第十五話 ギークと副隊長ロゴロ
弐番隊は、隊長一人で成り立っている。
副隊長の自分なんか、他のアルマと変わらない。肩書きなんていらなかった。
防護服を着て、他のアルマと同じように人間の健康管理をするだけ。
ただ、副隊長らしいことといえば、隊長と自分の二人っきりで行う、形式ばかりの報告をすることだけだ。
「ロゴロ、肆番隊から来た人間、そろそろ他の人間と同じ区画に入れても良さそう?」
隊長は椅子の背もたれに体重を預けて、クルクルと椅子ごと回って楽しそうに言う。
「いえ──まだ早いかと思われます」
「ふーん……ま、そのうち慣れるだろうし。壱番隊から来た人間ちゃんと一緒にしとこっか」
回転する椅子の軋む音が、自分の聴覚器官に爪を立てる。
思わず手に持っていた報告書を捲る指に力が入った。
「……壱番隊からの人間は、一時間の見学のはずでは……?」
さも弐番隊の新入りのような口振りに、気がついたら言葉に出ていた。
自分で気づいた瞬間、すぐに手で口を覆った。
恐る恐る隊長を見ると、にやりと笑う隊長が、椅子を止めてこちらをジッと見つめていた。
「ロ〜ゴ〜ロ〜、察しが悪くない?」
「……申し訳、ありません」
「壱番隊で人間一人でいるよりさぁ、弐番隊で他の人間といた方が良いし、実際に他の人間と話したいって本人も言ってたんだからさぁ──壱番隊にいるよりもここの方が良いに決まってるじゃん」
隊長の有無を言わせない圧に、自分は沈黙で頭を下げた。
言い訳も過剰な謝罪も、隊長には逆効果だ。
「だからロゴロ、もうあの人間は弐番隊の管轄。ワズにはこれから連絡いれるから」
「……わかりました」
「あと迎撃準備しといて」
「──と、いうと……」
「ワズは説明しても不合理に怒るから」
「……全員に共有させます」
「うん、よろしく」
弐番隊は、隊長から他のアルマに指示が飛ぶことはない。
全て副隊長である自分を通して、間接的に共有される。
それに意を唱えるアルマはいない。
自分も、それに苦言を呈す勇気はない。
隊長は既に椅子にふんぞり返って、またクルクルと回り始めた。
これが、弐番隊だ。




