【魂の世界と二人の配下】
「レーテ、素材も集まったし、さっき話していたスキルを作ってもらえるかな?」
「はい、もちろんです。では、必要な素材を用意していただけますか?」
「わかった。ちょっと待ってね」
〈魂の世界〉の収納から、集めておいた魔晶石を必要な分だけ取り出す。
「これで足りるかな?」
「はい、十分です」
取り出した魔晶石をレーテに差し出した。
「それでは、創造を始める前に一つ提案があります」
「提案?」
「はい。スキルの創造を始めると、私はしばらく姿を消すことになります。その間はリリー様のサポートができなくなってしまいますので、先に〈魂の世界〉から配下を召喚しておいてはいかがでしょうか?」
確かに、レーテがいない間も森の探索を続けるなら、誰かが一緒にいてくれたほうが安心だろう。
「そうだね。それなら、先に配下を呼んでおこうか」
「はい。そのほうがよろしいかと思います」
「じゃあ、〈魂の世界〉に行ってみよう」
スキルを発動すると、意識が〈魂の世界〉内の精神体へと移った。
そこは、先ほどまでいた森とはまったく異なる場所だった。
「……ここが、〈魂の世界〉の内部か」
目に映る光景を確かめながら、ゆっくりと辺りを見回す。
「リリー様、聞こえますか?」
不意にレーテの声が届いた。
「ああ、聞こえるよ。でも、姿が見えないな」
「私はリリー様のスキル〈霊導共鳴〉そのものですので、魂の世界内では姿を現せません」
「なるほど。声は届くんだね」
「はい。それでは、せっかくですので〈魂の世界〉についてご説明しましょうか?」
「うん、お願い。これはあんまり覚えてないから」
「承知しました。まず、〈魂の世界〉は、リリー様だけが扱える特別な世界です。内部には城や街が存在しており、配下の魂たちが生活しています」
「城や街まであるのか。思っていたよりずっと広そうだな」
「ええ。そして、このスキルには、魂を実体化させる機能も備わっています。必要な媒介を用意することで、配下を外の世界へ呼び出すことができるんです」
「また、先ほどお使いになった収納機能では、容量の制限なく物品を保管できます。ただし、出し入れできる距離は、現在のスキルの成長段階によって制限されています」
「前にも聞いたけど、やっぱり便利だよね」
レーテの説明を聞き終えたところで、目の前に一人の男性と一人の女性が現れた。
二人はリリーフの前まで進むと、その場に跪き、深々と頭を下げた。
「お帰りなさいませ、我らが女神様」
「こうして再びお目にかかれたこと、心より嬉しく思います」
「改めまして、セイン・レオガルドと申します」
「私はシア・ミストレインと申します」
突然の出迎えに少し驚いたものの、二人の様子からは深い敬意が伝わってくる。
「ありがとう。でも、そんなにかしこまらなくてもいいよ」
「恐れ入ります。女神様、どうか私たちをお使いください。必ずやお役に立ってみせます」
「私からもお願いいたします。どのようなご命令でも、喜んでお受けいたします」
二人の真剣な言葉を聞き、少し考えてから答えた。
「わかった。それじゃあ、二人とも力を貸してもらえるかな?」
「はっ! ありがたき幸せ!」
「ありがとうございます、女神様!」
二人の返事を聞いて、さっそく外の世界へ呼び出すことにした。
「配下の実体化には魔晶石を消費しますがよろしいでしょうか?」
必要な数を確認し、〈魂の世界〉の収納にある魔晶石を使うことを了承した。
「では後の処理は私がします」
「ああ、頼んだよ、レーテ」
「それじゃあ、先に外へ戻るね。二人ともよろしくね」
「はっ! お任せください!」
「はい。女神様のお役に立てるよう、精一杯努めます」
二人に頷き返し、〈魂の世界〉から意識を戻す。
再び森の景色が広がり、元の身体へ戻ったことを確かめた。
「さて、二人を呼び出そうか」
「はい、準備はできております」
レーテに任せていた実体化の処理が始まった。
目の前に淡い光が集まり、徐々に二つの人影を形作っていく。やがて輪郭がはっきりし、光が薄れていくと、そこには先ほどの男女が実体となって立っていた。
「お呼びいただき、ありがとうございます」
「これより女神様のおそばでお仕えいたします」
「うん、頼りにしてるよ」
無事に呼び出せたことを確認していると、レーテから声がかかった。
(リリー様、一つお伝えしたいことがあります)
(うん、どうしたの?)
(先ほどの戦闘で経験値を獲得されたため、リリー様のレベルが上がっています。天託も届いていたはずですが、覚えていらっしゃいますか?)
(えっ、そうなの? 何か聞こえた気はするけど、気に留めてなかった)
(そうでしたか。現在のレベルはステータスで確認できますよ)
(それなら、ちょっと確認してみようかな)
レーテの言葉を聞き、ステータスを開いた。
【ステータス】
名前:リリーフ・マナウッド
性別:♀ 年齢:16
種族:神樹族 職業:樹天士
称号:万象の創造主/始原の女神/二度の転生者
Lv:3/100
HP:600
MP:500
SP:500
筋力:500[100]
敏捷:600
体力:400
魔力:500[100]
精神:400
幸運:400
物攻:250
物防:200
魔攻:250
魔防:200
【スキル】
〈魂の世界〉 ランク:レア
Lv:1 熟練度:20
〈霊導共鳴〉 ランク:レア
Lv:1 熟練度:10
〈星霊歩〉 ランク:ノーマル
Lv:1 熟練度:0
「……えっ、こんなに上がってるのか?」
思わずステータスを見直す。
レベルは少しだが、HPや能力値が大幅に上昇している。以前確認したときとは、まるで別人のような数値だ。
(レーテ、これって本当に合ってる?)
(はい。レベルアップによる成長に加えて、現在は二人の配下を実体化させているため、リリー様の能力値にも補正がかかっています)
(配下を呼び出すと補正が入るんだね)
(そのとおりです)
(なるほど。それにしても、ずいぶん上がったな……)
予想以上の変化に驚きながらも、ステータス画面を閉じた。
(そういえば、レーテ。さっき頼んだスキルの創造を始めてもらえるかな?)
(はい。必要な素材も揃っていますので、いつでも始められますよ)
(それじゃあ、お願いするよ)
(承知しました。創造中はサポートできませんので、どうかお気をつけください)
(うん。二人もいるし、大丈夫だと思う)
(それでは、スキルの創造を開始いたします)
その言葉を最後に、レーテの声が途絶えた。
どうやら無事に創造が始まったようだ。
完成するまでは、しばらく二人と行動することになりそうだ。
今のところ、まともな武器も持っていない。装備を整えるためにも、人の住む場所を見つけたほうがよさそうだ。
「まずは近くに村でもないか探してみようか」
「承知しました、女神様。周囲の警戒はお任せください」
「私もお手伝いいたします」
二人の返事に頷き、森を歩き始めた。




