第八話 白衣の一滴
いきなり目の前に現れた白衣の青年は、ホシよりも若く見えるのに、全然親近感が湧かない。
むしろ不気味。だってずっと口角が上がって笑顔なのに、目だけは私を観察するように鋭い。
「へぇ……外傷なし。栄養状態も基準値内。健康状態も良好そうだし、年も若い──想定より保存状態がいいね」
「──はあ?」
「声かけに対する反応速度もいいし……うん、正常だね」
いきなり人を謎の基準で評価されて、良い気分にはならない。ムカつく生徒指導の先生を思い出して、私は口を尖らせた。
そんなことすら、白衣の青年は面白そうに笑った。
「あはは、何か気に障ったかな? でもボクの中では君、すごく良い状態なんだよね」
まったく悪びれないし謝りもしない。
こういうやつ、ムカつくから嫌い。
「だからさ、君、弐番隊に来ない?」
わかりやすい上っ面の笑みを貼りつけたまま手を差し伸べられたけど、私は何も言わずに後退りした。
「そこまでだ、ギーク」
狭い甲板に逃げ場がないと思っていたら、ワズさんとホシが来てくれた。
しかも上から私と白衣の青年の間に割り込むように、音も無く着地してくれて、私は思わずホシの背中に隠れた。
「ありゃ。ワズに副隊長くんまで……来るの早いじゃん」
「弐番隊が何しに来た」
「何って──ただ挨拶しにきただけだよ? 壱番隊で人間を保護したなんて五百年ぶりだもん。どんな状態か気になっただけだよ」
「……いらんことを言ってないだろうな」
「言われて困ることって何かある?」
ワズさんがギークと呼ぶ白衣の青年と話している間に、ホシはさりげなく私を背中に隠したまま、ドアの方へ押してくれた。
そのまま中へ入ろうとしたけど、また明るい声が私の肩を掴んだ。
「あっ、そうそう──弐番隊にも人間がいるんだけど、会いたくない?」
その言葉に、思わず振り返りそうになった私の肩を、ホシが強く掴んで強引に中へ押し込まれた。
「ギーク!!!」
「あは──またね〜、人間ちゃん」
ドアが閉まるまでの合間に、ワズさんの怒号と、それを全く気にしていない笑い声が、私の後ろ髪を引いた。
「……ホシ、あの白衣の人って……」
「……弐番隊隊長の、ギークというアルマ」
「あれが弐番隊の……隊長……」
今まで嫌な印象しか聞かなかった弐番隊。
実際に隊長のギークに会って、本当に嫌なやつだと思った。
そう、思ったのに。
他の人間が弐番隊にいる。
それだけの言葉で、私の中で弐番隊に対する気持ちが、複雑に回りはじめた。




