結婚
若いママには、理想の結婚があった。
専業主婦。
理由は、「子どもとずっと一緒にいたかったから」。
子どもは二人以上。
男の子も、女の子も。
「産み分けるくらいの気持ち(笑)」
自分は裕福な家庭で育ったわけではなかった。
だから、子どもには、お金で苦労させたくない。
付き合う男性は、年上が多かった。
僕が、当時のママにとって、できる夫ってどんな人だったの? と聞いた。
「社長とかの肩書き(笑)」
大変分かりやすい。
前の会社で、人材育成のために外部研修へ参加していた。
いろいろな会社の人が集まる研修で、そこで六歳上の男性と出会った。
ちなみに、婚活セミナーではない(笑)。
名刺には、代表取締役。
ママは当然、社長なんだ、と思った。
外では、人との会話も上手い。気が利くように見えた。
だから、家でも、言わなくても動く人だと思った。
未来予想は、かなり外れる。
しかも、結婚する前から、でかい事件が起きる。
結納の一週間ほど前。
他の女性が妊娠し、その子は自分の子どもだと言われている。
女性は彼と結婚したいと言う。でも、本当に自分の子かは分からず、彼はママとは別れたくないと言う。
ママの最初の感想。
「は? こいつ何言ってんの?」
だった。
傷ついて、泣いて。ではない。
「指輪も買ってるし、家族の予定も組んでるし。あー、めんどくさーって(笑)」
問題が起きた。なら、確認すればいい。
本当にあなたの子どもか分からないなら、妊娠中に検査する。
あなたの子なら責任を取るし、違うなら違うと確認する。
そして、検査を拒むなら、今後一切、養育費等で接触はしない
と公的文書で残す。
「何を悩むわけ?」
だった。
この人は、感情がないわけではない。
ただ、混乱すると、問題を条件へ変える。
事実は何か、確認するものは何か、次にすることは何か。
そして、ママが本当に気にしていたのは、浮気そのものより、両親だった。
両親が、彼を信用していた。認めていた。
家族が関わっていなければ。
「普通に別れてたよ」
でも、親が信じた人を、実はこんな人でした、と見せる方が嫌だった。
だから、結婚した。
ただ、一つ決めた。
「こいつ信用できないから、何事も疑おう」
結婚生活のスタートとしては、かなり不穏である。




