第三十八話 碧眼と浮き魚
私は少し悩んだ。言葉を選ぼうと唇が震えるたびに、ショウコの泣き顔が頭に浮かぶ。
そして私は、レイナの手を握り返して笑うことにした。
「うん──あの子は、弐番隊も合わなかったみたい」
「ふーん……そっかぁ……」
レイナは握った手を左右に揺らしながら、口を尖らせた。
こうして見ると子供らしいなあ、と思うけど、レイナは副隊長という肩書きを人間なのに背負ってる。全然そういう風には見えないけど。
レイナに合わせて腕を左右に揺らしてあげてると、首筋に冷気を感じた。
「──っ!?」
無意識に振り向いたら、無機質なメストの青い眼と目があってしまった。
何を考えているのかわからないそれから、私はすぐに目を逸らした。
ギークとは違う。けど、壱番隊や弐番隊では向けられたことのない感じ。
嫌な冷や汗がじわりと背中を流れる。
けど、ホシが視線を切るように、私とメストの間に立ってくれた。
「そうだ! せっかくだからミサキ、肆番隊に遊びに来なよ!」
急にレイナは顔を上げて、私の腕を引っ張った。
「え──?」
「ショウコのこと聞くために会いに来たんだけど、スロープ渡したし、せっかくだから遊んでいきなよ!」
戸惑う私のことなどおかまいなしに、レイナはスロープの向こうへ引っ張ってくる。
勢いで数歩、足が前に出たところで、穏やかかつ静かな声がレイナの足を止めた。
「レイナ──他隊の人間を連れてくるなら、本人の意思とその隊長に確認を取るべきです」
「む〜。目の前にいるんだから、メストが確認してよ! 隊長でしょ!?」
「──だ、そうです。ワズ、どうしますか?」
「俺はミサキの意思を尊重する──だが肆番隊にミサキが行くならホシを護衛につけさせる」
「監視のつもりでしょうか?」
「肆番隊の内情視察も兼ねるつもりだ。お前の腹の中はよくわからないからな」
「? 同じ構造ですよ」
「そういう意味じゃないんだがな……」
メストとワズさんが話している間に、レイナは私の腕をグイッと引っ張って、コソッと耳打ちした。
「ミサキ、肆番隊にはプリクラ機あるから一緒に撮ろうよ」
「──え!?」
「えへへ、驚いた? 肆番隊は他の隊と違って遊ぶ場所がいっぱいあるんだよ」
「でも、プリクラなんて……!」
「他にもゲーセンとか可愛いカフェもあるし、カラオケも狭いけどオシャレなの作ったんだ! いつも同じメンバーとだとつまんないから、ミサキと撮りたいな! ね? いいでしょ?」
レイナの遊びの誘いに、私は目が眩んだ。
隣に立っているホシのため息を、聞こえないフリするくらいに。




