【荒野での出会い】
「そういえば、さっきのエルノアにはどう行けばいいの?」
装備を買い終えたところで、店員に尋ねた。
「エルノアへの行き方かい。ただ、ここからだと結構遠いね」
「どれくらいかかるの?」
「村を出てしばらく進むと荒野があるんだけどね。そこを歩いて数日はかかると思うよ」
「数日か……結構遠いんだね」
「そうだね。途中で食料なんかを買える場所もないから、しっかり準備しておいたほうがいいよ」
「そっか。じゃあ、ここで必要なものを買っておこうかな」
店員に街までの道を詳しく教えてもらい、旅に必要なものを探すことにした。
棚に並んだ商品から、保存食や水袋、解体用のナイフ、野営道具などを選んでいく。
「これくらいあれば大丈夫かな?」
「そうですね。数日程度の旅でしたら、十分かと思います」
シアの言葉に頷き、選んだ品を店員のもとへ運んだ。
「それじゃあ、これもお願いするよ」
「ああ、毎度あり。道中、気をつけてね」
「うん。色々ありがとう」
代金を支払い、購入した品を受け取ると、三人は店を後にした。
人目のない場所で荷物を〈魂の世界〉の収納にしまい、村の出口へ向かう。
「それじゃあ、街を目指そうか」
「承知しました。道中の警戒はお任せください」
セインがそう答え、再び先頭に立った。
三人は村を出ると、店員に教えられた道を歩き始めた。
しばらくすると、前方に広大な荒野が見えてきた。
乾いた大地がどこまでも続き、周囲には背の低い草や岩が点々と見えるだけだった。
三人は途中で野営を挟みながら、街を目指して歩き続けた。
それから数日が経ったが、特に問題が起こることもなく、旅は順調に進んでいた。
「それにしても、魔獣を全然見かけないね。この辺りにはあまりいないのかな?」
「どうでしょう。たまたま遭遇していないだけかもしれません」
シアが周囲を見渡しながら答える。
「そうだね。森では何度か見かけたのに、こっちでは一度も見てないし」
「いずれにせよ、油断は禁物です。引き続き周囲の警戒はお任せください」
セインの言葉に頷き、三人は再び歩き続けた。
それから数時間ほど進んだところで、遠くに人影が見えた。
「あれ? 向こうに誰かいるみたい」
足を止めて様子をうかがうと、その人物は何かに追い立てられるように動いていた。
「……って、あの人、襲われてない!?」
その声に、シアとセインも足を止め、同じ方向へ目を向けた。
「二人とも、助けに行こう!」
そう言ってリリーフが駆け出すと、シアとセインもすぐに後を追った。
距離が近づくにつれ、襲われているのが、短い赤髪で動きやすそうな軽装をした少女だとわかった。
少女の前には、大きな体と鋭い爪を持つ魔獣がいた。
少女は必死に距離を取ろうとしていたが、魔獣は逃がすまいと迫っていた。
三人が少女のもとへ駆けつけると、魔獣が鋭い爪を振り上げた。
「危ない!」
セインが少女の前に飛び込み、片手斧で魔獣の攻撃を受け流した。
その隙にリリーフも剣を抜き、魔獣へと迫る。
少し離れた場所で足を止めたシアは、詠唱を終えると杖の先から勢いよく水を放った。
水流を受けた魔獣が体勢を崩したところへ、セインが斧を振るい、さらにリリーフが剣で斬りつけた。
魔獣は反撃する間もなく、その場に倒れて動かなくなった。
「あ、あの……」
少女は呆然と三人を見つめていた。
リリーフは剣を収めると、少女に声をかけた。
「大丈夫? 怪我はない?」
「う、うん。大丈夫」
少し落ち着いたのか、少女は慌てて頭を下げた。
「助けてくれてありがとう。本当に危ないところだったの」
「うん。怪我がなくてよかったよ」
「それにしても、あんなにあっさり倒してしまうなんて……みんなすごいのね」
少女はほっとしたように微笑んだ。
「あ、まだ名前を言ってなかったね。私、エルナ・クロスティアっていうの。エルノアで冒険者をしているのよ」
「俺はリリーフ・マナウッド。よろしくね」
「……俺?」
エルナは少し意外そうにリリーフを見た。
「ん? どうかした?」
「ううん、女の子だと思ってたから、ちょっとびっくりしちゃって」
「ああ、俺って言ったから?」
「うん。ちょっと意外だっただけよ」
「ああ、そういうことね」
「私はシア・ミストレインと申します。よろしくお願いいたします」
「セイン・レオガルドだ。よろしく頼む」
二人もそれぞれ自己紹介を済ませた。
「ところで、エルナはエルノアに向かってたの?」
「うん。私、冒険者になったばかりで、街の外に出てみたんだけど、帰る途中であの魔獣に襲われてしまって……」
「そっか。実は俺たちもエルノアに向かってるところなんだ」
「そうなの? それなら、ここからはそんなに遠くないわ」
「そうなんだ。それなら、よかったら一緒に行かない?」
「えっ、いいの?」
「もちろん。行き先も同じだしね」
「ありがとう。それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうね」
「そうだ。街に向かう前に、あの魔獣の素材を回収してもいいかな?」
「うん、もちろん」
エルナには少し離れた場所で待ってもらい、三人は倒した魔獣のもとへ向かった。
村で買った解体用のナイフを使い、魔晶石を取り出す。さらに、使えそうな毛皮や爪なども回収した。
回収を終えると、エルナから十分に離れた岩陰へ移動し、集めた素材を〈魂の世界〉の収納にしまった。
「二人とも、ここからはエルナと行くから、一度〈魂の世界〉に戻ってもらってもいい?」
「かしこまりました、リリー様」
「またお呼びいただければ、いつでも参ります」
二人の返事を聞き、帰還させることにした。
シアとセインの身体が淡い光に包まれ、徐々に輪郭が薄れていく。やがて二人の姿は完全に消えた。
エルナのもとへ戻ると、彼女は二人がいないことに気づいた。
「あれ? ほかの二人は?」
「シアとセインには、ちょっと別行動してもらうことにしたんだ」
「そうなのね。じゃあ、ここからは二人でエルノアに向かうのね」
「うん。そういうこと」
こうしてリリーフはエルナとともに、エルノアを目指して歩き始めた。




