第二十五話 ロゴロの背中
弐番隊の解体、正しくは稼働停止処理は、わたくしが想定していた時間よりもスムーズに進みました。
というのも、弐番隊のアルマは皆、誰も伍番隊への移籍を望まず、反論も異論もなく受け入れたのです。
保護されていた人間たちだけは、人類が滅亡しているという事実を知らされずにいたせいで、多少の混乱は生まれました。
ですが、それは伍番隊で保護する上では些細な事です。必要なケアと説明をするのは、伍番隊の十八番ですから。
それよりも問題なのは、弐番隊副隊長ロゴロの立場です。
「弐番隊が実質無くなりますが、貴方は希望する役職はありますか?」
ただのロゴロという名のアルマに声をかける。
伍番隊に移送される人間の誘導を手伝いながら、彼は人間たちが戸惑う様子を見ながら口をつぐみました。
伍番隊と弐番隊の移動都市を繋ぐための長いスロープは、手すりが付いていても強風が吹き抜ける。
高さがあるので仕方ありません。アルマであれば支障はありませんが、人間は軽いので踏ん張りが足りないこともあります。
そんな風に煽られてバランスを崩す人間を、肩を掴んで支えながら、ロゴロはポツリと零すようにわたくしに教えてくれました。
「……弐番隊から伍番隊へ移送された人間たちの生活を支えられるのなら……なんでもやります」
それは贖罪の色を帯びているようで、わたくしは静かに頷き、承諾しました。
伍番隊に移籍しても副隊長の座には就かず、ただのアルマとしての在り方を見失っていない。
わたくしは、ロゴロに管理長の権限を譲渡することにしました。
元は伍番隊副隊長ディラの仕事のひとつでしたが、彼女の負荷を減らす良い機会でしょう。
「ロゴロ──貴方は人間の生活を管理支援する管理長の役職に就いていただきます」
「……ポッと出の自分が伍番隊でそんな管理職に就いたら、伍番隊副隊長が怒りませんか?」
「わたくしが決めたことです。覆させはしません──決定事項です」
「そうですか……伍番隊隊長が言うのであれば、自分は従うだけです……自分はもう弐番隊副隊長ではないので」
弐番隊の移動都市は稼働停止させた上で、全てのデータは伍番隊及び各隊に共有。
そして弐番隊アルマは、ギーク及びロゴロ以外の全員が、解体を希望。
故に人間保護データを全てロゴロに譲渡し、活動停止処理を施した上で弐番隊の移動都市に残留させるものとする。
「……副隊長が他隊に移籍だなんて、自分が初めてですかね」
「ええ。そうなります──初めての前例となるでしょう」
「……いつかはこうなると思っていました」
ロゴロの皮肉めいた乾いた笑いは、わたくしからの返事を必要としていない。
弐番隊アルマとのデータ譲渡をしているロゴロの背中は、別れを惜しむというには乾いており、贖罪を背負わされるには重さに耐えられるのか不安が過ぎる。
そんな風に、わたくしには見えてしまったのです。




