第三十四話 青天の霹靂
壱番隊のみんなの筋肉痛は、修理室でクールダウン処置をしたらすぐ直ったみたい。
修理室から出て数時間したらロボットダンスのようなぎこちない動きは消えていた。
「ホシは筋肉痛になってないの?」
「僕? 片腕だけだから支障は無いよ」
「……なってるんじゃん」
食堂でサイダーを飲んでる私に付き合って座ってないで、ホシも修理室に行かなきゃじゃん。
なんて思っていたら、先にホシが笑った。
「まだ今は他のみんなで修理室が混んでるから、僕は後で行くよ」
「……私ってそんなにわかりやすい?」
顔に出ていたのかな。頬をむにっと指先で持ち上げても、自分の表情なんて鏡がなきゃわからない。
「ミサキはわりと顔に出やすいかな。でも悪い意味じゃないよ」
「……そう」
サイダーを飲みながら、少しだけ頬を膨らませた。
嫌な気分じゃないけど見透かされた感じはなんか悔しい。
私はふと気になったことを口にした。
「……そういえば、ホシは肆番隊ってどんなところか知ってる?」
弐番隊で出会った女の子の事を思い出して、単純な興味だけで聞いただけ。
それなのに、ホシは少し悩ましそうに眉を下げた。
「肆番隊は──なんというか……メスト隊長は真面目すぎるアルマなんだけど、移動都市自体は人間の文化を尊重した造りになってるんだよね」
「へぇ……副隊長はどんなアルマなの?」
「それは……」
ホシは副隊長の話になった途端、あからさまに口を閉ざした。
「──ミサキ」
首を傾げる私の後ろから、ワズさんに声をかけられた。
「? どうかしましたか?」
「肆番隊の副隊長がミサキに会いたいそうだ──先ほど連絡が来た」
ずいぶんとタイムリーな話。しかも向こうから私に会いたいなんて、タイミング良すぎない?
私はワズさんにも同じことを聞いてみた。
「肆番隊の副隊長ってどんなアルマなんですか?」
ワズさんは一瞬だけ顔を顰めた後、重い口を開けてくれた。
「肆番隊の今の副隊長は、人間だ」
「──へ?」
予想外の返しに、私はマヌケな裏声が出てしまった。
「人間が……副隊長!? だってアルマが人間の保護活動してるんでしょ!? なんで人間が副隊長に……!?」
「ミサキ、落ち着いて……!」
「だって……!」
ホシになだめられてる間に、ワズさんは私の向かい側の席に座った。
「肆番隊の副隊長が人間に代わったのは半年前からだ。だから俺たちも、ヒスリエさえまだ実際に会ったことはない」
「半年前って──最近じゃないですか!」
「……俺たちにとっては、な」
「だから僕たちも肆番隊の副隊長がどんな人かはわからない──けど、肆番隊の隊長は……何を考えているのかも、わからないんだ」
「あいつもギーク以上にわからんやつだからな」
ホシとワズさんは二人して視線を斜め下に落とした。
本当にわかってないんだろうな。肆番隊の副隊長のことを。
「えっと……じゃあ肆番隊って、どんな隊なんですか?」
私は少しでも安心材料が欲しくて聞いただけなのに、返ってきたのは期待していたものとは違った。
「弐番隊よりはマシだな」
「……ノーコメントで」
ワズさんは両腕を組んできっぱり言ったけど、ホシは両手を膝に乗せて視線をそらした。
あれ、本当に弐番隊よりマシなのか怖いんだけど。
「えぇ……怖いんですけど」
「護衛にホシをつける。肆番隊隊長のメストはギークよりも温厚なやつだから問題ないはずだ」
「もう会うこと前提なんですね……」
「肆番隊の移動都市がこちらに向かってきているからな。ミサキが嫌なら逃げるが……どうする?」
会ってみないとわからない肆番隊の副隊長の人に、ワズさんとホシが微妙な顔をする肆番隊。
弐番隊で会った女の子の事も気になるし、これはきっと神様が会えって言ってるのかもしれない。
「……私、肆番隊の副隊長さんに会ってみたいです」
私は自分の好奇心を抑えられなかった。




