第三十九話 肆番隊の移動都市
さすがの私も、壱番隊と肆番隊の移動都市を繋ぐスロープの上を駆け抜けることは、できなかった。
単純に、怖い。
レイナは我が物顔でスキップしたり、前を歩くメストと、後ろでホシの腕を掴みながら慎重に歩く私の間をちょろちょろと行ったり来たり。
怖くないのかと聞いたら、即答された。
「だってあたし、肆番隊の副隊長だもん! スロープから落っこちるわけないじゃん」
謎の自信に満ちた笑顔には、どこにも落ちる心配の色はなかった。
私は思わずホシに、聞かなきゃいいのに高さはどれくらいあるのかを聞いてしまった。
「えっと──一応わかりやすく言うと、ビル十二階くらいの高さだよ」
「十二階……っ!?」
なるほど足が震えるわけだ。というより、よく歩けてると自分を自分で褒めたい。
こんな壁もないスロープの上を歩くなんて、下が見えてなくても本能的に怖い。
ホシの腕をさらに強く掴む私を、レイナは面白そうに笑い飛ばした。
「あはは! ミサキ、あたしも手を握っててあげよっか?」
「う──うん、お願い」
一瞬だけ、私は躊躇った。
でも、左手はホシの腕を掴んで、右手はレイナの手をしっかりと握った。
こうしたら、万が一があってもホシが私とレイナの二人を助けてくれるって思ったから。
メストは後ろを見ないで歩いてるし。レイナは楽しそうに笑うばかりだから。
私が笑われるくらいで安全が保証できるなら、これくらいなんてことはない。
だって、レイナは私より歳下なんだもん。
「ほら着いた! ようこそ肆番隊へ!」
スロープの先に広がっていたのは、まるで砂漠に湧いたオアシスみたいな都市。
ネオン街が、ひしめく電光で昼でも眩しいくらい賑やかな移動都市だった。
でも、陽気な音楽が流れている通りに人はまばらで、かつての原宿のような賑わいもない。
「ねぇレイナ、肆番隊には何人の人がいるの?」
「んーとね……今は三十人くらいかな。なんかおじさんおばさんばっかだから、同い年は五人もいないんだよね」
「そう……なんだ」
「だからこっちの繁華街の裏はカジノとかパチンコとかあるんだけど、そっちに人が多い感じ。大人って賭け事好きだよね」
「全員が全員そうじゃないと思うけど……?」
「そう? そんなことより、プリクラ撮りに行こ!」
レイナが急に手を引いて、私は思わずホシから手を離した。
なんだかそれがいけないことのように感じて、一歩踏み出したところで私は振り返った。
でも、ホシは私じゃなくて違う方向を睨んでいた。
ホシが私の方を見ていないことに、なぜだろう。少しだけ胸にちくりと痛みが走った気がした。




