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どこかで、誰かの恋がはじまる  作者: 芦名 雅


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第27話 国語辞典、恋の項

どこかで、誰かの恋がはじまる


【こい 恋】

名詞。特定の相手に対して抱く、切なくも温かい感情。しばしば当人の理性を鈍らせる働きを持つとされる。

用例:「圭吾けいごは、藤堂ふじどう茉由まゆに対して、明確な恋を自覚していた」

【おさななじみ 幼馴染】

名詞。幼少期からの長い付き合いを持つ相手。互いの黒歴史を熟知しているため、下手な誤魔化しが一切通用しないという特徴がある。

用例:「幼馴染の茉由は、圭吾の些細な変化にも、すぐに気づいてしまう」

「圭吾、今日、なんか元気ないね。何かあった?」

「いや、別に。ただの寝不足」

「嘘。私に隠し事、下手すぎるんだけど」

幼馴染という関係の恐ろしさを、圭吾は今日もひしひしと実感していた。

【どうき 動悸】

名詞。心臓の鼓動が通常より速く、あるいは強く感じられる状態。恋愛感情の高まりに伴って発生することが多い。

用例:「茉由の笑顔を見るたび、圭吾の胸には原因不明の動悸が走った」

【まよい 迷い】

名詞。物事の決断に際して生じる、心の揺れ動き。恋愛においては、告白のタイミングを逃す最大の要因となることが多い。

用例:「圭吾は、この関係を壊したくないという迷いから、なかなか本心を伝えられずにいた」

【ゆうき 勇気】

名詞。恐れや迷いを乗り越え、行動を起こす力。恋愛においては、最終的な告白の場面で最も必要とされる要素とされる。

用例:「圭吾は、ついに勇気を振り絞り、茉由に想いを伝える決意を固めた」

放課後の教室、圭吾は深呼吸をしてから、茉由に向き直った。

「茉由、聞いてほしいことがあるんだ」

「なに、改まって」

「ずっと、迷ってたことなんだけど……茉由のこと、幼馴染としてじゃなく、一人の女の子として、好きだ」

【こくはく 告白】

名詞。自分の気持ちを、相手に直接伝える行為。恋愛関係における重要な転換点とされる。

用例:「圭吾の告白を受けた茉由は、しばらく黙り込んだ後、静かに頷いた」

「……気づいてたよ、実は。圭吾の態度がおかしいの」

「それなのに、黙ってたのか」

「圭吾が自分で気づいて、ちゃんと言葉にしてくれるの、待ってたから」

【りょうおもい 両想い】

名詞。互いが互いを想い合っている状態。恋愛における、一つの理想形とされる。

用例:「幼馴染としての十数年を経て、圭吾と茉由は、ようやく両想いという関係に至った」

「じゃあ、これから、正式に付き合うってことでいい?」

「うん。よろしくお願いします、圭吾」

こうして二人の関係は、幼馴染という項目から、恋人という新たな項目へと、静かに書き換えられていった。



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