第三十三話 遠き雷鼓
今回の壱番隊の被害は、最小限だった。
少なくとも、俺はそう判断する。
弐番隊の障壁の破壊に最大出力を出した隊員たちを除いて、交戦した隊員たちの損傷は軽度なものだった。と言っても全員、神経回路のオーバーヒートというのだから締まりがない。
「はぁ……」
各隊との共有データベースに提出するデータを確認して、頭が痛い。
決して思考回路の問題ではない。
だが、今回はホシが行動不能状態まで損傷しなかったことは、壱番隊としての面子は保たれたといえるだろう。
「イリスには鼻で笑われるだろうな」
各隊の共有データベースには、もうギークの名前は無い。
その経緯をヒスリエがまとめたデータに、俺は壱番隊としての補足としてデータを提出した。
製造初期からずっと五人で共有していたデータベースは、四人になってしまった。
支障はないはずなのに、その空席と見慣れない四人となったデータベースの並びに、違和感を覚える。
「……いなくなったんだな」
改めて一つの隊が無くなったことを実感させられる。
よりにもよって一番共有データベース上でも五月蝿い奴がいなくなったことで、その穴は大きく感じてしまう。
おそらくこれが、寂しい、というものだろう。
『え〜? みんな共有データ少なくない? もっと共有していこうよ』
いなくなったはずなのに、あいつの小生意気な声だけは、まだしばらく再生されそうだ。
そう思うと、少しだけ感傷よりも鬱陶しさが勝る。不思議なものだな、感情というものは。
ふっと笑いながらこめかみから手を離そうとした瞬間、滑り込むように個人連絡が入ってきた。
「……メストか」
それは肆番隊隊長のメストからの、ミサキを肆番隊副隊長に会わせたいという伺いの連絡だった。




