第十二話 白い残り火
私は呆然と立ちつくした。
扉を閉められるなんて、思っていなかったから。
でも、そうだ。もしかしたら時間が経ったら開けてくれるかもしれない。
だって一時間だけの見学って話で、私は弐番隊に来たのだから。
「あの……」
きっとまた扉は開くと自分に言い聞かせて、冷や汗を拭った。
そんな私に、さっき声を上げた女の子が声をかけてくれた。
「大丈夫……?」
「……うん。多分、今はまだ、平気……」
「そっか……あなたは、新しく保護されたの?」
気まずそうに胸元で両手を握りしめる女の子は、視線を落としながら、チラチラと私の様子を見ている。
私は横に首を振って、上下の白い無地の服を着た女の子に近づいた。
「違うよ。私は壱番隊にいるんだけど、今日は一時間だけ見学しに来たの」
「……やっぱり」
「え?」
「あたしも、そうだったから……」
「あなたも違う隊から……?」
女の子は俯いたまま、それでもはっきりと言った。
「あたしも……肆番隊から見学しに来て……そのままずっとここにいるの」
「ずっと……!?」
「そう。最初はちょっとだけって話だったのに、見学して施設の中を"優しい作り"だって言っただけで……あのアルマにここに監禁されて……それでずっと、ここから出られないの」
言葉が出なかった。
この子は私と同じく他の隊から見学に来て、そのままここに閉じこめられた。
だとしたら、私も?
このままここに閉じこめられたままになるの?
ワズさんにもホシにも助けを求められない、こんな飼育ケースみたいな場所に?
「……でも、私はこの施設を褒めてないし……」
「そ、それなら……あなたは出られるかもしれない……けど、気をつけて。あのアルマは、どんな小さな言葉も都合よく解釈して押し通してくるから……」
「最低じゃん」
「うん……最低だし、最悪だよ……あたし、肆番隊に彼氏がいたんだけど、ケンカしちゃって……気まずくて、距離を置いてたら、弐番隊への見学の話を持ちかけられて……軽い気持ちで着いてきたら、これ……本当に最悪」
「それ、肆番隊の隊長とかアルマが助けに来てくれたりしないの?」
泣きそうな女の子の小さな背中をさすると、小さく首を横に振った。
「誰も来てくれないの……あたしが弐番隊に見学に行ったことは知ってるはずなのに……」
「そうなんだ……」
「もうここ嫌なのに、ここのアルマと話をするタイミングが無いの。ご飯も自動配膳で部屋に用意されちゃうし、窓も無いし……天井の明かりでしか昼夜がわからないし、時計も無いから時間もわからないし……!」
溜まっていたものを吐き出すように、女の子は肩を振るわせながら悲鳴のように叫んだ。
「しかも他の人たちはもう諦めきって、誰も会話をしようともしないし……! もう嫌なの! 他の隊に行きたい……!」
私は女の子の背中をゆっくりさすりながら、首を傾げた。
「他の隊に……? 帰りたい、じゃなくて?」
「あそこももう嫌……! 彼氏とケンカして気まずかったし、誰も助けに来てくれないし……! 戻りたくない!」
「そ、そっか……そうだよね」
ついに泣きじゃくる女の子をなだめながら、私はふと思った。
ワズさんやホシは、私が弐番隊に来ていることに気づいてくれるのかな。
蹲って泣く女の子にあわせて床に膝をついて、私は女の子の背中をさすりながら天井を見上げた。
不自然なほどに眩しい光は、不思議と熱を感じることはできる。
けど、壱番隊の温室ほどの優しさは感じられない。ただの無機質な光でしかない。




