第十三話 電圧上昇
最初の違和感は、壱番隊の中が静かすぎる事だった。
ミサキがいれば他のアルマと会話する音の振動が起きているはず。
それが、今日はやけに静かだ。
『誰か──今ミサキと一緒にいる隊員はいるか?』
壱番隊の共有ネットワークで全体に確認を取ったが、肯定する隊員はいなかった。
むしろ、逆に質問が上がってきた。
『温室には来ていません』
『食堂には朝食を食べには来ましたが、それ以降は見ていません』
『図書室、来ていません』
『医務室にもいません……誰かミサキを見ました?』
『副隊長と一緒じゃないんですか?』
『僕は隊長の仕事の補佐をしています。ミサキとは朝の挨拶を通路でしただけで、それ以降は見てません』
『……隊長?』
共有ネットワーク内で壱番隊全体が騒つく中、俺は五百年前の、ギークの歪んだ笑顔を思い出して頭を抱えた。
そしてため息をついた後、全隊員に指示を飛ばした。
『全隊、交戦準備──弐番隊へ進路変更。同時に伍番隊にデータ共有。第一目的はミサキの奪還保護とする。弐番隊が妨害するようなら容赦するな』
五百年前の記録が、嫌でも再生される。
俺は伍番隊へ壱番隊の正当性を主張する為にデータを共有した。
あの時と同じ轍は踏まない。
『五百年の俺たちとは違う──ミサキは俺たちに黙って弐番隊へ行くような人間でもない……以前とは、何もかもが違う。それだけは、切り替えろ』
すぐに共有ネットワーク内の空気が引き締まる。
当たり前だが、壱番隊の全員が五百年前の事を忘れられずにいる。
俺の隣にいるホシも、真剣な顔で弐番隊の移動都市の追跡を開始している。
「……ホシ、今度は出遅れるな」
「はい──そのつもりです!」
感情が昂っているのだろう。
俺もホシも、壱番隊全体の思考回路の電圧が、バチリ、と弾ける音が静かに止まらない。
冷静に、とは言ったが、俺も含めて誰も感情的にならずにはいられないのだろう。
合理的ではない。わかっている。
だが、これが壱番隊だ。




