第七話 闖入者現る
正直、この壱番隊に来るまで土を触るのは好きじゃなかった。
虫がいるし、手が汚れるし、爪の間に詰まるし。
でも今は、そんなに嫌いじゃない。
もちろん土いじりがそこまで好きになったわけじゃないけど、ここで花の世話をしたり、土を触っている間は何も余計なことを考えなくて済むから。
それに温室管理しているアルマと雑談ができる。
それが一番、土に触れるようになった理由かもしれない。
「この壱番隊以外の隊って、どんな感じなの?」
今日はホースで広い花壇に水をまく簡単な作業だけ。
だから私は後ろでバケツの中で肥料をこねているアルマに、言葉だけ投げかけた。
「うーん……簡単に言うと、やってることは同じだけど、やり方が全部違うってことかな」
お互いに手を止めず、背を向け合ったまま、温室の日差しは温かかい。
「やり方……?」
「そ。壱番隊はミサキも知ってる通りだけど、他ではまず移動都市の造りが違うんだ。その隊の隊長のやり方に合わせた造りにしているから、見た目が全然違ってわかりやすい」
「ふぅーん……壱番隊は要塞みたいだもんね」
青い花に水が当たって、頷くように揺れた。
「うちは守りが売りだからね! 服装もみんな軍服なのも、それを現してるからさ」
「え? 隊によって服装も違うの?」
「違う違う。特に弐番隊はね……隊長の白衣がいかにも弐番隊らしくてわかりやすいよ」
「……へぇ、そうなんだ」
他愛もない会話をしながら作業を終える頃には、すっかり温室の中で体が火照ってしまった。
中庭の風通しは悪くないけど、やっぱり動くと温室の中は熱い。
でも汗ばんだ首元に風が欲しくて、私は甲板に出ることにした。
甲板といっても、船のような広い場所ではなく、小さなバルコニーのような所で、温室の反対通路にあるちょっとしたもの。
それでも外の景色としては瓦礫の山しか見えないから、なんとも言えない気持ちにはなる。
本当に独りなんだと思い知るし、あまり長居はしたくない。
けど、ここが一番風通しが良いから涼むには最高なんだよね。
「はあ……やっぱシャワー浴びた方が良かったかな……」
作業後に手を洗ったけど、爪の間に入りこんだ土を見つけて、思わずため息をつく。
この場所にいると気持ちが後ろ向きになるから、やっぱり来るんじゃなかったかな。
親指で中指の爪をいじっていると、鉄パイプの柵に軽い振動を感じた。
「やあ、初めまして──人間ちゃん」
聞き慣れない声に顔を上げると、見知らぬ白衣の青年が、私を観察するような目で笑っていた。




