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「勘違いですれ違った恋」番外編  作者: 柏木紗月
新婚生活スタート
23/62

伝えられる願い

2019年8月14日内容修正しました。


 私たちは雑貨屋さんに行ったりお蕎麦を食べたり傘を買ったりして、今はお茶を買おうとお店に来ている。


「隼人さん、どれが良いで……?」

「うーん……これが1番良かったかな」

「じゃあこれにしま……しょうね」

「そうだね」

「いやーいっぱい種類があって困っちゃい……たね」

「……椿?」

「は……んー?」

「それタメ口できてると思ってる?」

「えっと……やっぱりできてないですか?」

「うん」


 苦笑いされてため息をつく。


「言い直さないで言い切れば言えたことになるかなって思ったんですけど……」

「名前は言えるようになったけど敬語だね」

「んー……難しいで……ね」

「そうだね」


 クスクスと笑ってる隼人さんと一緒にお茶を買ってからお店を出る。だけど先に買ってお店を出てると思ってたお義母さんと優菜さんが見当たらない。


「あれ?おかしい……ね」

「迷子になるなよ……」


 辺りを見渡していると少し先のお店の前でお義母さんが手を振ってるのが見えた。


「隼人さん、い……たよ、あそこ」

「本当だ。無視して向こう行こうか」

「な……意地悪しないで行……こう」


 お義母さんと優菜さんは甘味屋さんにいた。


「やっときたー!!」

「どうせ無視して別の所行こうとしたんでしょ」

「当たり前でしょ」

「もう……美味しそうな甘味屋さんですねー」

「でしょー食べましょうよー」

「もうすぐ親父たち来るじゃん」

「ごちゃごちゃ言ってないで入るよ」


 ムスッとしてる隼人さんを優菜さんが引っ張っていってテーブルにつく。


「美味しそうですねー。白玉あんみつ……ぜんざい……どれが良いですかねー」

「ほんと迷っちゃうわよねー」

「私これにしよ。白玉フルーツクリームあんみつ」

「豪華ねーじゃあ私は白玉あんみつにするわー。椿ちゃんはー?」

「んー抹茶白玉あんみつにします。あ、あのすみません」


 私は店員さんを呼んで甘さ控えめなのはどれですかと聞いて教えてもらう。


「隼人さん、このぜんざいは甘くないそうで……。駄目だったら私が食べる……から食べてみよ」


 私がそう言うと隼人さんは頭を撫でてくれて店員さんに全員分の注文をしてくれた。


「椿ちゃん優しいわねー」

「食べないならお茶でも飲んでればって言うつもりだったのに」

「え?あ、ごめんなさい。隼人さんも一緒に食べれた方が美味しいと思って」

「ありがとう。優菜さんも椿の優しくて清らかな心を見習って心を入れ替えたら?」

「私は十分優しくて清らかな乙女よ」

「どうして浩一さんはこんなのが良いかね……」

「パパは私にゾッコンだから今日も琉依兄と一緒に迎えに来るのよ」

「俺たちに迷惑かけてるから回収しにきてくれるんだよ」

「え、え?浩一さんもなんですか?」

「そうよー知らなかった?」

「知らなかったです」

「まったく、隼人はいつもいろいろ省くのよね」


 それには同意だ。隼人さんは説明不足なことが多すぎる。


「パパは一目惚れだし私もビビってきたのよ。あ、そうだ。高校生の時隼人が酷い言いぐさで話したでしょ。私がパパを騙した「優菜さん、高校生の時のことなんて覚えてるわけないでしょ」」


 少し慌てたように優菜さんの言葉に被せる隼人さん。私は言う。


「本当は騙してなくて、浩一さんはお見合いのつもりで事前に見せてもらった優菜さんの写真を見て一目惚れしたんですよね。でも優菜さんにはもっと素敵な人がいるってお断りしたんですよね」

「そうなの。でも私の努力の結晶親子丼と私の美貌に陥落したの」

「こんなこと言ってるけど優菜オッケーしてもらえてすごく喜んでたのよ。自分から告白したこともなかったから緊張したって」

「自分から告白したことなかったんですね」

「狙ったら向こうから告白してきてたのよ」

「わあ!!さすがです!!」


 優菜さんとお義母さんと話してる間隼人さんを横目で見ると目を見開いていてびっくりしてる。やっぱり私は忘れてたんだ。忘れてると隼人さんは知ってたんだ。知って同じ話をしてくれてたんだ。私があの日気絶したから?忘れていてごめんなさいと取り乱したから他にも忘れていると私に気付かせないようにしてくれてるの?隼人さんは優しすぎる。


「パパは私に秘密にしてたんだけど私は結婚が決まって少ししてからママに聞いてたんだ」

「えっと……そうだったんですね」

「ママ秘密なんてできないからね。秘密なんだってって嬉しそうに話しちゃってさ。秘密って意味わかる?シークレットよって言ったらシークレットは言って良いってことなんだって。おかしいでしょ、うちのママ」

「でも素敵な人なんですよね」

「そうなのよーお義母さんすごく優しくて楽しいのー!!今はアメリカにいるけど4月に戻ってくるのよー」

「そうなんですね」

「あ、そろそろ時間ね。隼人」

「え……なに?」

「ママがいつもあんたに言ってた言葉くらい覚えてるよね?」

「人生は明るく楽しく、一度きりの人生だから楽しむのよ、でしょ」

「ずいぶん聞いてないでしょ」

「あー……本当だ。そういえば聞いてない」

「私たちが椿ちゃんのことをママに話してもう言う必要がないって思ってから言わなくなったのよ。あの言葉はママがずっと自分に言っていた言葉なの。アメリカ人が嫁いでくるなんてない土地に三男だっていっても地主の家に嫁いで誰にも歓迎されなくて。私も琉依兄もいつもパパにママをアメリカに帰してあげてって言ってた。ママは日本には合わないって。パパは首を横に振るばっかり。だけどママはママの努力で周りを変えた。パパはママがみんなに受け入れられるってわかってたのね。1度でもアメリカに帰る選択肢をママにあげたらママが頑張ろうとしてる気持ちを折っちゃうってママが日本を故郷だって思えるまで十分日本で過ごして、それからアメリカへ行ったの。そうだ、ママがしぶしぶアメリカ行きを決めたのがなんでか知らないでしょ」

「知らないけど?」

「パパが私と琉依兄が貯めた預金通帳を見せたからなの。ママをアメリカに帰してあげたくて2人で貯金してたやつ。私たちが結婚する時にパパに止められたからたいした額じゃなかったけど。ママのために貯めてたんだからママのために使ってってパパに渡してたの。そしたら酷いんだから。そのあと自分で貯め続けて移住できるほどじゃないけど毎日高級料理食べるより旅費に充てた方が目的に沿うなんてロマンの欠片もない台詞でママに話したの。手柄横取りな上にカッコ悪いったらありゃしないわ」

「だけどお義母さんすごく嬉しいって琉依さんと優菜に電話してきたのよ」

「知らなかったーシークレットは言うものなのにーって、あとは早口すぎてわからなかったわ。琉依兄も隼人じゃないからよくわからないって言って切ったらしいよ」

「優菜ーそんなことないわよー」

「だいたいそんなもんよ。ああ、話が逸れたわ。それでね、ママは私たちの前ではいつも笑ってて、なにがそんなに楽しいのかわからないけどずっと楽しそうにしてた。人生は明るく楽しく、一度きりの人生だから楽しむんだって。つまんない毎日を淡々と過ごしてるだけの隼人に人生を楽しんでほしいってずっと願ってた。もう大丈夫だって、もう隼人は人生が楽しめるようになったってわかったからもう自分が言わなくても大丈夫だって思ったの。でもママだけじゃない。私たちみんな隼人はもう大丈夫だって思ってる。もう椿ちゃんを離しちゃ駄目だからね。嫌みはたくさん言ってきたけど隼人が楽しく毎日を過ごせるようにってずっと願ってた。またつまらない毎日に逆戻りしたら許さないんだからね。もう心配しすぎて疲れちゃった」

「……マッサージチェア買ってあげる」

「あら、良い親孝行」

「私もー」

「母さんには小学校のテキストをプレゼントするよ。幼稚園が良い?」

「わーい小学校が良いかな。1年生のねー」

「馬鹿馬鹿ばーか」

「親に馬鹿連発するんじゃない」

「痛いってば」


 そして私たちはお店の外でお義父さんと浩一さんと合流した。


「美香ー!!」

「琉依さん!!見てー!!たくさん買ったのー」

「親父早く持って。腕が折れる」

「お疲れ様、隼人」

「パパー私に会いたかったでしょー」

「会いたかった会いたかった。椿ちゃんに迷惑かけなかった?」

「もー!!かけてないわよ!!」

「椿ちゃん2人の相手してくれてありがとう」

「どういう意味よー」

「そうよそうよー!!浩一さんが隼人みたいに意地悪になったわー」

「まあまあ。たくさん隼人との時間を邪魔しちゃったみたいでごめんね」

「い、いえ。そんなことないですよ」

「そんなことあるよ。大迷惑だった。さっさと回収してとっとと帰って」

「えー?みんなでご飯はー?」

「俺は椿のご飯が食べたいの。母さんと優菜さんに疲れた身体を椿と椿の手料理と酒で労らないと。ね、ね?椿も良いでしょ。手伝うから」

「は、う、うん」

「残念だけどまた今度にしよう。じゃあね隼人、椿ちゃん」

「気をつけて」

「思う存分イチャイチャしたら良いわよー」

「バイバーイ」


 手を振ってそれぞれ車に向かう。


「ねえ、椿」

「どうしたん……の?」

「手繋いで良い?」

「え?」

「外で手は繋いで良いって言ったけど母さんたちがいると恥ずかしいかなって思って」

「そっか……。良い……よ」


 そう言うと温かくて大きな手が私の手をギュッと握る。そのまま駐車場について車に乗る。


「さっきの覚えてた?」

「えっと……」


 私はこくりと頷く。


「そっか。……ありがとう」


 そう呟くと頭を撫でて頬をそっとなぞった。


「帰ったら話をしよっか」

「は……うん」




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