第二十七話 異種異質でも
泣いてスッキリするなんて、そんな単純な人間だったら、どれだけ良かったか。
私は涙が落ち着いても、気持ちはぐちゃぐちゃのままだった。
「ミサキ、弐番隊で手を縛られたとか……五感を塞がれたりしなかったかい?」
「うぅん……されてない」
医務室の先生に話をする間も、ホシは私の背中をさすってくれた。
「感覚遮断無し、怪我も無い……幸いだな」
「……先生」
「どうした?」
「先生の袖の下──見せてもらっていい?」
「? 別にいいが……なにか気になるのかい?」
先生は白衣の袖を捲って、私に右腕の肘までを見せてくれた。
私と同じ肌色。でも毛穴とか腕毛はなくて、手首や肘の関節部分には淡い色の、小さなボタンみたいな輪っかが光っている。
やっぱり人間じゃないんだって、ぼんやりと思いながら、私は視線を後ろのホシに移した。
「……ホシのも見せてもらっていい?」
「え? いいけど……」
ホシも困惑しながら軍服の袖を捲ってくれた。
壱番隊のみんなって、本当に優しいな。
先生とホシは体格差はあるけど、やっぱり同じ肌色で、手首と肘に輪っかのライトが光っていた。
「触ってみてもいい?」
「いいけど……どうしたの?」
「うん……ちょっと、ね……」
ホシの腕はやっぱりシリコンみたいな感触だった。でも、つるりとしていない。
触れば手に抵抗がある。けど、ざらついてるわけじゃない。人工的だけど、人間の肌っぽい感じ。
「……やっぱ、違うなぁ……」
ギークやロゴロの事を思い出して、自然と頭が重くなる。
視線も下へと落ちてしまう。
「ミサキ、しばらく伍番隊で療養することもできるが──どうしたい?」
「……療養?」
先生は袖を戻しながら、私にちゃんと説明してくれた。
「伍番隊は療養に特化している。だから一時的に伍番隊で休んで、また壱番隊に戻ることもできるんだ。弐番隊と違って、伍番隊はそういった事はきちんと約束してくれるし、人間の尊厳を尊重してくれる」
「……伍番隊……」
ヒスリエに言われたことを思い出した。
療養に特化した隊。
五百年前にサユリという人間が伍番隊に療養したまま、壱番隊には帰って来れなかった。
「周りの事は気にしないでいい。ミサキが行きたいと思った方が、今のミサキの最善だよ」
ホシも背中を押してくれる。けど、今の私にとっての最善は、多分みんなが思ってるところじゃない。
「……先生、ホシ……私、壱番隊にいたい」
今の私がいたいのは、壱番隊。
確かに弐番隊で怖い思いはした。でも、それで伍番隊に療養に行っても、きっと私は休まらない気がする。
今の私に必要なのは壱番隊のみんなとの生活だから。
「私、壱番隊のみんなと暮らしていきたい」
「ミサキ……」
例え人間が私しかいないとしても、アルマと人間が違う存在だとしても。
壱番隊のみんなは、私のことを家族のように大切にしてくれるって、知ってるから。




