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どこかで、誰かの恋がはじまる  作者: 芦名 雅


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第26話 初恋の作り方(材料二人分)

どこかで、誰かの恋がはじまる


初恋の作り方(材料二人分)

【材料(二人分)】

・幼馴染 一組

・すれ違いの記憶 少々

・十年分の年月 適量

・偶然の再会 一回

・勇気 大さじ二

・素直な言葉 ひとつまみ

【作り方】

一、幼馴染二人を、同じ町で幼少期からじっくりと育てます。この時期は、些細な喧嘩や言い合いも、旨みのうち。焦らず、時間をかけるのがポイントです。

二、思春期に差し掛かった頃、片方の転校というアクシデントを加えます。ここで一度、二人の関係を大きく引き離してください。すれ違いの記憶が、後の工程で深いコクを生み出します。

三、十年という長い年月を、じっくりと寝かせます。この工程を焦って省略すると、後の再会の感動が薄れてしまうので、注意が必要です。

四、十分に年月が経ったところで、偶然の再会を一回、大胆に投入します。同窓会でも、地元の駅でも構いませんが、なるべく予想外のタイミングで加えるのがコツです。

五、再会した二人に、少しずつ昔の関係を取り戻させながら、様子を見ます。このとき、ぎこちなさが出るのは自然な反応なので、慌てず中火でじっくり進めてください。

六、頃合いを見て、勇気を大さじ二、一気に加えます。ここが最大の山場です。勇気が足りないと、初恋が生煮えのまま終わってしまうため、思い切りが肝心です。

七、最後に、素直な言葉をひとつまみ。「ずっと好きだった」のひとことを、ここで加えることで、全体の味がぐっと引き締まります。

【調理例】

「――颯、久しぶり。まさかこんなところで会うなんて」

十年ぶりに顔を合わせた凪咲なぎさは、目の前に立つ幼馴染の颯そうを見て、思わず声を上げた。

「凪咲か……! 変わってないな、雰囲気」

「颯こそ。全然、印象変わったね」

十年という寝かせ時間を経て、二人の再会は、ぎこちなさとともに始まった。何度か言葉を交わすうち、少しずつ、昔の距離感が戻ってくる。

「なあ、凪咲。この後、時間あるか。積もる話、色々あるだろ」

「うん、あるよ。……あの、颯」

「なんだ」

大さじ二杯分の勇気を振り絞るように、凪咲は続けた。

「ずっと、言えなかったことがあるの。転校する前、颯のこと、好きだった。今も、多分、変わってない」

素直な言葉のひとつまみが加えられた瞬間、颯の表情が、驚きから、じんわりとした喜びへと変わっていく。

「――俺も、同じだ。十年間、ずっと引きずってた」

【完成】

これで、「初恋」の完成です。仕上がりには個人差がありますが、じっくりと時間をかけて育てた分だけ、深い味わいになることをお約束いたします。お好みで、これから先の「日常」というデザートを添えて、末永くお召し上がりください。

――第27話 完――


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