第十四話 とある会社員の男
自分は、冴えないただの会社員だった。
会社の健康診断で再検査の結果が出されて、憂鬱に肩を落としながら大病院に足を運んだ。
そこまでの記憶しか、残っていない。
気がつけばこの弐番隊とかいう謎の施設に連れてこられて、検査着のような服を毎日支給されて、出されたご飯を食べて、定期的に広い空間に出される。
窓もない。時計もない。高い天井に備えつけられた電灯から感じる熱が、唯一昼と夜がわかる手がかりくらい。
つまり、なにも考えなくていい。
防護服を着た人が定期的に様子見にくるけど、話をするのはごく稀。
けど、仕事をしなくていい。
何かしなければならないと言われない。
眠たければ寝てもいい。
食べたかったら、部屋のボタンを押せば軽食が配膳される。
運動したかったら、広い芝生の空間が開放されたタイミングで走ってもいいし、部屋で筋トレしてもいい。
ただただ、生きていれば良い。
それは会社でうだつの上がらない平社員だった自分には、最高の環境だった。
他の人も同じようなもので、この弐番隊という再検査の場で、悠々自適に過ごしている。
会話は、怖いからしないようにしている。
いつこの夢から醒めてしまうかなんて、今の自分は知りたくない。
ここにいる全員が、きっと同じことを考えていることだろう。




