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ラスト・メニカ:死に金たちの空  作者: ルツ


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3/3

不渡りの弾丸

 ルマ王宮の駐機場を蹴り、ジンは『コイン・トス』を強引に垂直離陸させた。

 後部座席では、王女リリアが押し寄せる重圧(G)に喘いでいる。だが、ジンに気遣う余裕はない。

「残高ゼロ。機体維持プログラム、強制終了まで残り一二〇秒……クソが」 計器盤は赤一色。

口座凍結により、機体を飛ばすための「認証コスト」すら支払えない。 

そんなジンの前に、黄金の雲海を割って「それ」は現れた。 

白亜の装甲に、無機質な単眼。 世界銀行直属、執行官エグゼキューターカインの乗機『ペイバック』だ。


『――不法居住区、旧アルタ州の生き残りか』 通信回線に、氷のような男の声が割り込む。 

カインだ。その声を聞いた瞬間、ジンの奥歯が軋んだ。故郷を「差し押さえ」という名の爆撃で焼き払った男の声。『ジン、お前の口座は既に死んでいる。

死人に空を飛ぶ権利はない。速やかにリリア王女を明け渡し、破産手続き(自爆)に応じろ』「あいにくだがカイン、俺は徹底した現金主義でね。死ぬなら、アンタの命を現金化してからだ!」 

ジンは操縦桿をねじ込み、強引なバレルロールでペイバックの背後を狙う。 

だが、カインの機体は重力を無視したような機動でそれをかわした。『無駄だ。こちらの残高は無限。燃料も弾薬も、この世界の全資産が私の後ろ盾だ』 ペイバックの主翼から放たれたレーザー照射が、コイン・トスの装甲を焼く。 

警告音が鳴り響く中、ジンはリリアに叫んだ。「王女! その首輪チョーカーの裏側に、物理ポートがあるはずだ。そこに俺の端末を繋げ!」「えっ……でも、これは銀行の管理下で……」「いいからやれ! あんたの『価値』を、一時的に俺が借りる!」 

リリアが震える手でケーブルを接続した瞬間、コイン・トスの計器が狂ったように回転を始めた。 

彼女の瞳の奥、マスターキーが青白く輝く。 

「……見つけた。世界銀行の『予備費』の裏口だ」 ジンは不敵に笑うと、特殊武装『バースト・タックス』の起動レバーを引いた。  

機体下部のレールガンが唸りを上げる。 装填されたのは、電子通貨ではない。

ジンがこれまで血を吐く思いで貯め込んできた、旧時代の「現物硬貨メニカ・コイン」だ。

「現物はハッキングできねえだろ! 叩き落としてやる、この金食い虫が!」 

凄まじい衝撃波と共に、数千枚の硬貨が超音速で放たれた。

 「無限の残高」という電子の盾を誇るカインの機体に、物理的な金の「重み」が食らいつく。

 白亜の装甲が砕け散り、カインの冷徹な声に初めて動揺が混じった。

『……物理貨幣での攻撃だと? 貴様、どれほどの資産を無駄に――』「無駄じゃねえ。これは投資だ!」 

爆炎を突き抜け、ジンはなおも加速する。 

故郷を奪った男への復讐と、価値を否定された少女の逃避行。 

その最初の支払いは、カインの機体から噴き出した黒煙によって決済された。

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