第二十二話 証言
ヒスリエの質問に、私は二択で答えられなかった。
だって、はいって言えるし、いいえとも言える。どっちもどっちなくらい、回答に困る。
「……はいかいいえで言わなきゃ、ダメですか?」
恐る恐るヒスリエを見上げる。
するとヒスリエはゆっくりと首を横に振った。
「いいえ──貴女の言葉で、話すべきと判断したことをそのまま述べて構いません」
「……じゃあ、弐番隊に連れてこられた経緯から、話させてください」
「構いません」
私はホシの服の袖を握りしめたまま、ちゃんと全部、正直に話した。
ギークの誘いに迷ったことも、一時間の見学に一人で行かないと言ったことも、帰りたいと言ったら他の人間と話をさせてくれるって言われたことも、肆番隊から連れてこられた女の子のことも、ロゴロが守ってくれたことも。
全部、ちゃんと話した。
それを、ワズさんもホシも、ヒスリエも三人とも黙って聞いてくれた。
「──だから、私が悪かったところもあるし、ギークが悪かったところも、どっちもあります……」
「……なるほど」
ヒスリエは静かに頷き、ワズさんに視線を移した。
「ワズ──貴方はどう考えていますか?」
「……いつものギークの思考回路と同じだ。他者の意思を自分の論理の中に取り込む──五百年前よりも厄介なロジックになっただけだ」
「……なるほど」
続いてホシに視線が向けられる。
もはや何も言われずとも、ホシは頷いた。
「既に共有済みの僕視点のデータの通りです──ミサキは泣いていました」
「……確認済みです」
「僕からは追加のデータ提出はありません」
「わかりました」
最後に、ヒスリエは私に視線を落とした。
「これからわたくしは弐番隊に話を聞きに行きます。その前に、貴女に確認しなければならないことがあります」
「……なんですか?」
「伍番隊は療養に特化した施設です。貴女が望むのであれば、伍番隊へ移籍することが可能です」
「……伍番隊に? 私が?」
「ええ。貴女が望むのであれば、わたくしは迎え入れます。ですが強要はしません。わたくしが確認した限り、貴女には選択権があります。なので、答えは後でまたお聞かせください」
そう言って、ヒスリエは純白のローブを翻して、またヒールをカツン、カツン、と鳴らして歩いて行ってしまった。
「後は弐番隊の副隊長がヒスリエとちゃんと話すか、だな……」
「……あの副隊長なら大丈夫だと思いますよ」
「お前が共有データベースに載せた映像を見る限りはな……だがヒスリエがどういう判決を下すのかはまだわからん」
ヒスリエが去ったのを確認してから、ワズさんはこめかみに手を当てた。
「しばらくは待機だが、ミサキは先に壱番隊の医療室で手当てしてもらえ」
「え……私……帰って、いいんですか?」
「もちろん! ミサキは壱番隊で生活してるんだし、帰るのは当然だよ」
「……良いんだ……帰れる、んだ……!」
「ミサキ……?」
私は堰を切ったように、子供のように泣いた。
ホシは困ったようにオロオロしていた。けど、私の背中をさする手は優しくて、とても温かかった。




