【偽りのステータス】
村を探し森の中を進む三人。
セインが先頭で周囲を警戒し、シアは少し後ろを歩いている。
しばらく進んだところで立ち止まり、二人に声をかけた。
「そういえば、二人にお願いがあるんだけど」
「何でしょうか、女神様?」
シアが丁寧に答える。
「その女神様って呼び方、できればやめてほしいんだ」
「と、おっしゃいますと?」
「今はリリーフって名前で過ごしているし、人前で女神様なんて呼ばれたら、目立っちゃうだろうし」
「承知いたしました。では、これからはリリー様とお呼びします」
「俺もそう呼ばせていただきます、リリー様」
「うん。それでお願いね」
二人が了承したところで、再び村を探して歩き始めた。
それからしばらくすると、森の先に開けた景色が見えてきた。
さらに進むと、遠くにいくつもの建物が並んでいるのがわかった。
「あれって、もしかして村かな?」
「そのようですね。人が暮らしている場所のようです」
シアの言葉に、ひとまず安心する。
「よかった。思ったより早く見つかったね」
このまま向かいたいところだが、一つ気になることがあった。
今のステータスを誰かに見られれば、面倒なことになるかもしれない。
レーテに頼んだスキルは、まだ完成していない。
「村には行きたいけど、今のままだとちょっと危ないかな」
「何か問題があるのでしょうか?」
「うん。ステータスを見られると困るから、レーテがスキルを作り終えるまで待っておこうと思って」
「なるほど。それでしたら、ここで待機するのがよろしいかと」
セインもその意見に頷いた。
「そうだね。じゃあ、しばらくここで待とうか」
三人は村の様子が見える場所で足を止めた。
待っていると、目の前に小さな光の粒が集まり、やがてレーテの姿が浮かび上がった。
「リリー様、お待たせいたしました」
「レーテ、戻ってきたんだね」
「はい。ご依頼いただいたスキルの創造が、無事に完了しました」
「本当? よかった。ありがとう、レーテ」
「お役に立てて何よりです」
レーテがそう告げると、頭の中に機械的な女性の声が響いた。
『スキル〈情報偽装〉を習得しました』
「お、ちゃんと覚えられたみたいだね」
「はい。これで、他者から確認できるステータスの内容を自由に変更できます」
「なるほど。これなら安心かな」
「それと、もう一つご提案があります。シア様とセイン様にも、このスキルを使っていただいたほうがよろしいかと」
「二人にも?」
「はい。お二人の能力も、目立ってしまう可能性がありますので」
「そうだね。それなら、二人も覚えられる?」
「はい。お二人にも付与できます。一度創造したものなので、作り直す必要はありません。ただし、素材は必要になります」
「それなら、お願いするよ」
「承知いたしました」
必要な魔晶石を〈魂の世界〉の収納から取り出し、レーテに渡した。
レーテはそれを使い、シアとセインにも〈情報偽装〉を付与した。
「それじゃあ、さっそく試してみようか」
新しく習得した〈情報偽装〉を使い、他者から見える項目や能力値を、目立たない内容に変更した。
シアとセインも、それぞれステータスの表示を整える。
「よし、これなら大丈夫そうだね」
「はい。これで余計な注目を集める心配も減るかと思います」
「それじゃあ、村に行こうか」
セインが再び先頭に立ち、三人は遠くに見えていた村へ向かって歩き始めた。
森を抜けてしばらく進み、村の入口へたどり着いた。
「ようやく着いたね」
しかし、村の中へ足を踏み入れると、そこには想像していたものとは大きく異なる光景が広がっていた。
家々はあちこちが傷み、屋根や壁には修繕の跡が目立つ。通りを歩く人の姿も少なく、村全体に活気が感じられない。
「……こんなに寂れてるなんて」
「どうやら、あまり豊かな村ではないようですね」
シアも周囲を見渡しながら答える。
「リリー様、あちらに店があるようです」
セインが指し示した先には、古びた看板を掲げた建物があった。
「道具屋か。とりあえず入ってみようか」
店の前まで来たところで〈魂の世界〉の収納から毛皮を取り出し、三人は中へ入った。
店内には日用品や旅に使う道具が並んでいたが、武器や防具らしいものはほとんど見当たらない。
「すみません。武器や防具は、あそこに並んでいるもので全部ですか?」
店員に声をかけると、申し訳なさそうな返事が返ってきた。
「ああ、そうだよ。この村じゃ大した装備は扱ってないんだ」
「そっか……あまり種類はないんだね」
「昔はもう少し品揃えもあったんだけどね。今じゃ、こんなものしか置いてないんだよ」
「そうなんだ。村もずいぶん静かみたいだけど、何かあったの?」
「いや、特別なことがあったわけじゃないんだ。ただ、若い連中がほとんどエルノアの街へ行っちまってね。戻ってくる者も少ないし、村の人間は減る一方なんだよ」
店員は少し寂しそうに話した。
「そうだったんだ……」
村に入ってから人の姿をあまり見かけなかったのも、それが理由なのだろう。
「ところで、ちょっと聞きたいんだけど。これって買い取ってもらえるかな?」
あらかじめ用意しておいた毛皮を店員に見せた。
「ああ、皮かい。ちょっと見せてくれるか?」
店員は毛皮を受け取ると、広げて状態を確かめた。
「うん。これなら買い取れるよ」
「本当? それじゃあ、お願いするよ」
店員に毛皮を買い取ってもらい、代金を受け取った。
「それと、さっきの装備も少し見せてもらっていいかな?」
「もちろん。古いものばかりだけど、まだ使えるはずだよ」
棚に並んだ装備をいくつか手に取り、状態を確かめていく。
どれも使い込まれているが、装備がないよりはずっといいだろう。
「うん。じゃあ、これをもらうよ」
使えそうな装備を選び、店員に代金を支払った。
手に入れたのは、剣と斧と杖。これでようやく、三人分の武器が揃った。




