第十九話 疾る電雷
弐番隊の隊長と対峙するのは、これが初めてではない。
五百年前にも、ここで対立したことがある。
その時はもう既に僕は出遅れていて、壱番隊に人間を連れ帰ることはできなかった。
更に弐番隊の隊長に足蹴にされ、神経回路の修復に数日かかった。屈辱だった。
でも、今は違う。
目の前に不適に立つ弐番隊の隊長は、五百年前と同じ状況だと笑っている。
しかしそれは彼の油断と傲慢だ。
壱番隊は五百年前から変わり、僕もまたあの頃とは違う。
今度は他隊の隊長相手だろうと躊躇しない。
「以前と同じように、先手は譲ってあげるよ」
まるでゲームを楽しむかのように軽い口振りに、僕は何も言わずに四肢の神経回路の出力を上げた。
内部の張り巡らされた回路が焼けるような熱さを感じる。
これをミサキに説明するなら、多分、血がたぎるって状態だ。
「……ワズも君も、懲りないね」
「それはこちらのセリフです」
やれやれと肩をすくめる弐番隊の隊長に挨拶代わりに顎を狙う。
高音で稼働するモーターが、僕の一歩を大きく、素早くさせてくれる。
その速さに力を乗せて、拳を振り抜く。
「はいはい、ワンパターン」
拳が同じくらい強い脚力に弾かれる。反動で突っ込んだ勢いが消され、数歩後退させられる。
対して向こうはくるりと体を回転させて、挑発的に口角を上げたまま。
僕はすかさず回転の終わりを狙って、踏み込んだ。上半身を捻って、さっきよりも拳に力を乗せる。
狙うは神経回路が集約しているこめかみ部分。
「学習しないなあ」
「──っ!」
体の回転途中なら避けられないだろうと思ったけど、甘かった。
僕の拳が届くより先に、体を引いて躱すつもりだ。
避けられる。
そう思った瞬間、青白い火花が視界の端に走った。
「いっ──!?」
わずかにコンマ数秒だけ止まった相手のこめかみに、僕の拳がめりこむ感触がした。
その勢いのまま振り切り、床に叩きつける。
鈍い音が響く。
神経回路にダメージを負った反動で動けなくなったギークの背中には、ワイヤー付きの電極が刺さっていた。
「……自分たちの負けです。隊長」
ワイヤーの先は、弐番隊の副隊長の指先に繋がっていた。




