第四十二話 漏電を捉える
最初の違和感は、肆番隊に来る前からあった。
ミサキが肆番隊副隊長と名乗るレイナという少女と手を繋いだ時も。
スロープを歩く時も。
肆番隊隊長は、ずっとミサキとレイナを観ていた。何も言わずに。底の見えない眼で。
『異変があれば首根っこ掴んででもミサキを連れて戻ってこい』
隊長からの指示を、僕は守れそうにない。
アレを見てしまったから。
ミサキの手が離れたのは理解している。追うべきだということも、わかっている。
でも、僕は目を離さずにはいられなかった。
肆番隊隊長が何を思ってあんなことをしたのか。何故、副隊長をアルマではなく人間にさせているのか。
僕は、壱番隊の副隊長として、記録する義務がある。
ミサキには悪いけど、同じアルマとしてアレは看過できない。
『隊長──今から視覚共有します』
こめかみに手を当てながら、許可の有無を無視して一方的に送った。
それを、隊長に咎められることはなかった。
『ホシ、視覚共有したままでいい。ミサキの護衛よりも自己防衛を優先しろ』
『……承知しました』
『メストは近くにいないんだな?』
『いません。僕たちが肆番隊に入ってから姿をくらましました』
『……油断だけはするな。対象が肆番隊内部だけとは限らない』
『はい──承知しています』
僕はこめかみから手を離して、左眼だけアレにズームした。
「……アレが末路だなんて思いたくないな」
ネオン街の真ん中の、一番大きな看板。
そこでうさぎの着ぐるみの頭を被せられて、機械的に手を振る。
それは頭部が隠されていても、片眼が無くても、首から下の制服姿ですぐにわかった。
半年前まで肆番隊の副隊長だったアルマだ。
『視神経の反応なし──おそらく人格回路のみシャットダウンされ、指示通りの動きを繰り返しているものと思われます』
隊長は返事こそしなかった。
けれど、おそらく僕と同じ気持ちだろう。
頭が痛いってやつだ。




