傷
ー黒守邸ー
部屋に飾られた一本の薔薇。一枚の花びらががひらひらと舞い落ちた。
それを眺め黒守は、不気味な笑みを浮かべた。
*
轟々と炎が立ち上る。
突如、通り魔集団の真横でトラックが爆発したのだ。
なんだ?何が起こった?
全くわからない。
だが、爆発の勢い、範囲からして、確実に誰一人生き残ってはいないだろうと推測できる
それも俺が、殺すと誓った途端。
偶然か…?それとも…
サイレンの音が少し離れたところから聞こえる。
「取り敢えず、ここを離れよう。」
この場に残っても、大したメリットはない。
「立てるか?」
ヤマが俺に手を差し伸べる。
腕は少々ボロボロだが、足にはそれほどダメージは無い。
礼を述べ、ヤマの手を借りる。
委員長は目立った傷は無いようで、すでに自力で立ち上がっていた。
「どうしたのあんたたちっ!?」
傷の手当のために家に二人を連れて行くと、まこねぇが素っ頓狂な声をあげた。
「転んだ。」
「転んだ。」
俺とヤマの言い訳が打ち合わせも無しにシンクロしたので、どうやらまこねぇは信じたらしい(ヤマの頬の腫れはその言い訳では多少無理があった気がするが)。
「あなたは大丈夫?」
「ええ、私は大丈夫です。救急箱か何かありますか?」
「あら、手当なら私がするから大丈夫よ。」
「私も手伝います」
「そう?じゃあ炯人の腕、なんとかしてやって頂戴。元山君は私がやるわ。」
委員長は慣れた手つきで手当てを始めた。
蹴られてついた土を拭い、沢山の細かい擦り傷に丁寧に消毒液を塗っていく。
傷が沁みて顔を歪めると
「大丈夫?」
と委員長がたずねてきた。
至近距離でそんなことを言われると流石に照れる。
「シッシッシッー痛えッ!!」
笑っていたヤマだが、腫れ上がった頬に消毒が沁みたらしい。
以前の俺なら、屈託なくその光景に笑えただろう。しかしどうにも今の俺の笑顔には、何かが影を落としている気がして、胸が締め付けられた。




