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第十一話「フローティングラインII」

ちょっとした梯子を降りると、明かりのない空間に降りた。

「よし、降りていいぞ」クレイスが合図すると、メイリルが降りてきた。

「うわ、埃くさっ…」

メイリルが顔をしかめて言う。

「わっ、うわあああああ!?」

「えっ…ぎゃあああああ!?」

足を踏み外したか、メイリルの上にレイノアが降ってきた。

レイノアの抱えている銃がメイリルの後頭部にクリーンヒットする。

「うわぁ、メイちゃん大丈夫!?」

ひらりと着地してレイノアが言った。

「あぐ…ぐおぉ…」

メイリルはのたうち回っている。

「…まぁ、気絶するよりはましか…」

クレイスはため息をつきながら言った。

「ちょっとレイノア!殺す気!?たんこぶ出来たじゃない!!」頭を押さえながらメイリルが起き上がった。

「手が滑っちゃった…てへへ…」

「メイリル、レイノアは稀に突拍子もない事をしでかすから気を付けろよ」

「もう遅いわよ…」

「懐中電灯つけるね」レイノアはそう言いながら電灯をつけた。

辺りが薄暗く照らされる。

設計自体が機密事項なのかも知れない。中はまともな掃除もされず埃が浮き、クレイスの指の太さ並みの蜘蛛が歩いている。

「さて、進みましょうか」

メイリルもケミカルライトをペキっと折って辺りを緑の光で照らした。

「…ケミカルライトか…」

「何よ、あげないわよ」

「いらん」「即答!?」

メイリルがショックを受ける。

「…何なら照明弾でも使うか?」

「…何それ」メイリルが顔を上げた。

「はいこれ」レイノアが手榴弾のような物をメイリルに投げて寄越した。

「え…ちょ…」

次の瞬間、辺りが外のように明るくなる。もちろんメイリルの持っている物からだ。知っている人は知っているだろう。

…この光は直視してはいけない…

「ギャアア!目が!私の目がぁぁ!?」

メイリルはまたのたうち回っている。

「…レイノア…」

「私のせい?」レイノアは救いを求めるような目でクレイスを見つめた。

「…よくやった」「なんでよ!」メイリルのツッコミが地下にこだました…。

「これじゃない?」レイノアが大量の木箱が積んである場所を見つける。

「…使えるもの、ありそう?」

メイリルが一番上の木箱を降ろす。

「…大口径型のAP弾だな…俺の銃に使えそうだ、貰っていこう」

「わ、アサルトの弾帯だ!…すごい、私のタイプ、古くて誰も使ってないと思ってたのに…!」

クレイスはそれを見て嫌な予感がした。

…だが、今はそんな事を考えてる場合ではないな…。

考えを無理矢理振り払う。

「あっ…これって…!」

メイリルが驚きの声を上げた。

クレイスは銃弾をある程度詰めてからメイリルの方に確認に向かう。

「ほう…」

それは一見すると何の変鉄もない金属の筒状の棒に見える。だが…

「私これにしよっ」レイノアが筒の1つを手に持ち、側面のスイッチを押した。

ブォンという音と共に、レイノアは白く輝く細身の剣を持っていた。

レーザーブレード。光剣である。

「でかしたメイリル。これは大幅な戦力増強になるぞ」

「…そんなに凄いものなの?」

メイリルは少し大きめの赤い太刀が形成されるタイプの物を選んだ。

「あぁ。帝国が開発したという噂はあったんだが…まさかこんな形で使えるようになるとはな」

クレイスはそう言うと残りの一本を手に取り、スイッチを入れた。

長さは短めだが太い刀身が現れる。

特徴的なのはその刀身が見えにくい紫色の光をしている事だ。

相手にとってこれほどリーチのわかりづらい剣はないだろう。

不意打ちには最適の剣かも知れない。

「よし…」クレイスはその剣で汽車の機体に四角い穴を開ける。外は一面綺麗な青い湖だった。「後は全部捨てるぞ」

箱を全て投げ捨てると、クレイスは残しておいた工具類を適当に使って適当に穴を塞いだ。これで外からは穴は見えない。

不意に人の気配を感じた。

「…!」クレイスは銃を取り出す。

他の二人もそれに続く。

「やあやあ、まいったなぁ…」奥のほうから白衣を着た研究者風の男が現れる。

その隣には無機質な表情をしているメイドが一人立っていた。

「帝国の人間か…?」

「その質問をするってことはまだバレてないんだ、リッシリア?」

「…あ…!」レイノアが突然アサルトを手から離す。「な…何であなたが…」

「レイノア、どうした!?」

リッシリアとはレイノアの下の名前だ…

「折角俺が作った兵器を強奪した挙げ句、残りを湖に捨てるなんて…酷いなぁ」男はそう言うとレイノアを見て笑った「でもやったよ!リッシリアを見つける事が出来たじゃないか!実に素晴らしいよ!そう思うだろアーフィー!?」

「イエス、マスター」

アーフィーと呼ばれたメイドから機械的な声が聞こえた。

「…アンドロイドかっ…」

「…クレイス、そいつを殺して…そいつに喋らせないで!」

レイノアが頭を抱え、ガタガタと体を震わせながら言った。

…尋常ではない…。

「え?なになに、もしかしてバラしたら戻ってきてくれるのかな?」

研究者の男はニヤニヤしながら続ける。

「リッシリアは元々俺の物だ…」

「…何を言ってる…」

「せあっ!」メイリルが研究者に斬り込んだ。しかしアーフィーと呼ばれたメイドが腕で受け止める。「ちょっ…嘘っ…」

「アーフィー、そこのじゃじゃ馬さんの相手をしててくれ」

「イエス、マスター」アーフィーはスカートから折り畳まれた大型のチェーンソーを取り出す。刃の部分に光剣の技術が使われているようで、緑色の光を発していた。

メイリルとアーフィーが打ち合うのを視界の端で捉えながら、クレイスは研究者の男に両方の銃を向けた。

「レイノアがお前の物だと?」クレイスは集中を切らさないように言う「俺は誰かにやったつもりも、貸し出したつもりも無いんだがな…」

「無理もないかな、7年ぐらい前ぐらいの話さ」研究者は語り始めた「ある人が管理社会を提唱し、帝国が出来たのはいいんだけどね…君たちみたいな反抗勢力がいるのは言うまでもなく、帝国は弾圧ってことを覚えちゃったんだよなぁ。」

キンキンと金属音が聞こえる中、研究者は両手を広げて言う。

「弾圧には何が必要かと言われれば君、相手を屈服させ、降伏させる戦力だ。私達はその問題を生体兵器エネミーを使うことで解決しようとした…だが…」研究者は頭を抱える。「いかんせん生き物ってのは面倒でね…統率する者がいなけりゃ野獣だ。だから私はそれらを統率する【人型のエネミー】を作ろうとした…悪魔という名前を付けてね…」

「それが一体何の…まさか…!」

クレイスは気づいた。レイノアが必要以上に帝国関連の資料を片付けることが有ることは不思議に思っていた。

「その栄えある一号がレイノア…リッシリア01なんだよ!」

「嫌ああああぁぁぁぁぁぁ…!!」

レイノアは絶叫した。そして突然地面に倒れこんで動かなくなった。

「…」クレイスは動けなかった。

7年ずっと傍らにいて、時には自分を励まし、危険も省みずついてきてくれたレイノア…彼女は帝国のエネミーだったのだ。

「…ってことだから後は分かるね?」研究者はニヤリと笑った。「知りすぎた人は…死ななきゃいけないかなぁ?」

「拠点制圧モードに移行」

アーフィーはチェーンソーを構えた。

チェーンソーの端から光が照射される。

クレイスの背後の壁が粉砕した。

「クレイス、逃げるわよ!」

メイリルに腕を引っ張られ、クレイスは半ば放心状態で逃げ出した。

その頃上では、ワイダーという名のフェンシングサーベルを二本持った男によって、ハイジャック犯たちが一掃されていた。

「…見たカ!」

彼は可笑しなアクセントでそう言い、

眼鏡を掛けた気弱そうな少年と共に汽車から華麗に飛び降り、いつの間にか用意されたボートで脱出していった…。

「随分手の込んだイベントだったな…」

最後までイベントだと思っていた馬鹿の乗客はそう呟いた。

「…」クレイスは銃の点検を終えると、深い溜め息をついた。

ここは自分達の部屋だ。

タバコがあるなら吸ってみたい気分だ。

「…これからどうするつもり?」

メイリルはツインテールの髪をいつの間にかウェーブのかかった長髪にしていた。

…一般の乗客に見えるための工夫だ。

「この先逃げ続ければ…レイノアと戦うことになるんだろうか…」

「だったら、どうするのよ」メイリルは腕を組んだ。「大人しく捕まるの?」

「いや…逃げて苦しむ位ならいっそ…」

パン!

クレイスは右頬に衝撃を感じた。

パン!

クレイスは左頬に衝撃を感じた。

「しっかりしなさいよ!」メイリルはクレイスの肩を揺する。「大切な人を無くして落ち込むのは大事な事だと思う。…でもそこから立ち直らなきゃ意味ないわ!アンタ殺し屋以前に男でしょっ!」

「…メイリル…」

彼女の目には涙が滲んでいた。

「私の大切な人は…今日、ここで、私の目の前で死んだのに…落ち込みたいのはこっちの方よ!馬鹿ぁ!」メイリルはそのままクレイスに抱きついた。「馬鹿…」

「…あいつは…何のために俺の近くにいたんだ…」クレイスは呟いた。

「居たかっただけよ…。あなたの傍に」

クレイスはレイノアと初めて会った時を思い出した。

オレリーの帝国基地の深部に鎖で繋がれて石の椅子に座らせられていたレイノア。

彼女を人目見て、助けようと思った。

彼女が自分の意思でついてきてくれるのを嬉しく思ったし、これからずっと守っていきたいと思った。そして…

…彼女になら殺されても良いと思った。

あいつは…俺以上に葛藤していた筈だ。

怯えていた筈だ。

それでも…ついてきてくれた。

「メイリル…すまん…気が変わった」

「…」メイリルは涙目でこちらを向く。

「レイノアを助けにいくぞ」

「…ついていってもいいかしら?」メイリルが涙を拭って言う。「サニィは、ここで死んだ…だから…」

「…死ぬ覚悟があるならついてこい。」

「…うん」

メイリルは顔を赤らめながら離れた。

「…多分レイノアはあれに乗ってる」

窓から見えるかなり遠くの空に辛うじてヘリコプターが見える。帝国の物だ。

「追っ手が来ないってことはきっとそうね…リヴィ・ノ基地の方角よ」

「リヴィ・ノ基地か…」

確か帝国の重要拠点基地だ。突っ込むにはそれなりの戦力が必要だろう。

それに…

「…恐らく【十大将】もいるはずだ」

「十大将って?」メイリルがどっかりと椅子に腰掛けながら言った。

「帝国の文字どおり指折りの戦力…殺し屋よりたちが悪い奴らだ…」

「それ…勝てるの?」

「試したことはない。…前回はそのうち一人と剣を合わせただけだ。まともに戦う前に撤退を余儀なくされたからな」

「一瞬打ち合って…どうだった?」

「見たところそいつは十大将の中堅位の実力を持つようだったんだが…打ち合っただけで近接では敵わないと思ったな」

メイリルは口をあんぐり開けた。

「アンタ…今までよく生きてたわね」

「…一応逃げ足には自信があるからな」

クレイスはそう言うとまた外を見る。

「ん…何か顔つき変わったわね…ちょっとカッコいい…かも」

メイリルがボソッと呟く。

「…ん?どうした」

「…!いいから窓見てなさいよ!」

ドアを軽くノックする音が響いた。

「…誰だ」

「俺俺〜」ドレッドの声が聞こえた。

鍵を開けてやると申し訳無さそうな顔をして話し始める。

「やっぱ本部に死傷者が出たから汽車止めろって言われてさー。今のうちに地下の穴から出といた方がいいぜー?」

「わかった」クレイスはトランク型の武器ケースを掴み、メイリルに手を出した。

思わず手を握り返して立ち上がるメイリルだが、ハッと気づいて顔が赤くなる。

「え…ななな…っ!?」

…一人で立てるわよ…!

「どうした?行くぞ」

本人はあまり気にして無いようだ。

恐らく日常のことなのだろう…。

列車の地下から降り、小さな林に入る。

目指すはこの先の目的地、美術国【クラシス共和連合国】だ。

【続く】


どうも久しぶりでございます

ケイオスでございます

次話が書けましてございます。

もう少しで明けましておめでとうございます…さて茶番はこれまでにございます。

(゜ロ゜;)

いよいよもって敵の主戦力の話が出てきましたね!これは楽しみです!

なんせこの話を書く前から考えていた没キャラクター達が一気にお披露目出来るのですからね!フハハハ!

…で、これを書き初めてもう半年以上…チラチラ見に来てくれる読者の方もいると言うのに、思うようにペンが動かない点、ものすごく申し訳ないです。

私の書く小説はとても盛り上がりに欠けるし、読んでいてもつまらない気もしますが、これを読んでくれた、のべ500人以上の方々に感謝し、本日も携帯を取ります。

皆さん、これからもよろしくです!

そして多分後書きはこれで今年最後!

皆さん風邪を引かぬよう気をつけて新年を迎えてくださいませ!

それでは毎回恒例、次回予告です!

【次回予告】担当 メイリル

クレイス…単刀直入に良いかしら?

そんな死にそうな顔で変な物を拾ってこないで欲しいんだけど…。

…町で仲良くなったから?

どこの誘拐犯よ!犯罪よ犯罪っ!

って、指名手配犯も仲間っ!?

貴方は人を見る目あるのないの?

それともその目はただの飾りで、攻撃を受けたらポンって吹き飛ぶの!?

もう突っ込むのも疲れたわ…。

次回「キャンパスに隠れる」

…他に行くとこなんて、無かったから…

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