽しいよ」
「うーん……仕方ないな……」
「うん、ありがとう」
「椿……敬語が」
「あ……本当だ。隼人さんと楽しいこと話していたら夢中になってた。でもこれで成功だね!!特訓のおかげ!!」
「もっとキスの前とか特別な時にできるようになったら良かったのに」
「隼人さんって時々ロマンチックが好きだね」
「そんなことないよ。俺は現実主義だよ。妄想なんてしてないよ」
「聞いてないよ……隼人さんのエッチ……」
「それもだけどそれだけじゃないよ。若菜じゃないから」
「若菜はロマンチックだもんね」
「あんな甘ったるいチビザル厚化粧くっつき虫妖怪と同じじゃないよ」
「甘ったるい……チビザル……厚化粧……くっつき虫妖怪……?」
「甘ったるい香水でキーキー煩いチビで優菜さんと同じで厚化粧で昴のくっつき虫の妖怪だよ」
「なんでそんなに悪口羅列してるの!?」
「あいつがムカつくからどんどん増えてくんだもん」
「もー!!若菜が聞いたら怒るよ」
「いつも言ってるよ。いつも怒ってるよ」
「可哀想!!私も隼人さんの悪口羅列するよ!!」
「良いよ」
「優しくてかっこよくてお風呂上がりはもっとかっこよくて男の人なのに色っぽくてずるい」
「それは褒め言葉だよ」
「悪いとこないんだった……」
「椿は可愛くて優しくて、そうだ、急がなくて良いって言ったのに一生懸命走って来た時とか息切れながら必死になってて可愛いし」
「夏の駅で待ち合わせした時のこと!?か、可愛くない!!」
「それに俺に触れられたり囁かれて真っ赤になった時なんて最高に美味しそうだよ」
「変態!!」
「変態だってば、椿限定で」
「むー……」
あれ……まただ。
『それで、いつもは部活があるので若菜と一緒に帰らないんですけど今日は帰れるねって若菜が。……それで、どうしようって迷っていたら先生に用事を頼まれて、それにも迷ってたんですけど結局先生の用事をするから若菜には先に帰ってもらって。……で、明日使うっていうレジュメの印刷をしてから急いできたんです』
いつかの部活が休みの日のこと。隼人さんに会いたくて必死にあの中庭に走って会いに行ったんだ。住所を暗記できるほどの隼人さんとは比べ物にならないけど私も記憶力は良い方。昨夜と同じような不思議な感覚。1ヶ月半前の公園でのことが重なる。隼人さんが私に水を買ってきて渡してくれた。覚えてる隼人さんは覚えてない私をどんな気持ちで見守ってくれたんだろう。
「椿こそ変態だよ」
「へ?」
「お風呂上がりに見惚れてるんでしょ」
「見惚れ……そ、そうだけど」
「嬉しい」
「う……隼人さんもどぎまぎして」
「してるよ」
「してないよ」
「したよ。あーんしてアイスを食べさせた時とか」
「え?……ああ!!赤くなってた!!」
「可愛かった」
「あ!!そうだ!!結城くんにあーんしたこと言ったでしょ!!」
「だって可愛かったから。昴に言わなきゃってなって」
「そういえば結城くんに電話しなきゃって言って……ああ!!もしかしてお風呂に入ってる時結城くんに私のこと話してるの!?」
「椿が昴と話せば良いって言ったんでしょ」
「もー!!そういうつもりじゃなかったのに!!恥ずかしいから駄目!!」
「嫌だ。だいたい毎日昴じゃないよ。それに湯船に浸かると良いって言ったの椿だよ。楽しいよ」
「そ……れは嬉しい……けど恥ずかしいからとにかく今日は結城くん禁止!!私に結城くん貸して」
「返却期限は今日中だよ」
「良いよ」
「でも昴若菜との時間邪魔するなって何時から何分どんな内容の話をするのか事前に言わないと電話出てくれないんだよ。詳しく言わないと煩いんだ」
「そ、そうなの?予約が必要なんだね。わかった」
「ああ、あとご飯食べる前にお風呂入ろ。お酒飲んでから湯船浸かったら危ないよ」
「うん、それもそうだね。じゃあ隼人さんがお風呂に入ってる間に電話するから何時が良いかな……」
「椿が19時から入るから20時とか?」
「今日はいつもより早く出ようかな。19時半くらい」
「うん」
私は鞄から携帯を取り出して結城くんにメッセージを送る。
『今日の19時半くらいから30分くらい隼人さんの子供の時の話を聞かせてほしいんだけど電話していいかな?』
『良いよー』
『ありがとう。くらいっていうのは何分の誤差だと大丈夫?』
『え?』
『それと子供の時の話ってもっと詳しく言った方が良いのかな』
『なにそれ(笑)』
『え、隼人さんが結城くんに電話する時は詳しくいつからどれくらいなんの内容を話すのか言わないと電話出てくれないって言うから』
『それ隼人くんが毎日しつこい電話してくるからそう言ったんだよ』
『なんだ、そうなの?』
『そうだよ。面白いんだけど』
『でもそれなら良かった。今日結城くんを借りることになってるんだよ』
『笑わせないで』
『え、笑わせてないよ。結城くん貸してって言ったら返却期限は今日中だよって言われたの』
『面白すぎ。僕レンタルしないで』
『ご、ごめんね』
『面白いから良いよ。じゃあ19時半にレンタルされるね』
『ありがと。よろしくね』
結城くん今頃すごい笑ってる気がする。
「椿?」
「結城くんにすごい笑われた。隼人さんがしつこいからそう言ってただけだし僕をレンタルしないでって」
その時隼人さんの携帯のバイブレーションが鳴る。
「あ、俺のとこに来た。これ絶対怒ってるよ」
「え、そんなことないよ」
「そんなことあるよ。昴俺に冷たいから」
「結城くんはいつでも穏やかで優しいけど」
「いやいや、昴は冷え冷えだよ。昴こそ酷い男なんだよ。人畜無害は見た目だけ」
「また酷いこと言って……」
隼人さんと話してると楽しくて私の考えてることをわかって辛くなる私の心を救い上げてくれる気がする。気のせいかな。早く隼人さんの気持ちを知りたい。その前に結城くんに話を聞きたい。30分じゃたくさんは聞けないかもしれないけど。
私たちは家に帰って隼人さんがお風呂に入りに行くとソファーに座って結城くんに電話をかける。
『もしもし。レンタルされたよー』
「あ、あの、結城くんごめんね」
『全然良いよ』
「若菜は?」
『若菜まだ今日仕事なんだよ』
「そっかそっか」
『優菜さんに聞いたんだよね』
「うん、聞いたの」
『優菜さんにどこまで話してって言ったの僕なんだよ。隼人くんほとんど覚えてないから』
「そうなんだ。ありがとね」
『ううん。えっと、なにから話そうか……』
「なにを聞いて良いの?」
『隼人くんは坂下さんが聞きたいならなんでも話すって言ってたからなんでも良いんだけど。隼人くんが直接話した方が良いと思うのもあるからね。これは?小学5年生の時隼人くんが実力を隠すようになった理由』
「え!?それは男同士の約束でしょ!?私が聞いて良いの?」
『そう言って自分が忘れてるんだから良いよ。それに僕だけが知ってるのも疲れちゃうし。坂下さんには知ってて欲しいんだよ』
「うん」
『えっとね、隼人くん昔から女の子にモテてて同時に男の子に嫌われてたんだ。隼人くんのことが好きな女の子が好きな男の子に突っかかってこられたり。女の子から告白されて断ったら泣かれるしその子が好きな男の子に怒鳴られるし理不尽だって、面倒だって言ってたよ。それになんでもできるから余計に反発されてて。僕小さい時なんでも聞いてたから隼人くん本人になんでみんな隼人くんを嫌うのかって聞いちゃって。そしたら言ってたよ。みんな自分が一番になれないからなんでも一番になる俺のことを僻んでるんだよって。隼人くんそんなのばっかりだよ。悟ってるっていうか達観してるっていうか。世の中はそういうものなんだ、優れてる人は疎まれるようにできてるって。今ならそんなことないって思えるけど小さい時だったからモヤモヤしたまま隼人くんの話をただ聞いてたんだ。若菜も隼人くんは達観しててなんでも知ってる上から目線でムカつくって言ってるんだけど』
「そうだ、若菜も言ってたよ。あの時はまだ全然隼人さんのことわかってなかった」
『若菜もそうは言っても隼人くんが優しいのはわかってるよ。それこそ僕よりもずっと前生まれた時からそばにいたからね。誘拐もどき事件もぶつくさ言ってても隼人くんが迎えにくるまで心細かったみたいだし』
「あ、若菜のそれは?誘拐って」
『それは学校の帰り道に僕が見てない隙にどっか行っちゃったってだけだよ。僕と若菜が小学3年の時。でも僕が慌てて家に帰って母さんの代わりに掃除しに来てた優菜さんと美香さんに言ったら誘拐されたって大騒ぎになって。浩一さんも琉依さんもみんな帰ってきて。部活帰りに僕の家に来た隼人くんがその騒ぎを見て若菜を探しに行ったんだよ。それで家から30分歩いた所にある公園にいた若菜を見つけたんだ。隼人くんは放浪するなら家の近くにしろとか文句言って若菜は放浪じゃなくて散歩だって主張して。若菜はねこと遊びながら散歩してたら公園で足を擦りむいて動けなくなってたんだって。ねこには見捨てられるし心細かったって』
「若菜……可哀想に」
『でも結局2人で騒がしく帰ってきたよ。膝が痛いから痛いの痛いの飛んでけやってって言ったら若菜の頭に飛ばされたとか』
「頭に?」
『うん。うちでは……っていうか琉依さんはいつも痛いの痛いので琉依さんの頭に飛んでけって言って若菜はもう痛くないねって言ってたんだ。隼人くんのせいで頭が痛くなるし膝は痛いままだしお腹は空くしって泣き出したから隼人くんがおんぶして帰ってきたんだよ』
「そうなんだ」
『うん。だから若菜のはただのお散歩なんだよ。それで隼人くんが小学5年生の個人面談の日のことなんだけどね、僕と隼人くんの面談の日が同じで母さんと美香さんが合流してお茶して帰ろうって言うから面談が終わるまで隼人くんと2人で図書室で待ってたんだ。それで隼人くん、美香さんを1人で校内うろつかせたら大変だって大分早く教室に向かったんだけど途中で隼人くんの前に面談していた親子の話を聞いたんだ。お母さんはすごく怒っててね、私立の中学に行くんだから隼人くんより良い成績を取りなさいって。塾に通ってるのにどうして塾に通ってない隼人くんに勝てないのって。それを聞いた直後は隼人くん優菜さんより厄介で鬼みたいって笑ってた。それからしばらくしてからだよ。隼人くんがテストで全部98点にしたの。すぐにこの前のことは隼人くんが気にすることじゃないって言ったら隼人くん気にしてないって答えたよ。閃いたんだって。あの時の子は次の日隼人くんのせいでお母さんに怒られたって言ってきたんだって。自分が馬鹿なのが悪いんだって思ったけどそんな馬鹿に毎日騒がれて鬱陶しいって。向こうの努力が実るまで我慢してるよりこっちのレベルを下げた方が楽だって。それだけ聞くといつも通り意地の悪いこと言ってるって思うんだけど、隼人くんが鬱陶しがってても美香さんが満点のテストをファイルにしまってたり運動会やマラソン大会の1番のシールやメダルを大切に飾ってるのを嬉しいと思ってる気がして。隼人くんが美香さんを喜ばせたいと思わないはずないって。だから納得できないって言ったんだけど隼人くん自分で1度決めたことをめったに曲げないから、つまらないはずなのに笑って友達と遊んでる隼人くんを見てられなくて、僕が隼人くんと対等でいられる存在になろうって決めたんだ。そうしたら隼人くんはレベルを下げないで自然でいられるんじゃないかって。それで僕は隼人くんの後ろにいて隼人くんに頼ってばかりでいるのをやめたんだ。隼人くんが興味を持てるものを探そうっていろんな人と友達になって情報を集めて隼人くんにやらせてみたり隼人くんを嫌ってる男の子とも仲良くなってその子を好きな女の子との仲を取り持ってくっつけさせて隼人くんに突っかかっていかないようにしたり偶然を装ってあの時の母親が学校に来てる時に接触して隼人くんのすごいところを話したら隼人くんは別格だから隼人くんと比べちゃ駄目だって子供に優しくしようって思わせたり……ああ、これは隼人くんは知らないことなんだ、勿論だけど。えっと、言っても良いけどとりあえず秘密で』
「えっと……秘密にするね。結城くんって意外にすごいことするね」
『あのね、隼人くんってね、すごいんだよーって無邪気に話すとたいていの人は話を聞いてくれるんだよ』
「そ、そうなんだ」
『うん。でもね、隼人くんのためにってたくさん頑張ってきたのにやってみてよって勧めたゲームもDVDもつまらないとか貶されて坂下さんの好きなものにはすぐに興味を持って僕今まで何してたんだろうって。無駄だったのかなって』
「え!?そんな!!ご、ごめんね!!でもそんなことないよ!!」
『えへへ、ありがとう。無意味だったかもしれないけど隼人くんが言ってくれたんだ。俺に会わなかったらもっと違う人生を昴らしく生きていけたはずなのに付き合わせてごめん。でも昴がいつもすぐそばにいてくれたから俺は自分を見失わないでいれたんだと思うって。だから良いんだ。でもこれからは僕じゃなくて坂下さんが隼人くんのそばにずっといてあげてね。バトンタッチ』
「うん、ありがとう。大切な思い出も言葉も教えてくれてありがとう」
『隼人くんはかなりかっこいいでしょ』
「うん、かっこいい」
『あれでひねくれてなければなお良いんだけどそれだと隼人くんじゃないからね。でももうちょっと矯正できる余地があった気がするよ。それから意地悪なこと言っても大丈夫?』
「え?なに?」
『さっきの若菜の話、坂下さんが隼人くんが若菜のことを好きだと思ってたらできなかったなって』
「あ……本当だね。でも意地悪なんかじゃないよ。聞けて良かった。だけど良かったって言って良い話じゃないよね」
『いや、基本うちにタブーないから。笑えない話でも笑い話にしちゃったり隼人くんの本当の誘拐話もそれがなければ隼人くんの危うさに気付かなかったから今でもあれは怖かったとかよく話してるよ』
「そっか。あ、それに結城くんは意地悪じゃなくて優しいよね。私に忘れてることがあるって気付かせてくれようとしたんでしょ?」
『え……?なんのこと?』
「ほら、アルパカの話とか。隼人さんから私に話したことがあるって聞いてたんじゃない?」
『うそ……思い出したの?』
「んー……なんだか不思議な感じなの。久しぶりに思い出した感じで、でも忘れてたって感覚はなくて。それなのに最近初めて聞いたと思ってて、忘れてる時があったんだって。わかるかな……自分でもよくわからないモヤモヤがあって」
『それ隼人くんには?』
「これから話そうと思ってたの」
『あう……隼人くんに最初に話してほしかった気もするけどまあ良いか。坂下さんが忘れてるっていうのはわかってたけど坂下さんに気付かせようと思って話題にしたわけじゃないよ。それこそ意地悪だった。坂下さんがなんの話を覚えてないのかを確認するために話したんだよ。ごめんね』
「あ、謝らないで……。そっか、そうなんだね」
『隼人くんに話して隼人くんの考えてることを聞いてあげて』
「うん、そうするね。ありがと。それにしても結城くんと長い付き合いなのに初めて知ったことばかり。結城くんのことも知れて良かったよ。結城くんって案外黒いね」
『優菜さんに影の暗躍者とか表で地味だからこそできる芸当だとか言われるよ』
「そうなんだ」
『ねえ、考えてみて。隼人くんと離れてた間も僕とは友達だったから隼人くんより僕の方がそういう意味では近いと思わない?』
「あー確かにそうだね」
『遊ぶ時若菜が一緒だったけど2人でメッセージしたり電話も初めてじゃないし』
「うんうん」
『今日でもっと僕のことを知って距離感も縮まったことだし名前呼びしてみようよ』
「おお!!良いね!!昴くん」
『椿ちゃん』
「なんか新鮮ー!!」
『でしょー!!』
「……椿」
「あれ?あ、隼人さんお風呂上がったんだねー」
どうしたんだろう。呆然としてる隼人さんが何も言わずに私が座ってるソファーに座る。そして何も言わずに笑顔になる。
「昴?」
「あ、昴くんとお話ししたいんだね。はい、良いよ」
私から携帯を受け取った先輩はスピーカーにしてテーブルに置いた。
「昴」
『なーにー?せっかく椿ちゃんと仲良く話してたのにー』
「……」
隼人さんは私と携帯を交互に見て再び携帯を見る。
「駄目!!」
『なにがー?』
「名前呼び駄目!!」
『なんでさ。もう坂下さんじゃないんだから名前で呼ばないと。社長たちも昔そう言って椿ちゃんって呼ぶってなったんでしょ』
「んー!!それと昴は違うよ!!」
『じゃあもう隼人くんとお揃いの名字なのに旧姓で呼んで良いんだ?』
「んー……で、でもそしたら昴はそのままで良いでしょ!!」
昴くんの考えがわかって苦笑いしてしまう。隼人さんがこうやって言うってわかってたんだ。さすが隼人さんのことをなんでもわかってるんだな。隼人さんには悪いけど前々から昴くんの呼び方をどうしよう、若菜が結婚したら若菜も結城くんになるなって思ってたからいずれは昴くん呼びになるだろうなって思ってたしちょっとこの感じが楽しいから乗ってしまうことにした。
「若菜が結婚したら若菜も結城さんになるよ」
「結婚したらにしたら?」
「いつか変えるなら今お互い変えちゃった方が良いよ」
『隼人くん、それに僕と椿ちゃん隼人くんがもたついてる間も仲良しだったし今日たくさん話してもっと距離が縮まったからせっかくだから名前呼びにしようって話したんだよ』
「なんで!?距離縮めなくて良いよ!!」
「隼人さん、家族だから距離縮めたいよ」
「もー!!じゃあ良いよ!!」
あ、と思った時には遅くて隼人さんが通話を切ってしまった。
「椿の意地悪」
「ごめんね。昴くんと今までより仲良くなれて嬉しかったから」
「なんですんなり……俺には時間かかったのに」
「隼人さんと昴くんは違うからね」




