第二十三話 告発者
五百年前の弐番隊は、今と違って、地獄だった。
自分は、ただ隊長に従ったに過ぎない。他のアルマたちもそうだ。
だが、それが一番の大罪だということを、弐番隊のアルマ全員が、理解している。
「弐番隊副隊長ロゴロですね。ギークの意識はまだ回復しませんか?」
隊長の部屋で、拘束具で四肢を固定された隊長は、依然としてシャットダウンしたままだ。
伍番隊隊長の言いたいことはわかる。
弐番隊からの今回の詳細を聞きたいのだろう。
「しばらくかかるかと思われます──必要であれば、自分が共有データベースに載せますが……」
自分視点の隊長との会話や、あの壱番隊の人間との会話のデータログは提出済みだが、過去のデータはまだ未提出だ。
しかし、伍番隊隊長は首を横に振った。
「いいえ──それよりも貴方には確認しなければならないことがあります」
「……自分に、ですか」
実質隊長不在の今、副隊長の自分に確認など、なにがあるというのか。
伍番隊隊長は、静かに、はっきりとした声で、自分の目を見つめた。
「はい。五百年前の締結の後、今日に至るまで、弐番隊が各隊の共有データベースに提出したデータに、改竄は無かったと言い切れますか?」
「──っ!?」
自分は予想外の質問に、動揺を隠せなかった。
伍番隊にバレるような安易な事はしていないはずだ。あの隊長が改竄して、自分も確認して二重チェックをしていた。
それが疑われることなど、ある筈がないのに。
「……その様子では、やはり──」
自分は諦めて、静かにこめかみに手を当てた。
各隊の共有データベースにアクセス権限は自分には無いので、伍番隊隊長に個別に共有することしかできない。
それでも、自分は自白した。
『五百年前から現在に至るまでの、正式な人間の死亡者数。及び、観測の為に行った実験内容の詳細について』
弐番隊が地獄だった頃の闇を、自分は、全て伍番隊隊長にデータを提出した。
それによって弐番隊がどうなるかわかった上で。
「……これが、全てですか?」
「……そうです。自分は、自分たちは……隊長を恐れて、止めることも、何もできませんでした──同罪です」
「……わかりました」
伍番隊隊長の声は冷ややかで、それでいて落ち着いていた。
「弐番隊副隊長ロゴロ、貴方は現時点で告発者として伍番隊で保護します」
「……他の隊員は、どうなりますか」
「望むのであれば伍番隊へ移籍させます。拒むのならば、解体の対象とみなします」
「……隊長は?」
「意識が戻り次第、話は聞きますが……弐番隊の解体は決定事項とします。これだけは覆りません。ギークも、解体対象とみなします」
話を聞くのは、形式だけというわけか。
いかにも伍番隊隊長らしい。
自分は防護服の頭部を脱いで、ため息を吐いた。
いつも通りのため息なのに、防護服が無いとそれはそれは大きなため息なのだと、今更気付かされて、自分は肩を落とした。




