第二十六話 帰還
弐番隊から壱番隊へ戻る時に、私は改めてこの移動都市の高さに足がすくんだ。
下が見えないなんてもんじゃない。落ちたら絶対に怪我じゃ済まない高さ。
ちらりと伍番隊の移動都市へ移動している人たちを見ると、この強風が吹き荒ぶ中、スロープを歩かされている。
手すりがあるって言っても、吹き飛ばされないか怖い。私なら絶対に足が前へ出ない。
「……私もスロープですか?」
恐る恐るワズさんに確認したら、ジッと見られた。
そして何かに納得したかのように頷いた。
「ホシ──抱えてやれ」
「はい!」
「──へ?」
気がつけばホシにお姫様抱っこされて、私は思わずホシの首に両腕を回した。
急なことに驚いたのもあるけど、なんか恥ずかしくてホシの方を見れないから。
「あの、えっと……これは、どういう……!?」
「ミサキ一人を壱番隊に帰すのにスロープをわざわざ用意するには時間がかかるから、省略だよ。このまま僕にしがみついててね?」
「つまりこのまま跳ぶってこと!?」
「隊長が最初に保護した時は地上からだったけど、今回は同じ高さだからそこまで高くは跳ばないよ」
それでも跳ぶことに変わりはないわけで。
私はしっかりとホシにしがみついた。
ギークの時みたいに気がついたら跳んでたとかじゃなくて、今みたいにやるぞって助走があるのも別の感覚で怖い。
バンジージャンプを自分のタイミングでいけない怖さに近いかも。
「じゃ──行くよ?」
「〜っ!!」
声にならない悲鳴は、我慢できなかった。
「弐番隊は稼働停止したのもあって風避けのシステムが機能してなかったけど、壱番隊に戻ったから──もう大丈夫だよ」
ほんの数秒の浮遊感の後に、私はホシに壱番隊の甲板の上に下ろされた。
ホシの言う通り、壱番隊の移動都市に入った瞬間から強風はそよ風におさまっていた。
久しぶりに硬い鉄の甲板に足がついた時、コツンとした音に涙が出そうになった。
帰ってこれた。そう実感するのは、少し前まで柔らかい床を踏んでいたからかもしれない。
「ミサキ、医務室に行こう」
「──うん」
涙を手の甲で拭いながら、私はホシの手を握った。
柔らかくて、冷たくない。
ロゴロの防護服越しの手と違って、ホシの手は、ちゃんと私の手を握り返してくれた。
「大丈夫。僕が側にいるよ」
「うん──うん!」
「ほら、ちゃんと前見て歩こう?」
「……無理ぃ」
涙で視界が滲む中、私はホシの手に引かれて医務室まで歩いた。
ちゃんと知ってる通路。見慣れた場所を見るだけで涙が止まらなくなりそう。
「おかえり、ミサキ」
医務室で先生に優しく迎え入れられて、私の涙腺は決壊した。




