第42話 実況! 告白まで、あと三分
どこかで、誰かの恋がはじまる
「さあ、実況の田村です! 本日は文化祭最終日、屋上特設会場より、注目のカードをお届けします!」
「解説の桜井です! いや田村さん、まさかこんな一戦を実況することになるとは、正直思ってませんでしたよ」
「ご覧ください、屋上出口付近で待機する二年A組、坂本さかもと悠斗ゆうと選手! 表情には、明らかな緊張の色が見えます!」
「これは重い一戦になりそうですね。相手は同じクラスの、水野みずの陽菜ひな選手。文化祭実行委員として、坂本選手とは半年間、共に準備を進めてきた間柄です」
「おっと、水野選手、屋上に到着! さあ田村さん、坂本選手、動きます!」
「――坂本選手、なんと第一声、『お疲れ様!』とだけ言って黙り込みました! これは緊張からの、いわゆる肩透かしパターンでしょうか」
「いやいや田村さん、これはよくある入りです。焦らず見守りましょう」
「水野選手、笑顔で応じつつも、坂本選手の異変に気づいた様子! さあ、坂本選手、深呼吸に入りました!」
「大きく息を吸っていますね。これは、いよいよ本題に入る前兆と見て間違いないでしょう」
「――来た! 坂本選手、口を開きました!『あの、水野さん、半年間、実行委員お疲れ様でした』! ……おっと、これは、まだ本題に入っていません!」
「田村さん、落ち着いてください。これは前振りです。坂本選手、まだ本題を温めている段階かと」
「桜井さんの解説、心強いです! さあ、坂本選手、再び沈黙! 会場に緊張が走ります!」
「水野選手も、この空気を察知したのか、心なしか身構えている様子ですね」
「――来ました! 坂本選手、意を決したように、水野選手をまっすぐ見つめています! これは、いよいよ本題突入でしょうか!」
「坂本選手、口を開いた! 『水野さんのこと、実行委員としてじゃなく、その、ずっと前から、気になってました』! 出ました、本題! ついに核心に到達です!」
「見事な告白でした田村さん! さあ、これを受けての水野選手のリアクションに注目です!」
「水野選手、しばし沈黙……! これは審議に入るのでしょうか、桜井さん!」
「いえ田村さん、これは照れによる間だと思われます。水野選手の頬、明らかに紅潮していますね」
「――来た! 水野選手、答えました!『私も、坂本くんのこと、同じ気持ちでした』! これは、まさかの即答パターン! 素晴らしい返答です!」
「見事なラリーでしたね田村さん! 半年間の準備期間という、長い伏線が、見事に回収された瞬間と言えるでしょう!」
「両者、握手ならぬ、照れくさそうな笑顔を交わしています! これにて、本日の一戦、ハッピーエンドという結果で幕を閉じました!」
「いや、良い試合でした。文化祭の熱気に負けない、素晴らしい告白劇でしたね」
「以上、屋上特設会場からの実況、田村と桜井でお送りしました! また次の恋の一戦で、お会いしましょう!」




